9月11日、Craig Haleが「Even Microsoft's own software teams are struggling with the avalanche of AI-generated code」と題した記事を公開した。この記事では、AI生成コードの急増によってMicrosoft Edge開発チーム自身のレビュープロセスが逼迫している実態について詳しく紹介されている。
AIがEdge拡張機能の申請を爆増させている
AIコーディングツールの普及により、開発者が拡張機能をより速く、より容易に作成・調整できるようになった結果、Microsoft Edgeの拡張機能申請数が急増している。いわゆる「バイブコーディング」(vibe coding)——設計の細部をAIに委ねながら対話的にコードを生成・調整するスタイル——がその主因とEdgeチームは指摘している。
Microsoftはこの動向をEdgeエコシステムにとって概ねポジティブと受け止めている。Chromeに対して長年劣勢に立たされてきたEdgeにとって、拡張機能の充実は競争力強化に直結するからだ。なお、元記事執筆時点のStatcounterデータによれば、Chromeのデスクトップシェアはおよそるおよそ71%、Edgeは11%前後と大きな開きがある。この数値はデータ取得時点によって変動するため、最新値はStatcounter GlobalStatsで確認されたい。
しかし問題がある。申請量の急増がレビューチームを直撃しているのだ。
レビューパイプラインが「追加的な負荷」を受けている
Edgeチームは2025年に「expedited review process(迅速化されたレビュープロセス)」を導入済みだったが、それでも「レビューパイプラインが追加的な負荷を経験しており、レビュー時間が最適とは言えない状態にある」と公式に認めた。
AIを使って誰でも短時間で拡張機能を量産できるようになった結果、レビューする側の人間のキャパシティが追いつかなくなっている——これはAIが加速させた非対称性の典型例だ。同様の認識はMicrosoftのセキュリティ部門幹部も示しており、「人間がAIの生産速度に追いつくのに苦労している」旨を元記事は伝えているが、具体的な発言者名や出典は元記事の記述に依拠している点に留意されたい。組織横断的な課題として受け止められていることは確かだ。
この問題はMicrosoft固有のものではない。GitHubをはじめとするコードホスティングプラットフォームや、各種アプリストアの審査チームも、AI生成コードの急増による審査負荷の拡大という共通の課題に直面しつつある。Edgeチームの苦境は、プラットフォームを運営するあらゆる組織が遠からず向き合うことになる問題の先行事例と位置づけられる。
Microsoftが取った対策
Edgeチームは審査基準を下げることなく、レビューのスループットを改善するために以下の変更を実施した。
- 自動化システムの導入:既知のポリシー違反やセキュリティ問題を自動検出するシステムを追加。人間のレビュアーが判断すべき案件を絞り込み、一件あたりの審査精度を維持する狙いがある
- 申請フローの効率化:拡張機能がレビューパイプラインを通過する順序・方法を見直し、開発者の承認待ち時間を短縮
- Featuredバッジの再評価サイクルを15日ごとに短縮:「60以上の品質シグナル」で拡張機能を評価するFeaturedバッジが、従来より高頻度で再チェックされる。高品質な拡張機能がより早く認定を得られ、開発者も投資対効果のフィードバックを早期に受け取れる
Microsoftは「EdgeをExtensionのビルド・公開・成長に最も適した場所にすることが目標だ」と述べている。自動化によって検査の数や基準を下げるつもりはないとも明言しており、品質を維持しながらスループットを引き上げるという方針を明確にしている。
「AIが作ったコードをAIで審査する」という構図
今回の対応で着目すべきは、AI生成コードの洪水に対して、Microsoftが自動化(≒AI活用)で応じている点だ。人手によるレビューの限界が露わになり、審査プロセス自体を自動化で補完する方向に舵を切っている。
AIコーディングツールが開発のスピードを上げれば上げるほど、レビューや品質管理のボトルネックがシフトしていく。これは開発工程の上流だけでなく、プラットフォーム運営・セキュリティ審査・コードレビューといった下流工程全体に波及する構造変化だ。Edgeチームが今回実施した施策——自動化による検出と人間による判断の役割分担——は、こうした非対称性への一つの現実的な回答として注目に値する。
AIが生み出す成果物の量が人間の審査能力を恒常的に上回る状況は、今後さらに多くの領域で顕在化すると見られる。Edgeチームの取り組みは、その課題にどう向き合うかを示す具体的な事例として、プラットフォーム運営者のみならず、開発組織全体にとって示唆に富む。
詳細はEven Microsoft's own software teams are struggling with the avalanche of AI-generated codeを参照していただきたい。