9月12日、Sophia Fox-Sowellが「Newsom signs legislation establishing framework for third party AI auditors」と題した記事を公開した。連邦レベルのAI規制が停滞する中、カリフォルニア州知事がAIシステムを独立監査する第三者機関の枠組みを定める2本の法律に同日署名した。「誰がAIを審査するか」と「その審査者をどう管理するか」という制度インフラを一度に整備するこの動きは、州主導AI規制の新たな到達点として注目に値する。
2本の法律が整備するAI監査の枠組み
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月9日(水)、AIシステムの独立監査に関する2本の法律に署名した。
- SB 813:AIシステム・モデルを評価できる「独立検証機関(Independent Verification Organizations)」の枠組みを創設する。
- AB 1405:AI監査人の州登録制度を設け、監査人の独立性・透明性・誠実性に関する基準を定める。
端的に言えば、「誰がAIを審査するか」という主体の定義(SB 813)と、「その審査者をどう管理するか」という仕組み(AB 1405)をセットで整えた格好だ。両法は独立した立法として成立したものだが、制度設計上は相互補完的に機能するよう設計されており、同日に署名されたことで一体的な枠組みとして機能する。
ニューサム知事は声明で「AIは大きな可能性を持つが、市民を守るための実質的な安全策を伴って開発・展開されなければならない」と述べた。
連邦政府が動かない中での州主導
今回の法律が持つ背景として重要なのは、連邦レベルでのAI規制が進んでいないという状況だ。
カリフォルニアに先立ち、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事は2025年7月にArtificial Intelligence Safety Measures Actに署名している。同法は主要なフロンティアAI開発者(大規模言語モデル等を開発する先端AI企業)に対し、年1回の独立した第三者監査を義務付けるものだ。
プリツカー知事は「AIが強力になる一方で連邦政府が動こうとしない以上、州が市民を守る責任を負う」と述べており、今回のニューサム知事の発言とも共鳴する。ニューサム知事もまた「連邦政府はこの局面に見合った、強固な全国規制を打ち出さなければならない」と連邦議会に対して踏み込んだ要求をしている。州ごとの規制が積み上がることで、事実上の全国標準が形成されていく流れとも読める。
カリフォルニア州自身もAI積極活用中
今回の規制強化と並行して、カリフォルニア州自身もAI導入を加速させている点は見逃せない。規制を課す側が自らもAIを積極活用しているという構図だ。
- AskCA:住民が行政サービスを使いやすくするためのAIアシスタントとして最近ローンチした、州民向けの対話型窓口。
- Claude(Anthropic製):州の各機関がツールとして利用可能になった大規模言語モデル。民間の最先端モデルを行政業務に直接導入する例として注目される。
- Poppy:州が内部開発したAIアシスタント。現在は州職員を対象にテストが進められている。
いずれも住民サービスの効率化や職員の業務支援を目的としたものだが、これらのツール自体が今回整備した監査枠組みの適用対象になり得る点で、制度と実務が表裏一体の関係にある。
また、州と契約するAIベンダーに対しては、バイアス・公民権侵害・有害コンテンツといったリスクへの対処を求める行政命令による調達審査の強化も進めている。
AI規制の積み重ね
今回の2法は、カリフォルニアがこれまで構築してきたAI規制の上に積み上がるものだ。既存の規制には、フロンティアAI開発者への安全対策の開示義務・インシデント報告義務、AIが生成したコンテンツに関するルール、自動意思決定(Automated Decision-Making)の規制などが含まれる。
こうした既存規制は「何をすべきか」を定めるものだったが、今回の2法が加わることで「それを誰が検証し、その検証者をどう担保するか」という執行側の制度インフラが初めて整う。規制の実効性を底上げする仕組みとして、今後の運用が注目される。
詳細はNewsom signs legislation establishing framework for third party AI auditorsを参照していただきたい。