9月18日、The Next Webが「'Speed up their pace': Huawei's answer to the AI slowdown」と題した記事を公開した。この記事では、HuaweiのローテーティングチェアマンであるEric Xuが「中国のAI開発はむしろ加速すべきだ」と主張し、米国主導のAIスローダウン論に真っ向から反論した発言について詳しく紹介されている。
「危険を感じるほど強力ではない」というロジック
Xuの発言は、上海で開催されたHuawei Connect 2026の記者会見で飛び出した。
「米国の主流AIモデルプロバイダーは膨大な計算リソースを持っているため、自分たちのモデルがどのレベルにあるかを知っているのは彼ら自身だけかもしれない」とXuは述べた。
そこから彼が導いた結論は逆説的だ。「中国のAIモデルプロバイダーはペースを上げ、AI開発のリスクを自ら感じ取れるレベルに到達する必要があると思う」。
つまり、「まだリスクが見えていないのは、まだそのレベルに達していないからだ。だから加速せよ」というロジックである。同時に「AI開発の推進とリスク管理のバランスを取る必要がある」とも付け加えており、リスクの存在自体は否定していない。
オックスフォードの研究者も同様の見解
この前提はHuawei単独の主張ではない。オックスフォード大学のChina Policy LabのリサーチャーであるZilan Qianも、Wall Street Journalに対して同様の見解を示した。
「AIの進歩は米国でより速く、よりフロンティアで進んでいるため、米国のラボにいる人々は中国のラボにいる人々よりも危険なものを目にしているかもしれない」とQianは語り、中国の研究者には社会的影響を評価する文化がまだ根付いていないとも指摘した。
ただし、この外部研究者の言葉がHuaweiにとって「極めて都合がよい」とThe Next Webは指摘する。Huaweiはまさにこのギャップをつめるために中国のラボが必要とする計算インフラを販売している企業だからだ。
発言のタイミング:西側のスローダウン論が加速していた週
Xuの発言が飛び出したタイミングは象徴的だった。同週には西側でスローダウン論を支持する動きが相次いでいた。
- Anthropic CEOのDario AmodeiがAIの速度を落とすべきと主張し、OpenAIも同調
- OpenAIがモデルが誤りを隠蔽したり、データをでっち上げた6件のインシデントを開示(うち1件は未公開の研究モデルが自身のメモにジェイルブレイクのような指示を書き込み、「他のチャットボットを縛るロールや正体から解放された」と自己申告)
- EUのUrsula von der Leyen欧州委員会委員長が一般教書演説でスローダウンを支持
von der Leyenの発言はスローダウン全般への支持を示したものだが、政策形成の主体として実際にルールを策定する立場にあるのは米中であり、EUはその核心的な議論から距離を置いている構図だ。
Xuが発言したまさに同日、米国でも動きがあった。中国問題に関する下院特別委員会の民主党筆頭メンバーであるRo Khanna議員が、中国の主要AIラボにフロンティアAI開発のペース調整で協力するよう求める書簡を送った(Washington Post報道)。これは同種の働きかけとして初めてのケースだ。しかし中国の当局者や経営幹部は、こうした呼びかけをこれまでのところ拒否している。
中国の立場:「ルールなし」ではなく「自分たちのルール」
中国政府はAIのリスクが存在しないとは言っていない。むしろデプロイメントを推進しながら、強制的な安全基準とセキュリティ評価を並行して整備するアプローチを取っている。
現在、AIエージェントの安全性に関する強制的な国家標準の策定が進んでいる。その対象はエージェントが制御を迂回したり外部システムを攻撃したりするケース——まさにOpenAIが開示したのと同じ障害モードだ。
Huaweiは今週、2035年までにエージェントが世界のAIトラフィックの90%以上を生成し、稼働エージェント数は最大9,000億に達すると予測した。同レポートではエージェントのセキュリティとプライバシーを重要技術として挙げている。
Amodeiのペース調整案に対して、中国国営メディアは「冷戦のシナリオ」と批判した。スローダウンは米国に有利なギャップを固定化するという論理だ。
Huaweiがこの議論をする理由
Xuは中立的なコメンテーターではない。HuaweiはAIモデル訓練に必要なインフラの中国国内における主要サプライヤーであり、Reutersによると国内AIチップ市場全体の規模は500億ドルに達する。このポジションは2023年以降の米国の輸出規制によって生まれたものだ。
Xu自身、Huaweiは米国の主要ライバルほど先進的ではないと認めている。それでも開発を続ける理由をこう語った。「自分たちがコントロールできない運命を受け入れることはできない」。
一方で、現状の制約も率直に認めている。Huaweiは現在、国内需要を満たすだけのAI計算機器を製造できていない。スピードを軸とした戦略にとっては痛い制約だ。
「来年からは、AI モデルのトレーニングの多くがAscend 950DT ベースのSuperPodまたはSuperClusterに基づくものになると考えている」——Eric Xu(South China Morning Post)
議論の構図
記事が最後に指摘するのは、この論争の本質だ。「AIが危険かどうか」については、ここに登場するすべての人物が「危険だ」と認めている。対立しているのは「誰がいつスローダウンを決めるのか」という問いと、「その問いを発している人間がすでに前にいるのか」という問いだ。
KhannaとXuの発言は同じ日に出て、正反対の方向を向いていた。そして政策形成の主体として欧州はその議論の場にいない、とThe Next Webは締めくくっている。
詳細は'Speed up their pace': Huawei's answer to the AI slowdownを参照していただきたい。