9月10日、BBC NewsのJessica Rawnsleyが「Google to fund Finnish AI with €13bn investment and nuclear power pact」と題した記事を公開した。Googleがフィンランドのデータセンター整備に130億ユーロを投じ、原子力発電所との長期電力購入契約を締結したという内容だ。
Googleのヨーロッパ最大投資、その核心は「原子力との22年契約」
投資の規模よりも注目すべきは、契約の構造だ。Googleはフィンランドの電力会社Fortumと22年間の電力購入契約(PPA)を締結し、フィンランド南部に位置するロビーサ(Loviisa)原子力発電所の出力の最大**50%**を買い取ることで合意した。
ロビーサ原発は現在、フィンランドの総発電量の約**10%**を担う主力電源だ。Fortumはこの契約により長期的な収益の見通しが立ち、発電所の稼働延長と発電容量拡大に向けた投資を進める方針を示している。再エネPPAが主流になりつつあるなかで、原子力との超長期契約という選択肢はAI電力需要の深刻さを端的に示している。
なぜフィンランドなのか
フィンランドがデータセンター立地として選ばれる理由は複数ある。
- 冷涼な気候:サーバー冷却コストを大幅に削減できる
- 低炭素な電力グリッド:再エネと原子力が主力
- 電力網の余裕:他の欧州主要国と比べて送電網が比較的混雑していない
元記事によれば、同週にはTikTokもフィンランド南部のコウボラ(Kouvola)に10億ドル規模のデータセンター建設を発表しており、フィンランドへのAI投資集中が鮮明になっている。TikTokは「強固なデジタルインフラ、クリーンなエネルギー構成、堅実なデータガバナンス、優秀な技術人材」をその理由として挙げた。
投資の内訳と建設スケジュール
今回の130億ユーロ(執筆時点のレートで概算約11兆円規模)は、Googleにとってヨーロッパ単一国への最大規模の投資となる。具体的な用途は以下の通りだ。
- カヤーニ(Kajaani)、ムホス(Muhos)、ヴァーラ(Vaala)に新規データセンター3棟を建設
- ハミナ(Hamina)の既存施設を拡張(2009年に旧製紙工場を転用して開設した拠点)
- クリーンエネルギープロジェクト、地域の生物多様性・教育・研究・人材育成を支援する基金への拠出
建設は2027〜2028年を予定。Googleの試算では、建設期間中に3万7,000件以上の雇用を支え、フィンランドのGDPを年間36億ユーロ押し上げるとしている。
整備したインフラは、AIアシスタントGeminiのほか、Search・Maps・YouTubeなどのサービス基盤として活用される。
AI電力需要の規模感
22年というPPA期間は、通常の再エネ契約(10〜15年が多い)と比べても際立って長い。安定した大容量電源を確保するためなら超長期コミットも辞さないという姿勢は、AIデータセンターの電力調達が従来のクラウドインフラとは異なる次元の課題になっていることを示している。
なお、Googleの親会社Alphabetが今年初めにAI基盤拡充向けの設備投資計画を大幅に引き上げると発表したことは広く報じられているが、元記事には具体的な金額の記載はない。今回のフィンランド投資がそのグローバル投資計画の一環であることは元記事でも触れられており、同社のAIインフラへの積極姿勢を示す文脈として位置づけられている。
※編集部の考察:原子力PPAはMicrosoftによるスリーマイル島原発の再稼働支援契約など、Big Tech各社で相次いでいる選択肢だ。再エネだけでは賄いきれない大容量・安定電源のニーズが、長期停止していた原発の再評価や新規契約を後押しする構図が定着しつつある。
詳細はGoogle to fund Finnish AI with €13bn investment and nuclear power pactを参照していただきたい。