9月9日、Anton Shilovが「OpenAI says its next-generation processors could be made at Samsung」と題した記事を公開した。TSMCの生産能力だけでは賄いきれなくなる可能性があるほどの規模でAIアクセラレータを必要とするOpenAIが、Samsung Foundryをセカンドソースとして確保する方向で動いている。
OpenAIがSamsungとの協業を半導体製造に拡大
OpenAI韓国法人のGeneral ManagerであるHarrison Kimが今週、ソウルでの記者会見でこの方針を明かした。Reutersが報じた内容によれば、OpenAIはSamsungとの関係をメモリ供給や法人向けソフトウェアに留まらず、Samsung Foundryでの自社プロセッサ製造にまで広げる可能性がある。
「私たちがSamsungと最も進展を遂げ、最も評価されている分野の一つが、開発中の次世代チップに関する共同生産・研究だ」とHarrison Kimは語った。ただしこの発言はあくまで「可能性」と「研究」の段階を示すものであり、正式な製造委託が確定したわけではない点に注意が必要だ。
TSMCだけでは足りなくなる可能性
OpenAIはすでに独自のAI ASIC(特定用途向け集積回路)プログラムを持っており、Broadcomの設計支援とTSMCのウェハー製造・先端パッケージングを活用している。その第1弾が推論特化のAIアクセラレータ「Jalapeño」で、OpenAIのエンジニアが仕様を定義し、Broadcomと共同設計、TSMCが製造を担う体制でわずか18カ月以内に完成させた。
今回の発言が指す「次世代チップ」は、現在TSMCで量産中のJalapeñoではなく、その後継機である可能性が高い。Jalapeñoの後継機はすでに開発が進んでおり、テープアウト(製造向け設計確定)が近づいているとされる。
なぜTSMCだけでは不十分になり得るのか。TSMCはAMDやNvidiaといった大口顧客によってすでにフル稼働状態にある。OpenAIが次世代ASICをギガワット規模(ここでのGWはデータセンターの消費電力容量を示す業界慣用表現であり、それだけの電力を必要とする巨大なインフラを指す)で調達しようとすれば、TSMCの生産能力だけでは物理的に賄いきれなくなる可能性がある。その場合、Samsung Foundryをセカンドソースとして確保することが現実的な選択肢になる。
Samsung Foundryは近年、3nmプロセス(GAA構造)を量産フェーズに移行しており、歩留まり改善を継続中だ。TSMCと比較して先端プロセスでの実績は依然として劣るとされるが、大量調達を前提にした製造容量の確保という観点では有力な選択肢となり得る。
Broadcom・Samsungの戦略的提携が布石に
この動きを後押しする構造的な布石がある。2025年7月末、SamsungとBroadcomは2030年までに総額2,000億ドル超の戦略的提携を発表しており、AI向け先端ファウンドリ・メモリ・パッケージング技術での協業を盛り込んでいる。
OpenAIはBroadcomとの間に10GW分のカスタムAIアクセラレータ調達契約を結んでいる。SamsungとBroadcomの提携が成立した以上、OpenAIはBroadcomに対してSamsung向けの設計移植費用を支払えば、TSMCとSamsung双方で製造を発注できる体制が整う。
Teslaとの比較:ダブルソーシングの狙い
テスラはすでに自社AIチップ「AI5」をTSMCとSamsung Foundryの双方でテープアウトさせており、ダブルソーシングを実践している。テスラの場合、AI5はデータセンター・車載・Optimusロボットという3つの大量生産カテゴリに跨って使われる予定であり、車載向けだけで数百万個単位の需要が発生し得る。そのため複数ファウンドリから調達することで、供給網の冗長性と絶対的な製造容量を確保する狙いがある。
OpenAIの場合、主な用途はデータセンターに限定されるが、AIアクセラレータはロボットや車載チップと比べてダイサイズが大きく、ウェハー消費量がケタ違いに大きい。加えて、OpenAIが目指す推論インフラの規模は急速に拡大しており、単一ファウンドリへの依存はリスク要因になり得る。したがって、大規模な推論インフラを構築するうえでは、テスラと同様の供給容量問題に直面する可能性があり、ダブルソーシングによる分散調達が合理的な判断となる。
現時点での不明点
Harrison Kimの発言はあくまで「次世代チップに関する共同生産・研究」にとどまっており、以下の点は明らかにされていない。
- Samsung製造の対象がJalapeñoの後継機なのか、別の新チップなのか
- OpenAIとSamsungが共同設計を行うチップなのか
- 製造の一部のみをSamsungに委託するのか
詳細はOpenAI says its next-generation processors could be made at Samsungを参照していただきたい。