9月9日、TechCentral.ieが「International report shows only a quarter of companies are scaling AI successfully」と題した記事を公開した。Gartnerが1,303人を対象に実施した調査によると、AIを組織全体にスケールさせることに成功している企業はわずか22%にとどまる。投資意欲は依然として旺盛だが、成果の測定体制が追いついていない実態が浮き彫りになった。
AIスケール成功企業は4社に1社未満
Gartnerの調査によると、**AIを複数のビジネスユニット全体にスケールさせること、またはAIファーストのアプローチを実践できている組織はわずか22%**にとどまる。
にもかかわらず、投資意欲は衰えていない。回答者の85%が2026年にAI支出をさらに増やす計画を持っており、スケールが進まない状況でも資金が流れ続けている構図だ。
GartnerのアナリストTina Nunnoは、この「スケールの失敗」と「投資意欲の旺盛さ」の組み合わせを問題視している。財務的な洞察の欠如が、組織が自社のAI支出に対して持つべきコントロールを損なっている、と指摘する。
高パフォーマー・低パフォーマーの定義と、その決定的な差
調査が浮き彫りにした最も示唆的なデータは、成功企業と失敗企業の間にある「可視性」の差だ。
Gartnerは、AIイニシアティブのリターンを体系的に追跡・測定できている企業群を「高パフォーマー(high performers)」、成果の把握が不十分な企業群を「低パフォーマー(low performers)」として分類している。この分類はAIプロジェクトの技術的な洗練度ではなく、成果測定の仕組みを持っているかどうかを主軸に置いている点が特徴的だ。
高パフォーマー群では、AIイニシアティブのリターンが厳密に追跡されており、81%のAIプロジェクトで正のリターンが得られたという。
一方、低パフォーマー群では成果の可視化が進んでいない。AIプロジェクトの29%について、成果が出たかどうかさえ把握できていない状態だという。
つまり、AIスケールの成否を分けるのは技術の選択ではなく、ROIを追跡するための仕組みを持っているかどうかである。ROI(投資対効果)を測定するフレームワークなしにAIプロジェクトを走らせ続けても、改善のサイクルは回らない。
「投資しながら成果を測らない」という構造的問題
この調査が示す状況は、多くの組織が陥りがちなパターンを反映している。経営層がAIへの投資を承認し、プロジェクトが立ち上がるが、その後の成果測定が曖昧なまま次の投資が決まっていく。低パフォーマー群の29%がプロジェクト結果を把握できていないという数字は、単なる管理不足ではなく、**AIガバナンスの構造的欠如**を示している。
AIガバナンスとは、AIシステムの開発・運用・評価にあたって責任の所在や意思決定プロセスを明確にする仕組みの総称であり、Gartnerをはじめ主要な調査機関が近年とくに重視しているテーマだ。成果測定の体制はその中核をなす要素のひとつとして位置づけられている。
Tina Nunnoが「財務的洞察の欠如」を問題の核心として挙げているのも、この文脈からだ。技術的な実装よりも、コスト・効果の計測体制を先に整備することが、スケール成功の前提条件であるとGartnerは示唆している。
AIスケールを阻む要因と、測定体制の整備
Gartnerがこの調査で訴えているのは、「なぜAIはスケールしないのか」という問いへのひとつの答えだ。技術選定の失敗や人材不足といった要因がよく語られる一方で、本調査は成果を測る仕組みの不在こそがボトルネックだと示している。
高パフォーマーと低パフォーマーの差は、プロジェクト開始時点から生まれている可能性が高い。成功企業はAIイニシアティブの立ち上げ段階から測定指標(KPI)と評価サイクルを設計し、ROIフレームワークを組み込んでいる。一方、失敗企業はプロジェクトを走らせながら事後的に成果を問おうとするが、測定の基盤がないため評価自体ができない状態に陥る。
この構造は、AI投資の意思決定サイクルにも影響する。成果が見えなければ、何を改善すべきかも分からない。結果として、効果の薄いプロジェクトに投資が継続され、組織全体のAI成熟度が停滞する。投資規模の拡大と測定体制の整備を並走させられるかどうかが、今後のAIスケールを左右する鍵になるとGartnerは見ている。
詳細はInternational report shows only a quarter of companies are scaling AI successfullyを参照していただきたい。