9月16日、ゲーム・技術系メディアのfrvr.comが「PS5 Linux lead quits as open-source projects have become "a bunch of noobs using LLMs" that "they don't even understand"」と題した記事を公開した。
PS5へのLinux移植プロジェクトを牽引してきた著名なハッカー、Andy「TheFlow0」NguyenがプロジェクトからのWithdrawalを表明した。技術的な行き詰まりが理由ではない。AIツールを使って「自分でも理解していないコード」を投稿する開発者たちがコミュニティに流入し、さらにはプロジェクトの根幹を支える脆弱性をSonyに報告してしまったことが直接の引き金となった。
「優秀な研究者の集まり」から「ノービスの群れ」へ
Nguyenは、PlayStation Vitaで初のカーネルエクスプロイトを作成したことで知られる人物だ。10年以上にわたってPlayStationシステム向けのエクスプロイトやホームブリューソフトを開発し続け、PS5にフルのLinux環境を動作させる——いわばPS5をSteam Machineのように使えるようにする——PS5 Linuxプロジェクトを主導してきた。
そのNguyenがプロジェクト離脱をソーシャルメディアで表明した際、怒りの矛先は技術的な困難ではなく、コミュニティの変質に向いていた。
「このシーンはかつて、非常に優秀な研究者たちの集まりだった。しかし今や、LLMを使って自分でも理解していないハックを書くだけのノービスの群れになってしまった」
ここで指摘されているのは「バイブコーディング(vibe coding)」と呼ばれる開発スタイルだ。コードの中身を理解しないままAIが生成したコードをそのまま使い、プルリクエストやパッチとして投稿する行為を指す。2025年ごろから開発者コミュニティで広く使われるようになった言葉で、AIコーディングツールの普及を背景に急速に定着した。オープンソースプロジェクトのメンテナーにとって、こうした投稿のレビューは品質を保つうえで大きな負担になる。
同様の問題意識はPS5 Linux以外でも表面化している。PS2/PS3エミュレータのRPCS3も最近、AI生成コードの投稿を明示的に禁止する方針を打ち出した。
バグをSonyに報告され、プロジェクトが詰んだ
離脱の直接の引き金は、さらに具体的な出来事だった。
Nguyenが「スロップキディ(slop kiddies)」と呼ぶ——AIを使ってコードを書くだけの初心者たち——が、PS5のハイパーバイザー(ゲーム機のセキュリティを担う仮想化レイヤー)に残存していた脆弱性を発見した。この脆弱性はNguyen自身が以前から把握していたもので、Linux移植プロジェクトを支える重要な足がかりだった。
ところが「スロップキディ」たちは、その脆弱性をSonyのバグバウンティ(脆弱性報告に対する報奨金制度)に報告することを選んだ。Nguyenは「せめてGTA 6のPC版がリリースされるまで待ってくれ」と懇願した。これは、GTA 6のPC版がリリースされればPS5ユーザーがゲームを合法的に購入しつつ、Linux環境上のSteam経由でプレイできるという構想を念頭に置いたものだ——しかし約束は一日も持たなかったという。
「待つと言ったのに、一日も経たずに報告を決めてしまった」
Sonyによってバグが修正されたことで、新しいファームウェアへの対応は事実上不可能になった。Nguyenが主導した最終バージョンはVersion 2.5となり、対応機種はPS5 Phat・SlimのファームウェアバージョンVersion 3.00〜7.61に限定される。PS5 Proのサポートや2027年リリースを目標にしていた計画はすべて白紙に戻った。
オープンソースとAIの衝突——構造的な問題
Nguyenの離脱はひとりの開発者の個人的な結末ではなく、オープンソースコミュニティが現在直面している構造的な緊張を象徴している。AIコーディングツールの普及によってコードを「出力できる」人間のハードルは大幅に下がった。しかしそれは同時に、自分が何をしているか理解していないコードをコミットする投稿者の流入も招いている。
ベテラン開発者たちが長年かけて積み上げてきたコミュニティの質が急速に希薄化しているという感覚は、Nguyenだけが抱えているものではない。彼の発言がこれほど反響を呼んでいるのは、同じ問題意識を持つ開発者が多数存在するからだ。
詳細はPS5 Linux lead quits as open-source projects have become "a bunch of noobs using LLMs" that "they don't even understand"を参照していただきたい。