9月18日、SiliconAngleが「Data center builder Nscale files for IPO after multibillion-dollar Anthropic deal」と題した記事を公開した。この記事では、AIワークロード向けデータセンターを構築するNscaleが、Anthropicとの数百億ドル規模の契約締結を受けてニューヨーク証券取引所へのIPOを申請したことについて詳しく紹介されている。
Anthropicとの446億ドル契約がIPOの背景に
Nscale Global Holdings Ltd.がSEC(米証券取引委員会)にIPO申請書を提出した。ティッカーシンボルは「NSCL」でニューヨーク証券取引所への上場を目指す。調達額は非公表だが、Bloombergの報道によれば最大30億ドルの調達を目指しているとされる。3月時点の企業評価額は146億ドルだった。
IPO申請の直接的な背景となっているのが、先月締結したAnthropic PBCとの446億ドル規模のインフラ契約だ。この契約でAnthropicは、Nscaleがウェストバージニア州に建設するフラッグシップキャンパス「Monarch」において、約460メガワットのコンピューティングキャパシティを確保する。Monarchは敷地内のマイクログリッドで全電力を賄う設計で、Nscaleは将来的に8GW以上への拡張余地があるとしている。
財務状況:赤字拡大の一方で売上高は急騰
現時点でNscaleは黒字化していない。今年前半の純損失は10億2,000万ドルで、前年同期比でほぼ3倍に膨らんだ。一方で売上高は同期間に1,250%超増加し、1億4,060万ドルに達した。
損失拡大は積極投資の裏返しだ。同社のIPO目論見書(プロスペクタス)は、「契約済みの展開が本格稼働し、定常利用率に達するにつれ、マージンはより高い水準で安定する」と説明している。エンジニアリングなどの費用は概ね固定費であるため、キャパシティと売上が拡大するほど利益率が改善する構造だ。「赤字拡大でも急成長」というフレーミングは、こうした先行投資フェーズにある企業の財務構造をそのまま反映したものと読むべきで、収益性への道筋はプロスペクタス上では明示されている。
GPUと資金調達の規模感
Nscaleがすでにデータセンターネットワークに展開済みのGPU数は2万5,000基。これに加え、将来の顧客需要に充てる「アクティブおよび契約済みGPU」が46万1,000基あるとしている。
資金面では、IPOの調達分だけに依存しない構成になっている。目論見書によると、同社は直近で31億ドル相当の転換社債(株式に転換可能な債券)を発行しており、そのうち少なくとも10億ドル分はNvidiaに対して発行される。これは年初から積み上げてきた46億ドル超の負債に積み増す形だ。
注目すべきは、NvidiaがNscaleにとってGPUの主要調達先であると同時に、転換社債の引受先でもある点だ。つまりNvidiaはNscaleの「サプライヤー兼債権者」という二重の立場を持つことになる。さらに後述のとおりNscaleはNvidiaの最新GPUをデータセンターに採用しており、ハードウェア調達・資金調達・製品採用の三面でNvidiaへの依存度が高い構造となっている。この関係性はIPO後の投資家にとっても重要なリスク要因として認識されるだろう。
具体的な投資計画としては、テキサス州ウォード郡に200メガワットのデータセンターを18億5,000万ドルで建設する予定で、ラックの一部にはNvidiaの最新GPU「Rubin」とCPU「Vera」が搭載される。さらにノースカロライナ州マディソンの96エーカーのサイト整備に12億ドルを投じる。
Anthropic以外の主要顧客も続々
Anthropicとの契約発表の前日には、ヒューマノイドロボット開発のFigure AI Inc.がNscaleからGPUを最大10万基レンタルすることを発表。NscaleはこのディールでFigure AIへの出資も行う。また、MicrosoftとはGPUホスティングに関する数十億ドル規模の契約をすでに締結済みだ。
既存のデータセンターはアイルランド、ノルウェー、ポルトガルに計5施設を稼働させており、そのうち4棟は他社と共用するコロケーション型の施設だ。さらに11のプロジェクトが進行中だ。
AIインフラへの需要が一段と過熱するなか、Nscaleのような「AIネイティブ」なデータセンター事業者が主要テック企業を顧客・出資者として取り込みながら急速にスケールしている実態が、今回のIPO申請書から浮かび上がる。
詳細はData center builder Nscale files for IPO after multibillion-dollar Anthropic dealを参照していただきたい。