9月11日、The Next Webが「The UAE is splitting up its $30bn AI data centre after Iran named it as a target」と題した記事を公開した。UAEが総額300億ドルのAIデータセンター計画を単一巨大キャンパスから分散型ネットワークへ再設計している件を報じたもので、イランによる攻撃脅威が直接の引き金となっている。元記事はReutersによる一次報道をもとにTNWが詳報した記事であり、以下はその内容をもとに構成している。
「当たり外れのない標的」は作るべきではない
もともとの計画は、アブダビ郊外の砂漠に10平方マイル(約26平方キロメートル)の単一キャンパスを建設するというものだった。これはOpenAI・Oracle・SoftBankが組む合弁ベンチャー「Stargate」のUAE拠点で、第1フェーズだけで300億ドル、1ギガワットの計算クラスターを構築する計画だ。200MWは今年中に稼働予定で、最終的には5ギガワットへの拡張が見込まれている。運営はUAEのAIグループ**G42**が主導し、Nvidia・Cisco・SoftBankが参加している。
ところが2026年3月、イランがGulf諸国の米軍駐留地に向けてミサイルと無人機を発射した。元記事によれば、UAE国内のAWSデータセンター2棟が被弾し、現在もサービスが停止しているという(この情報はTNW記事がReutersの報道を根拠としており、AWSおよびAmazonからの公式コメントは現時点で確認されていない)。翌4月にはイランの軍がStargateの建設予定地を名指しした動画を公開した。動画には米軍機が駐留するアル・ダフラ空軍基地の隣にサイトが位置することを示す地図が添付されていた。これ以上ない明確な警告だった。
データセンターが「軍事工学」の対象になる
この状況を受け、UAE側が検討している対策は通常のデータセンター設計とはかけ離れている。
- 施設の地下化
- 機密性の高い軍事ワークロードを山岳部に収容
- ドローン・ミサイルの迎撃または電子妨害が可能な防空システムの配備
- 耐爆コンクリートの使用
- 電力・冷却系統の完全二重化(一部喪失で全体が落ちない構成)
GPUを動かすための建物に施す対策ではない。しかし今やそれが現実の設計要件になっている。
元記事(Reuters報道をもとにしたTNWの報告)によれば、第1フェーズ自体は継続されるが、修正を伴う形になるという。新しいマスタープランがまだ最終承認されていないため、コストとスケジュールへの影響は現時点では不明だ。
分散化がもたらす技術的コスト
1ギガワットを複数サイトに分散させることは、単純なトレードオフではない。
大規模なAIトレーニングは、チップ間のケーブルそのものが演算機構の一部として機能するため、チップを物理的に近接させることが前提になっている。クラスターを地理的に分割すると、そのまま性能劣化につながる。サイトの堅牢化にはコストと時間もかかる。いずれも現時点では公表されていない。
「安全な場所」を求めて米国へも展開
G42はこの2年間でHuaweiとの関係を解消し、米国政府の監督下でデータセンターを開放することで先端チップの調達ルートを維持してきた。さらに米国内での事業拡大も進めており、ミネアポリスでは既存のオフィスビルを改装したデータセンターを取得している。
UAE国内では小規模・分散化し、リスクの低い海外に容量を確保するという動きは、同じ判断を二度下したように見える。
なお、Stargateを巡るトラブルはUAEだけではない。英国ではエネルギーコストと規制上の問題からOpenAIがStargate UKを一時停止しており、これでStargateの国家プロジェクトが立て続けに計算需要以外の理由でつまずいたことになる。
アブダビは1,000億ドルのAI資本が同国の金融センターに集積していると投資家に売り込んできた。その旗艦プロジェクトが「ミサイルへの耐久性」を設計要件として再検討されるとは、当初のセールストークとは大きくかけ離れた展開だ。※編集部の考察:湾岸地域は安価なエネルギー・資本・土地でAI産業を誘致したが、地政学的緊張がその「立地優位性」そのものをリスク要因に転じさせた構図は、今後の国際的なデータセンター立地判断にも影響を与えうる。
詳細はThe UAE is splitting up its $30bn AI data centre after Iran named it as a targetを参照していただきたい。