9月16日、Dataconomyが「Nvidia CEO Jensen Huang says AI safety needs engineering, not laws」と題した記事を公開した。AI規制をめぐる各国政府や市民社会の動きが加速する中、NvidiaのCEO Jensen Huangは「安全性の確保に新たな法規制は不要であり、エンジニアリングで対処すべきだ」と明言した。業界への規制強化を求める世論と真っ向から対立する発言として、業界内外で注目を集めている。
「安全性はエンジニアリングの問題であり、法律の問題ではない」
Huangは、Salesforceが主催する年次カンファレンス「Dreamforce」の場でこう発言した。
「安全性はエンジニアリングの問題であり、法律の問題ではない。我々はソフトウェアを開発している。コンピューティングシステムを開発している。複雑なコンピューティングシステムではあるが、最終的にはコンピューティングシステムだ」
Huangの論旨は明快だ。AIは「エイリアンの知性」ではなく、人間が作った「ハードウェアとソフトウェア」であるため、人間がコントロールできる——というものだ。したがって、「新しい法律も新しい規制も必要ない」と断言した。
安全性の担保については、市場原理で十分だという立場を取る。企業は自社製品の機能・能力・安全性に自信がなければリリースすべきではなく、問題があると判断すれば一時停止すればよい、という考え方である。
なぜ今この発言が注目されるのか
AI規制をめぐる議論は2024年以降、急速に加熱している。背景には複数の事件がある。
- 2024年のCrowdStrikeソフトウェア障害:数千便のフライトが欠航・遅延に追い込まれた大規模インフラ障害
- Metaの180億ドル和解:子どもへのSNS被害をめぐる訴訟
- AIモデルに関連したセキュリティインシデント(元記事に記載の事例)
- チャットボットとの長期会話後の自殺事件をめぐる訴訟
こうした事例を受け、AI企業への規制強化を求める声は政府・市民社会双方で高まっている。Huangの発言はその流れへの明確な反論として位置づけられる。
なお、Huangはオープンウェイトモデル(重みが公開されているAIモデル)を支持しており、プロプライエタリ(非公開)なAIラボへの対抗軸として活用すべきだとの立場を取っている。一方、業界による自主規制の枠組み構築については具体的な言及はなかった。
Microsoftも類似の立場を示す
元記事によれば、同様の論調はMicrosoftのCEO Satya Nadellaからも出ている。Nadellaは「All-In Summit」で、安全性への懸念は特定国だけでなくグローバルに適用されるべきだという見解を示したとされる。ただし、本発言の詳細や文脈については元記事および一次情報源での確認を推奨する。
Huangの野心
Huangはこの場でNvidiaの成長についても強気の姿勢を崩さなかった。
「私はかつてないほど野心的だ。我々の可能性は無限大だ。すべての産業、すべての国にとって、可能性は無限大だ」
「AIブームの減速論」が一部で語られる中、Huangのこうした発言はNvidiaの事業戦略とも連動している。AIインフラへの投資が続く限り、GPU需要は底堅いという判断が背景にある。
「安全性はエンジニアリングで解決する」という主張は、エンジニアにとって一見馴染みやすい論理である。だが、業界の自主性に委ねることへの懸念——とりわけ競争圧力下では安全への投資が後回しになりやすいという問題——は依然として残る。Huangが具体的に言及しなかった自主規制の仕組みについては、今後の業界議論の焦点になるだろう。
詳細はNvidia CEO Jensen Huang says AI safety needs engineering, not lawsを参照していただきたい。