9月10日、AWSが「ICYMI: What landed for AI builders in August 2026」と題した記事を公開した。2026年8月にAmazon Bedrock・AgentCore・Strandsに追加された主要機能をまとめたものだ。エージェントが自律的にAPIへの支払いを行う「AgentCore Payments」、最大14日間のセッション継続、100万トークンコンテキストウィンドウへの対応など、AIエージェントを本番運用に耐えうる基盤として整備する方向性が明確に打ち出されている。
AgentCore——エージェントを「長く・安全に・賢く」動かす基盤
今回のアップデートで実用インパクトが特に大きいのがAgentCore Paymentsだ。エージェントがAPI・MCP(Model Context Protocol)リソース・有料コンテンツへのアクセスと支払いを自律的に行えるようになった機能で、支出上限はインフラレベルで強制される。エージェントへの権限委譲が進む中で、金銭的なガードレールをアプリケーションコードではなくプラットフォーム側で担保できる点は運用上の意義が大きい。
セッション継続については、AgentCoreのランタイムインスタンスが最大14日間の長期セッションに対応した。ランタイムインスタンスはエージェントを専用実行する環境で、今回のアップデートではGPU高速化・メモリ最適化・コンピュート最適化を含む複数のAmazon EC2インスタンスタイプへの対応も追加されている。長期間にわたる調査・コーディング・監視タスクをエージェントに委任するユースケースに直接応える形だ。対応リージョンもUS West(N. California)とAsia Pacific(Hyderabad)に拡大している。
Temporal Policies(時系列ポリシー)は今回の新機能の中でも実装上のインパクトが大きい。エージェントがすでに実行したアクションの履歴に照らして次のアクションを評価し、シーケンスの強制・承認ゲート・コール間の値の一致検証・データ鮮度チェックなどを行う。エージェントに自律性を持たせながら「何を・どの順番で・どのレートで・いくらまで」を制御する仕組みがインフラレベルで整った。
他にもAgentCoreには以下の機能が加わっている:
- Rate Limiting:ユーザーまたはグループ単位でリクエスト数・推論トークン数・同時接続数を制御
- Web Search in AgentCore:ドメインのインクルード/エクスクルード設定と公開日フィルタリングが可能
- AgentCoreメモリの拡張:会話履歴だけでなく、アクティビティログ・行動イベント・システムイベントなどの構造化JSONデータから長期記憶を抽出可能に。テナントまたはユーザー単位の細粒度アクセス制御にも対応
100万トークンコンテキスト+Web検索——Amazon Bedrockのモデル強化
今回のアップデートでは、Amazon Bedrock上で提供される複数のモデルが100万トークンのコンテキストウィンドウに対応した。同時にプロンプトキャッシングも利用可能となり、コンテキストを再利用する際のコストとレイテンシを削減できる。
大規模コードベース全体や規制文書を一度に読み込みつつ、Web Search機能によって最新の公開情報(ライブ価格情報や新規リリースされたドキュメントなど)を取得し、引用付きの回答を1回のAPIコールで返す——というワークフローが実現できる。別途検索プロバイダーを統合する必要はない。
また、クロスリージョン推論が25以上のAWSリージョンに拡大された。Global Profileを使えばより低いトークン単価で最大容量にアクセスでき、Geo Profileを使えば推論処理を特定の地理的範囲内に限定できる。データ処理の地理的要件を持つアプリケーションにとって実用的な選択肢が増えた。
コスト管理面では、IAMプリンシパルコスト配分によって推論コストをユーザー・チーム・プロジェクト・コストセンター単位で把握できるようになった。AWS Cost Anomaly DetectionもAmazon Bedrock上のサードパーティ基盤モデルの支出監視に対応し、コスト変動時には原因の内訳も提供する。
AWS Agent Registry——エージェントの「カタログ管理」
AWS Agent Registryは、エージェント・MCPサーバー・スキル・カスタムリソースを一元管理・検索できるカタログ機能だ。組織横断的な検出機能により、接続されたAWSアカウント全体でAgentCore RuntimeやAgentCore Gateway上のリソースを自動識別できる。Amazon Quickにも対応しており、信頼済みのエージェントや機能をワークフロー間で再利用できる。重複開発を減らす観点から、エージェントが増えてきた組織での利用を想定している。
規制対応環境とロボティクスへの拡張
規制産業向けには、Claude Opus 5がAWS GovCloud(US)リージョンでゼロデータリテンション(デフォルト有効)付きで利用可能になった。対応モデルはGovCloudリージョンでも100万トークンコンテキストとプロンプトキャッシングが使える。Amazon Nova Multimodal EmbeddingsはGovCloud(US-West)でテキスト・文書・画像・動画・音声横断の検索を提供する。
ロボティクス分野では、Strands Robotsが登場した。Strands AgentsはAWSが支援するオープンソースのエージェントフレームワークで、Strands Robotsはこれにロボット向けの機能を統合したものだ。LeRobot(Hugging Faceが開発するロボット学習ライブラリ)やHugging Face Storage Bucketsと接続し、デモ録画からデータセットのストリーミング・ポリシーの学習・シミュレーション/実機へのデプロイまでを一つのデータフォーマット・一つのエージェントワークフローで完結させる。Zenoh(ローカルネットワーク向けの低レイテンシ分散通信プロトコル)とAWS IoT Core(地理的に分散したフリート)を組み合わせたメッシュ型のマルチロボット協調にも対応する。
Amazon Bedrockのアクティブ顧客数は現時点で22万5,000社以上、Fortune 100企業の80%以上が利用している。AgentCoreは「任意のフレームワークとモデルでエージェントを構築・接続・最適化」する位置づけで、Strands Agent Harness SDKはオープンソースとして公開されている。
詳細はICYMI: What landed for AI builders in August 2026を参照していただきたい。