9月19日、Mixed Newsが「ChatGPT starts testing ads that open a chat with a brand's own AI agent」と題した記事を公開した。OpenAIが始めたのは「広告をクリックしたら企業のページに飛ぶ」ではなく、「広告をクリックしたら企業のAIと会話が始まる」という従来型とは根本的に異なる広告フォーマットだ。検索連動広告やディスプレイ広告の延長線上にはない、AIネイティブな商業モデルの登場として注目されている。
広告をクリックすると企業AIと会話が始まる
OpenAIは9月16日、「Sponsored Agents」と呼ぶ新しい広告フォーマットを発表した。ユーザーがChatGPT上の広告をクリックすると、その企業が用意したAIエージェントとのチャットが始まる仕組みだ。
OpenAIが示した具体例は「ダイニングテーブルを検討しているユーザー」だ。広告をクリックすると、ブランドのエージェントとの会話が明示的にラベル付けされた形で開き、サイズや仕様について追加質問し、そのまま購入ページへ進める。
重要なのは、このエージェントとの会話はChatGPTのオリジナルな回答とは切り離されている点だ。OpenAIのヘルプ記事によれば「ChatGPTの独立した回答とは別のもの」と明記されており、広告主が見られるのはユーザーがそのエージェントに直接送ったメッセージのみ。ChatGPTとの元の会話内容が広告主に渡ることはないとされている。
なお、OpenAIはすでにユーザーが独自GPTを作成・公開できる「GPTs」という仕組みを提供しているが、Sponsored AgentsはGPTsとは異なる広告専用の枠組みとして設計されており、広告費を支払った企業のエージェントが検索結果や会話の流れの中にスポンサー枠として表示される点が特徴だ。企業が自社GPTをすでに持っていたとしても、それをSponsored Agentsとして配信するには別途広告契約が必要になる。
現時点では米国内の一部の広告主との「限定アルファテスト」であり、参加広告主名は非公開。OpenAIは早期アクセスの申請も受け付けていないとしている。
有料ユーザーには表示されない
広告が表示されるのはFreeプランとGoプランのユーザーのみだ。GoプランはFreeより上位・Plusより下位に位置する中間プランで、ChatGPTのプラン体系の中では比較的新しい位置づけにある。Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduアカウントには広告は出ない。また18歳未満と判定されたアカウントも除外される。
Freeユーザーは広告なしモードに切り替えることも可能だが、その場合はメッセージ数の上限が下がり、画像生成やDeep Researchなど一部ツールへのアクセスも失われる。言い換えれば、広告表示は無料・低価格帯ユーザーへのアクセス維持コストとして機能する設計だ。
広告主向けにはShopify・HubSpot連携も
広告主側への機能拡充も同時に発表された。
- Ads Managerプラグイン:ChatGPT上で自然言語による広告キャンペーンの作成・更新・分析が可能
- AIによるコピー最適化:ランディングページとキャンペーン目標をもとに見出しや画像を自動提案。ユーザーの言語に合わせた翻訳も行うオプトイン機能として提供
- HubSpot連携:OpenAIの初CRMパートナーとして参加。HubSpotは営業・マーケティング向けCRM(顧客関係管理)プラットフォームとして広く使われており、この連携により広告経由のリード情報をそのままCRMに取り込む流れが想定される
- Shopify連携:米国のShopify加盟店向けにChatGPT Adsアプリが9月16日に公開。その他の対応市場では9月23日から展開
広告主がAIを使ってキャンペーンを組み、AIエージェントがユーザーと会話し、成果がCRMに記録されるという一連の流れをOpenAIのエコシステム内で完結させようという意図が見える構成だ。
広告事業はすでに年換算10億ドルの売上ペース
この動きには明確な事業的背景がある。OpenAIは8月31日の発表で、ChatGPT Adsの年換算売上が10億ドルのランレートに達したと公表した。広告開始から200日未満での到達で、現在は40カ国以上で展開し、数万の広告主が利用しているという。
ChatGPTへの広告掲載は2月9日の米国テストから始まった。OpenAIはサブスクリプション・エンタープライズ・APIに並ぶ柱として広告を位置づけており、Sponsored Agentsはその「企業とユーザーがよりネイティブに交流する新しい方法」の第一弾と説明している。
APIビジネスでは中国の低価格モデルとの競争が激化しており、DeepSeekをはじめとする中国勢が大幅に低い価格でAPIを提供することでOpenAIやAnthropicのシェアを侵食しつつあるとされる。広告収益を収益源の柱として育てようとする動きは、API単価の競争圧力に対するヘッジとしても読むことができる。
Sponsored Agentsは現時点では米国の一部ユーザーにのみ表示される限定テストにとどまる。ただし、AIチャット上で広告主のエージェントが直接ユーザー対応を行うという構造は、従来のディスプレイ広告やクリック型広告とは根本的に異なるモデルであり、今後の展開が注目される。
詳細はChatGPT starts testing ads that open a chat with a brand's own AI agentを参照していただきたい。