9月25日、PYMNTSが「Meta Bets a Tamagotchi-Style Device Can Sell Personal AI」と題した記事を公開した。この記事では、Metaがたまごっち型の専用AIデバイス「Muse Charm」を年内に投入し、パーソナルAI「Muse」の普及を狙う戦略について詳しく紹介されている。
たまごっちに似た専用AIデバイス「Muse Charm」とは
9月23日に開催されたMeta Connectで、CEO Mark ZuckerbergがデモしたのがMuse Charmだ。2インチのタッチスクリーン、指紋センサー、5Gモデムを搭載したポケットサイズのガジェットで、画面にはアプリではなくMuseのキャラクターが表示される。通話機能はなく、できることはMuseとの対話だけだ。
Zuckerbergが強調したのは「スマートフォンのロックを解除したり、アプリを開いたりすることなく使える」という点だ。スマートフォン上のAIエージェントはアプリを開くまで待機しているが、Muse Charmは常にオンの状態にある。これがMetaの訴求ポイントである。
デバイスはかつてAppleでインターフェースデザインの責任者を務めたAlan Dyeが率いるデザインラボ発のプロジェクトだ。Bloombergによれば当初は2027年のリリースを予定していたが、Zuckerbergが今年のホリデーシーズンへの前倒しを決断した。現時点でプロトタイプは数台のみで、価格は未発表。詳細は12月の出荷前に明らかにされる予定だという。
競合ではOpenAIも、元AppleデザイナーのJony Iveが率いるio社と共同で同様のポケット型AIデバイスを開発中とされる。Jony IveはApple在籍時にiPhone・iPad・Apple Watchのデザインを主導した人物であり、そのプロジェクトへの期待値は業界内で高い。ただしリリースは2027年の予定とされており、Metaが大手プラットフォームとしてエージェント専用デバイスを先に市場投入することになる。
Meta Connectで発表されたその他のデバイス
Meta Connectでは、Muse Charm以外にも複数のハードウェアが発表された。
- Ray-Ban Meta Audio: カメラなし・開放型スピーカー搭載のスマートグラス。バッテリー最大12時間、**$349**から、10月13日出荷開始
- Ray-Ban Meta(Gen 3): フレームがスリム化、バッテリー最大9時間、アクションボタン追加。**$449**から(Gen 2は$379)、現在販売中
- Meta VR Glasses: グラス型VRヘッドセット。**$1,299**、2027年春に発売予定
- Meta Ray-Ban Display: $799のディスプレイ付きモデルが5カ国に展開拡大
最大の障壁:ユーザーはMetaを信頼しているか
Muse Charmの価値はAIエージェントが「ユーザーの生活を動かすアカウントに接続されている」ことで初めて成立する。Metaは、パスワードやカード番号はモデルが参照できないセキュアなストレージに格納されると説明している。Connect発表時には、Walmart、Best Buy、Gap、Sephora、Wayfairといった小売パートナーとの連携も明らかにされた。
しかし、ユーザーの信頼は別問題だ。
投資銀行Oppenheimer & Co.がアメリカ消費者1,500人を対象に実施した調査では、**Metaにパスワードを預けると答えたのはわずか8%**。Googleが30%、Appleが23%、ChatGPTが16%と続く中、Metaは最下位だった。17%は「どの企業も信頼しない」と回答している。
この調査は、Metaがソーシャルメディアの有害性をめぐる複数州との和解(最大18億ドル規模と報じられた)に合意した直後に実施されたものだ。プライバシーをめぐる長年の批判が数字に反映されているといえる。
信頼の問題はMetaに限らない。Visaの調査では、米国消費者の72%がAIアシスタントを利用した経験があるが、AIに支払いを任せると答えたのは23%にとどまる。エージェントに実権を渡すことへの心理的ハードルは、業界全体の課題でもある。
「小型AIガジェット」カテゴリの厳しい現実
専用AIガジェットの前例は芳しくない。2024年に話題を集めたRabbit R1は、スマートフォンを不要にするという触れ込みで登場したが、基本機能の不安定さや約束していたアプリ連携の未実装が批判を受け、発売直後から急速に失速した。同時期に注目されたHumane AI Pinも、操作性・バッテリー・レスポンスの問題から市場に定着できなかった。これらの失敗は「専用AIデバイス」というカテゴリ自体への懐疑論を強める結果となっており、Muse Charmはその逆風の中に飛び込む形になる。
IDCのディレクター、Jitesh Ubraniは「Muse Charmはスマートグラスを着けたくない、あるいは信頼できないユーザー向けの選択肢」と位置付ける。Smart Analytics GlobalのLinda Suiは、価格が安く使いやすければZ世代への訴求力があると指摘している。実際、AIエージェントにアカウントを渡すことに最も積極的なのは若年層だ。
ただし、スマートフォン・スマートウォッチ・スマートグラスにできないことをMuseが提供できなければ、ニッチな製品にとどまる可能性が高い。Metaがホリデーシーズンという強行スケジュールで市場に問う答えが、エージェント専用デバイスというカテゴリの命運を左右する試金石になるかもしれない。
詳細はMeta Bets a Tamagotchi-Style Device Can Sell Personal AIを参照していただきたい。