9月9日、テクノロジーメディアwccftechにてRamish Zafarが「Samsung and SK hynix Memory Inventories Crash Below 10 Days as AI Demand Triggers Historic Shortage, Says Report」と題した記事を公開した。韓国メモリ大手2社の在庫がわずか10日分を下回るという史上まれな水準にまで落ち込み、AI需要がメモリサプライチェーン全体を根底から揺さぶっている実態が明らかになった。
在庫10日分以下という異常事態
韓国メディアBusiness Koreaの報道によれば、SamsungとSK hynixのメモリチップ在庫が10日分を下回る水準にまで低下した。この数字を提示したのは韓国の投資会社KB Securitiesのリサーチ責任者、Kim Dong-Won氏だ。
通常、半導体メーカーは数週間から1〜2ヶ月分の在庫を確保して需要変動に備える。10日分以下というのは、わずかな需要の上振れや生産トラブルが即座に市場への供給ショックとして波及しうる危険水域だ。Kim氏も「低在庫に起因するボリューム不足が、市場への追加的なショックを引き起こしかねない」と警戒感を示している。
なお、元記事が参照するBusiness Koreaのレポートおよびデータの調査時点は本記事公開(9月9日)と近接しており、在庫水準は直近の市況を反映したものとして読むべき数字だ。
なぜここまで在庫が枯渇したのか:HBMという構造問題
背景にあるのは、**HBM(High Bandwidth Memory)** の生産への大規模なリソース転換だ。
HBMとは、複数のDRAMダイを縦に積み重ね、シリコン貫通電極(TSV)で接続した高帯域幅メモリで、AI向けGPU(NVIDIAのH100/B200系など)に不可欠な部品となっている。HBMはDRAMの生産設備を流用して製造されるため、HBMの増産はDRAM全体の生産キャパシティを圧迫するという構造的なトレードオフがある。
SamsungやSK hynixは、より利益率の高いHBM向け受注を優先した結果、一般消費者向けのDRAMや企業向けSSDに回るキャパシティが縮小した。
2027年にかけてさらに悪化する可能性
状況は今後も改善しない可能性がある。次世代規格であるHBM4の製品が投入されれば、現行のHBM3eよりもさらに製造キャパシティを消費するため、2027年にかけて不足が深刻化するとBusiness Koreaは指摘する。
KB Securitiesのレポートは、AIインフラ向け投資が2026年に1.3兆ドル規模に達し、前年比60%成長になると予測している。この数字はあくまで予測値であり、実績として確定したものではない点に留意が必要だ。さらにその支出のうち57%をメモリチップが占めるという見通しも示されており、メモリ市場への需要集中は当面続く見通しだ。
DDR5・エンタープライズSSDにも波及、GPU価格も上昇
影響はHBMにとどまらない。Kim氏によれば、AIインフラからの高需要が**DDR5** およびエンタープライズ向けSSD市場にも波及し、これらの分野でも史上まれな供給不足が生じる可能性があるという。
GPUの価格にも影響が出ている。NVIDIAはすでに今年3度目となるGPU価格の引き上げを実施しており、値上げ幅は20〜30%に及ぶと報じられている。メモリの価格体系にも歪みが生じており、3GB GDDR7メモリチップの価格が2GB品の3倍になっているにもかかわらず、容量増加は50%に過ぎないという逆転現象も起きている。
まとめ
SamsungとSK hynixという世界トップのメモリメーカーが在庫10日分以下という状況に追い込まれた事実は、AIインフラ投資ブームが半導体サプライチェーン全体に与えている圧力の大きさを端的に示している。HBM4移行期を迎える2026〜2027年にかけて、この構造的な供給制約はさらに深刻化する見込みだ。
詳細はSamsung and SK hynix Memory Inventories Crash Below 10 Days as AI Demand Triggers Historic Shortage, Says Reportを参照していただきたい。