9月16日、John-Paul Ford Rojasが「Women's AI 'triple penalty' as jobs wiped out and men swipe tech roles」と題した記事を公開した。新規AI採用者に占める女性の割合はわずか4分の1、AI部門の経営幹部では8分の1——世界経済フォーラム(WEF)の年次ジェンダーギャップ報告書(97カ国を対象)が明らかにしたこの数字が、AIが雇用市場を変革する中で女性が直面する「三重の不利益」の深刻さを端的に示している。
AIが再生産する「古い不平等」
WEFの報告書によると、AIの台頭は女性に以下の「三重の不利益」をもたらしている。
- AI関連職への参入機会が少ない
- AI企業内での女性比率が低い
- AIリーダーシップ層における女性の存在が極めて限られている
この格差を「トリプルペナルティ(三重の罰)」と名付けたのは、LinkedIn Head of Global Public PolicyのSue Duke氏だ。AI採用・幹部登用の双方で女性が排除される構造が固定化されつつある、と同氏は警鐘を鳴らす。
被害を受けるのはホワイトカラーの女性層
WEFのSaadia Zahidi Managing Directorが指摘するのは、AIによって代替されやすい職種と女性が集中する職種が重なっている点だ。
「AIによって代替・変革される職種は、これまで女性が多く就いてきた職種と一致している」
具体的には、法律事務所のジュニアスタッフや管理アシスタントといった職種が挙げられている。Zahidi氏はこうした仕事を「過去数十年間、多くの女性に良い収入をもたらしてきたホワイトカラー労働」と表現した。
皮肉なのは、AIがこれまでの「肉体労働の自動化」ではなく、ホワイトカラー職を優先的に代替している点だ。製造業の自動化で打撃を受けたのは主に男性だったが、今回は逆の構図になっている。
なぜ女性はAI職に入り込めないのか
背景にある構造的な問題は3つある。
- STEM分野での女性不足:AI人材の多くはSTEM(科学・技術・工学・数学)出身者から採用されるが、この分野自体がもともと男性優位である。
- ソフトウェアエンジニアリングの男性偏重:既存のソフトウェアエンジニアリング業界がすでに男性主体であり、AI業界はその延長線上に形成されている。
- キャリアブレークのリスク増大:女性は男性と比べてキャリアを中断するケースが多いが、「異常なほど速いペースで進化する業界」ではその空白が致命的になりやすい、とDuke氏は指摘する。
また報告書は、AI企業における女性比率が非AI企業より低いことも明らかにした。女性創業者のAIエンジニアリングスキル保有率は急上昇しているが、男性の伸びはそれ以上に速く、相対的な格差は縮まっていない。
「現役世代が生きている間に平等は来ない」
全体的なジェンダーパリティ(男女平等)は改善傾向にあるが、このペースで進めば完全な男女平等まであと120年かかると報告書は試算している。なお、この120年という数字はAI格差単独の試算ではなく、政治・経済・教育・健康の4分野を総合したジェンダーパリティ全体の見通しである。国家元首レベルでの女性比率は2016年の水準まで後退しており、上位層での代表性回復は特に遅れている。
Duke氏は断言する。
「今生まれた女の子たちは、生きている間にトップレベルでの平等な代表性を目にすることはないだろう」
ジェンダーギャップ指数のグローバルランキングでは、英国は昨年より改善したものの、4位から5位に後退した。上位はアイスランド、フィンランド、ノルウェー、ナミビアが占めている。
Zahidi氏はAI業界のジェンダー不均衡を修正することの重要性をこう強調した。「AIは経済全体に影響を与えるからこそ、ここで格差を是正できれば、他のあらゆる分野にも大きな波及効果をもたらす」。
詳細はWomen's AI 'triple penalty' as jobs wiped out and men swipe tech rolesを参照していただきたい。