9月18日、CNBCが「Anthropic selects Accenture as first embedded evaluator to help implement Amodei's slowdown proposal」と題した記事を公開した。AnthropicがAccentureを初の「埋め込み型評価機関(embedded evaluator)」として選定し、CEO Dario AmodeiによるAI開発減速提案の具体的な実装に踏み出したことを報じている。
「embedded evaluator」とは何か
今回の発表で核心となるのが、embedded evaluatorという概念だ。これは単なる外部監査とは異なり、第三者機関の従業員がAI企業に社員レベルのアクセス権を持って常駐し、安全対策の検証・インシデント報告・モデルの挙動評価を行う仕組みを指す。
Amodeiが先週土曜日に公表した3段階の減速提案の第一ステップがこれにあたる。第二ステップでは複数のAI企業間での情報共有と共同評価体制の構築、第三ステップでは政府や国際機関を巻き込んだ規制フレームワークの整備を想定している。Amodeiは提案の中で、AnthropicがこのうちStep 1を「一方的に(unilaterally)」コミットしたと明言し、他のAI企業にも同様の取り組みを促している。
Accenture(Faculty)が実際に何をするか
Anthropicが具体的に合意した内容は以下の通りだ:
- Accentureの専門AI部門であるFacultyの従業員をAnthropicに常駐させる
- セーフガード(安全装置)のテスト
- レッドチーミング(モデルに対する攻撃的試験。脆弱性や有害な挙動を意図的に引き出す手法)
- モデルが人間の価値観に沿って動作しているかの評価
両社は今後5年間でこの領域に少なくとも10億ドルを投資することに合意している。ただし現時点ではAnthropicがAccentureの活動資金を直接拠出する形を取る。Anthropicは長期的には「プールされた資金または政府資金」による運営を目指すとしており、2026年6月に公表したAdvanced AI Frameworkでもその方向性を示している。
このパートナーシップは独占契約ではなく、Anthropicは研究非営利団体のMETRとも交渉中であることを明かしている。
業界の反応:賛否が割れている
Amodeiの減速提案に対する業界の反応は一枚岩ではない。
OpenAI CEO Sam AltmanとTesla・SpaceX CEO Elon Muskは提案を支持した一方、Nvidia CEO Jensen Huangは懸念を退け「新たな規制は不要」と主張した。
また、専門家らによる公開書簡では、「AnthropicとOpenAIには真に独立した安全評価機関が必要だ」との声も上がっている。Accentureは巨大コンサルティング企業であり、その独立性に疑問を呈する立場から見れば、今回の選定は「身内に近い外部機関」という批判を受ける余地がある。
さらに、AnthropicがIPOを控えているというタイミングも注目点だ。「AI安全を訴えながら上場で資金調達する」という構図に対し、多くの関係者が「提案が実質どこまで機能するのか」と問い続けている。
Anthropicの立場
Anthropicは、外部評価機関の導入が自社の安全責任を軽減するものではないと強調した。
「私たちはこの初期段階の取り組みを今共有することで、他のAI開発者が私たちのプロセスを参照できるようにしている。このアプローチは、分野の成熟に合わせて進化し続けるだろう」(Anthropic公式発表より)
embedded evaluatorという仕組み自体はまだ産業として確立されておらず、Anthropicは「フィールドが成熟するにつれて更新していく」と述べるにとどめている。AI安全性の独立監査というカテゴリが産業として形成されつつある、その最初の一手という位置づけだ。
詳細はAnthropic selects Accenture as first embedded evaluator to help implement Amodei's slowdown proposalを参照していただきたい。