9月10日にAmazon Adsが発表し、翌9月11日にThe Next Webが「Amazon opens ChatGPT ads to its advertisers in a US pilot」と題した記事を公開した。AmazonがChatGPT上の広告枠を自社の広告プラットフォーム経由で購入できるようにしたことについて詳しく紹介されている。
Amazon DSP経由でChatGPT広告が買える時代へ
Amazon AdsがOpenAIとの提携を発表した。米国の一部広告主がすでにパイロットテストに参加している。
従来、ChatGPT広告を出稿するには、OpenAI自身のインターフェース、あるいはCriteoやKargoといった中小のアドテク企業を経由する必要があった。今回の提携により、Amazon DSP(Demand-Side Platform、プログラマティック広告の買い付けプラットフォーム)を使っている広告主は、既存のキャンペーンをそのままChatGPTへ拡張できる。OpenAIと直接契約する必要はない。
課金モデルはクリック課金(CPC)またはインプレッション課金(CPM)の選択制。キャンペーンの設定と管理はAmazonが行い、どの広告を配信するかの判断はOpenAI側のシステムが担う。
広告はChatGPTの回答の末尾にテキストまたは画像形式で表示され、「スポンサー」と明示される。CNBCが挙げた具体例では、「マラソンのトレーニング方法を教えて」とユーザーが尋ねた場合、回答の下にAmazonで販売されているランニングシューズの広告が表示されるというイメージだ。
パイロット参加企業の声
Amazon DSPのオムニチャネル部門ディレクター、Chris Conettaは「会話型広告はブランドが新規・既存オーディエンスにリーチする機会として最も成長が速い」と述べた。
パイロットに参加しているブランドの一つがDelta Vacations(デルタ航空の旅行パッケージ事業)だ。同社社長のKatrin Koenigは「消費者インサイトを活用し、ChatGPT広告においてどのタイミングでどのように登場するかを判断する」とコメントしている。
Delta Vacationsのような大手ブランドが参加している点は示唆的だ。旅行・レジャー分野は購買意欲とクエリ内容が直結しやすく、会話型AIとの親和性が高いカテゴリとして広告主から注目されている。Amazon DSPの既存顧客が同じ管理画面からChatGPTへ出稿できるようになることで、今後パイロット参加企業の幅はさらに広がると見られる。
OpenAI広告ビジネスの現状と今回の戦略的意義
OpenAIがChatGPTの広告販売を米国で開始したのは2025年2月。Best BuyやWilliams-Sonomaが初期の広告主として参加した。2月時点でChatGPTの週間アクティブユーザー数は9億人と発表されている。
その後、広告ビジネスは急成長し、8月末時点で年換算売上高が10億ドルのペースに達したとOpenAIは発表した。欧州でも31市場への広告展開を8月に表明している。
こうした成長フェーズにおいて、OpenAIがAmazonという巨大な広告インフラを引き込んだ意味は大きい。デジタル広告市場ではGoogleとMetaが圧倒的なシェアを持ち、広告主はその両社のDSP・管理ツールに慣れ親しんでいる。OpenAIが独自のインターフェースだけで広告主を開拓しようとすれば、習熟コストや営業コストの壁は高い。Amazon DSPという既存のワークフローに乗る形でChatGPTへの出稿経路を確保することは、その壁を大幅に下げる施策といえる。また、Amazon DSPはeコマース購買データと広告配信を連動させる強みを持っており、「会話→購買」という新たなファネルを検証するうえでOpenAIにとっても有益なパートナーシップだ。
今回参入するAmazonの広告事業の規模はOpenAIとは桁が違う。TechRadarはMarketing Diveを引用し、Amazonをデジタル広告業界第3位と位置づけており、年間広告収入は約700億ドルに達する。
AmazonとOpenAIの複雑な関係
両社の関係は広告だけにとどまらない。Amazonは2025年2月、総額500億ドルのOpenAIへの投資に合意した(まず150億ドル、残り350億ドルは条件達成次第)。The Informationは第2弾のトランシュも完了したと報じている。この提携の下、OpenAIのサービスはAmazonのBedrockクラウドサービス経由で提供され、Amazon独自のAIチップ「Trainium」も使用する。
一方でAmazon自身はChatGPTやClaude、Geminiといった外部AIプラットフォームから自社ショッピングストアへのアクセスを厳しく制限してきた経緯もある。自社のAIショッピングツールへの投資を優先する姿勢を取りながら、同時にChatGPT上で広告も出稿している——4月から8月の期間でAmazonはChatGPT上のリテール広告主トップだった(Sensor Towerのデータ)。
こうした複雑な立ち位置で動いているAmazonが、今度は広告主としてではなく広告インフラの提供者としてChatGPTのエコシステムに深く組み込まれることになる。
詳細はAmazon opens ChatGPT ads to its advertisers in a US pilotを参照していただきたい。