9月18日、Search Engine Journalが「More People Expect AI To Cut Jobs Than Add Them, Pew Finds」と題した記事を公開した。AIについて詳しく知っている人ほど、雇用への影響を悲観的に見る——Pewリサーチセンター(米国を代表する超党派の世論調査・社会科学研究機関)が37カ国・4万人超を対象に実施した調査で、そうした逆説的な傾向が浮かび上がった。AIリテラシーの向上が楽観論に結びつかないという現実は、技術者・ビジネスパーソン双方にとって無視しにくいデータだ。
37カ国中34カ国で「AIは雇用を減らす」が多数派
Pewリサーチセンターが9月17日に公開した報告書によると、調査した37カ国のうち34カ国で、「AIが今後20年間で雇用を減らす」と考える人が「増やす」と考える人を上回った。
全37カ国の中央値では、46%がAIによって雇用が減ると回答し、増えると答えたのはわずか**9%**。「わからない」は25%だった。
調査対象は2026年2月〜5月にかけて36カ国の成人42,151人。米国のデータは別途実施した2つのサーベイから取得している。冒頭の「知れば知るほど悲観的になる」という構図が端的に現れているのが、所得水準別・認知度別の内訳だ。
高所得国ほど悲観的、認知度も高い
国の所得水準によって見方は大きく異なる。所得分類は世界銀行の国民総所得(GNI)基準に準拠しており、高所得国・中所得国はその区分に従っている。
- **高所得国18カ国の中央値:55%**が「雇用が減る」と回答
- **中所得国18カ国の中央値:36%**が「雇用が減る」と回答
国別では**オーストラリアと韓国が76%でトップ、続いて米国が71%**。米国の数字は2024年8月時点の64%から上昇しており、AIへの懸念が強まっている傾向が読み取れる。
シンガポールは例外的な存在として報告書内で言及されている。一人当たりGDPが約10万ドルに達するにもかかわらず、「雇用が減る」と答えた割合は**46%**にとどまった。
AIの認知度(「AIについてよく聞いたり読んだりしている」と答えた割合)も同様の傾向を示す。
- 高所得国:50%
- 中所得国:27%
- 国別では日本の56%が最高、バングラデシュの4%が最低
一人当たりGDPとAI認知度の相関係数は0.74、GDPと「雇用が減る」という回答の相関係数は0.60だった。相関係数とは2つの変数がどれだけ同じ方向に動くかを−1〜1の数値で示す指標で、0.6〜0.7台は「中程度の正の相関」とされる。ただし相関はあくまで同時変動を示すものであり、因果関係を意味しない点は報告書も明示している。つまり「豊かで情報量が多い国ほどAI雇用不安が強い」という傾向は確認できるが、認知度の上昇が悲観論を「引き起こした」とは言い切れない。
不安と期待が混在する韓国の事例
数字の面で興味深い国として韓国が挙げられる。雇用減少を予測する割合は76%と最高水準だが、AIの日常的な活用に対して「不安より興奮が大きい」と答えた割合は**18%にすぎず、「不安と興奮が同程度」が61%**を占める。悲観的な雇用予測と、日常利用への相対的な受容感が同居している構図だ。「職が奪われる」という長期不安と「便利なツールとして使う」という日常感覚は、必ずしも矛盾しないことをこの数字は示している。
格差拡大への懸念と全体感情
「AIが貧富の差を拡大する」と答えた割合は、高所得国の中央値で**35%、中所得国で22%**。
AIの日常的な利用拡大に対して「興奮より不安が大きい」と答えた割合は、高所得国で**40%、中所得国で31%**。ただし報告書は、雇用や格差への見方と異なり、この感情面のスコアはGDP水準との相関が低いとしている。雇用への冷静な見立てと、技術そのものへの感情的な反応は別軸で動いている可能性がある。
中所得国では「意見形成中」
AI認知度が前年調査と比較して上昇した国は25カ国中11カ国。上昇幅が最大だったのはナイジェリアで14ポイント増。中所得国では「雇用への影響がわからない」と答えた割合が依然として大きく、報告書は「意見がまだ形成段階にある可能性がある」と述べている。高所得国で起きた「認知度上昇→悲観論の強まり」という経路が、今後中所得国でも繰り返されるのかどうかは、次回以降の調査で注目すべき点となるだろう。
キャリアへの影響を考えるうえで、この種の大規模な国際比較データは一つの現実的な参照点となる。「AIが仕事を奪う」という感覚は先進国の高所得層・高教育層ほど強く、認知度の高さが楽観論につながるとは限らないことがデータから示されている。
詳細はMore People Expect AI To Cut Jobs Than Add Them, Pew Findsを参照していただきたい。