9月16日、Futurismが「AI Really Is Eviscerating Entry-Level Jobs, New Data Shows」と題した記事を公開した。ニューヨーク市の労働市場データをもとに、AIがエントリーレベルのIT職に与える深刻な打撃を詳しく報告している。
「杞憂」と言われてきたAI失業論に初めて実データが裏付け
これまで「AIによる雇用破壊」は予測や懸念として語られることが多く、特定の職種・地域に絞った実データによる裏付けは乏しかった。今回、NYC特化の政策シンクタンク「Center for an Urban Future」がまとめた報告書は、その空白を埋める具体的な数字を初めて示した点で重みがある。
同報告書はニューヨーク市の独立系ローカルジャーナリズムメディア「The City」が最初に報じ、その後Futurismが取り上げた。Center for an Urban Futureは1996年設立のニューヨーク市専門の非営利政策シンクタンクで、都市の経済・雇用・教育に関する独自調査を継続的に公表している機関だ。The Cityは広告主や政治的資本から独立した非営利報道機関であり、両者の組み合わせは一次ソースとしての信頼性が高い。
Futurismの記事は「これまで長く恐れられてきたAIによる雇用終焉は、おおむね煙と鏡に過ぎなかった——ただし、エントリーレベルのテック労働者という巨大な例外を除いて」という書き出しで始まっており、この問題をより広い雇用破壊の議論とは切り離して捉えている。
エントリーレベルのCS求人が2022年比で49%減
Center for an Urban Futureの集計によると、「コンピューター・数学」分野のエントリーレベル求人数が2022年以降で49%減少した。コンピューターサイエンスの新卒が最もダメージを受けているが、IT職はあくまで「最初のドミノ」という見方もある。
同団体のエグゼクティブ・ディレクターであるJon Bowlesは次のように述べている。
「エントリーレベルの求人全体が崖から落ちるように減っており、テック業界のキャリアの第一段階は強烈なプレッシャーにさらされている。限られた経験しか持たない若者にとって、こうしたポジションは以前より格段に見つけにくくなっており、競争も激化している」
AIだけが原因ではないが、AIが火に油を注いでいる
記事はAIを最も分かりやすい要因としながらも、複合的な背景を指摘している。
- COVID期の過剰採用の反動:テック企業はコロナ禍の採用ブームを修正するために人員削減を続けており、その流れがエントリー採用の縮小とも重なっている。
- 米国全体の雇用市場の悪化:元記事は、2025年7月時点の調査として、米労働力人口の約4分の1が実質的に失業状態にあるという推計を引用している(LISEP調査)。なお、この数字はLISEPが独自に定義する「True Rate of Unemployment(真の失業率)」に基づくものであり、政府が公式発表するU-3失業率とは調査手法・定義が異なる点に留意が必要だ。
エントリーレベルの採用が落ち込んでいる業種はIT職だけではない。以下の分野でも同様の傾向が確認されている。
- オフィス・事務サポート
- 金融オペレーション
- アート・デザイン・エンターテインメント・スポーツ・メディア
- 教育・図書館関係
記事の結論は率直だ。「明日すべてのAIチャットボットをシャットダウンしたとしても、エントリーレベルの雇用が自然に回復する可能性は極めて低い」。AIはこの状況をさらに悪化させているが、AIだけが原因ではないという見方だ。
キャリアの入口に立つエンジニア志望者にとっては、スキルの差別化や実務経験の早期獲得がより切実な課題になっているといえる。
詳細はAI Really Is Eviscerating Entry-Level Jobs, New Data Showsを参照していただきたい。