9月25日、Los Angeles Timesが「Computer science grads face a brutal job market as AI reshapes entry-level work」と題した記事を公開した。AIがエントリーレベルのソフトウェア開発職を侵食し、コンピューターサイエンス(CS)専攻の新卒者が厳しい就職市場に直面している実態を詳報している。
「コーディングブーム」の終焉と新卒の現実
かつてCS専攻の学生は、応募すらしなくても内定が来た時代があった。それが今や、哲学・美術史・民族学専攻の卒業生よりも就職率が低い。
Associated Pressの分析によれば、CS・コンピューターエンジニアリングの新卒者の失業率は約7.1%。これは哲学専攻(同分析における比較値)や美術史・民族学専攻の失業率を上回る水準であり、かつて「最も就職に強い専攻」と見なされてきたCS分野の地盤沈下を象徴している。パンデミック期にデジタル化が加速したことで求人は急増し、求人サイトIndeedのソフトウェア開発ポジションは2022年初頭にピークを迎えたが、以降は急減した。
MicrosoftやMeta、Googleはコード生成をAIに委ね、Amazonは人員削減を進めながらAIへの投資を加速させている。2022年末以降、いわゆるテックレイオフの波は断続的に続いており、エントリーレベルのポジションが真っ先に削られる傾向が顕著だ。スタンフォード大学のDigital Economy Labの調査では、ソフトウェア開発のような「AIにさらされた職種」に就く20代前半の若者の雇用は、AIの影響を受けにくい分野と比べて19%低い水準にある。米国勢調査局はこの雇用減を「大規模な不況期の大学卒業」に相当すると表現した。
新卒から数百件の応募を送り続けたジャック・ゼムケ(23歳)の例が象徴的だ。Tulane大学の卒業を数日後に控えながら実家への帰還を覚悟していた彼は、AIを活用した検索ツールのグループプロジェクトを土木エンジニアリング会社の社員に見せたことで、ようやく職を得た。そこで「AI伝道師」として1年過ごし、その後AIスタートアップへ転職した。
「これらの職は、フロンティアに飛び込んで動ける人材を求めている。レイオフも転職も多くて、完全な混乱状態だ」(ゼムケ)
市場が求めるのは「AIを監督できる人材」
Computing Research Association(コンピューター研究の業界団体)のエグゼクティブディレクターであるTracey Camp氏はこう指摘する。
「業界が今求めているのは、AIツールを監督してその出力を鵜呑みにしない人材。そういったスキルは、経験豊富な人材に多い」
同協会は業界リーダーに対し、エントリーレベル人材への投資を求める働きかけを行っている。Camp氏は「今の採用の仕方を変えなければ、数年後にミドルキャリアの人材がいなくなる」と警告する。
一方、学生側も動いている。2024年のCS・コンピューターエンジニアリングの新卒者数は約36万2,000人と10年前の3倍まで膨らんだが、昨年から入学者数は減少へ転じた。National Student Clearinghouse Research Centerの最新データでは、4年制大学のコンピューター・情報科学系の入学者が2025年春時点で8.4%減となっている。
留学生はさらに厳しい立場に
特に打撃を受けているのが留学生だ。就職市場の変化に加え、H-1Bビザ(就労ビザ)のスポンサーを敬遠する企業が増えている。トランプ政権はH-1Bの申請料を10万ドル超に引き上げることを提案・検討中とされており、ビザ手続きに不慣れな中小企業はさらに二の足を踏みやすい状況だ。
ケニア出身のコリンズ・キベット氏は数百件の応募を送ったが、人間と面接できた機会はわずか。しかも、ビザスポンサーが必要と伝えた途端に「みんな黙り込む」と語る。現在は就職先が見つからず、自分でソフトウェア会社を立ち上げた。
大学側の対応:「即戦力化」へのシフト
大学もカリキュラムの見直しを迫られている。Georgia Techでは、AT&Tのニーズを事前にリサーチし、インターンシップ開始前に1か月間の集中トレーニングを実施。この取り組みを「Bootcamp to Industry」として拡大する計画だ。
また、就職フェアへの企業誘致担当スタッフは、テック業界以外にも広く声をかけるようになった。林業会社から「AIをどう使えばいいか分からないが、活用したい」という問い合わせが来た例も紹介されている。
Tulaneのコンピューターサイエンス准教授であるNicholas Mattei氏はこう嘆く。「企業はジュニア開発者ではなくミドルマネジメントにいきなり入れる人材を求めてくる。正直、おかしいと思う」。
学校側は「最終的には大半の卒業生が就職できている」と説明するが、採用しているのはテック大手ではなく、AIの使い方を模索する中小企業が増えているのが実態だ。
詳細はComputer science grads face a brutal job market as AI reshapes entry-level workを参照していただきたい。