9月8日、The Next Webが「Cognizant AI research puts $4.5tn on US job exposure」と題した記事を公開した。Cognizantの調査研究が米国の労働市場において4.5兆ドル分の業務がAIに代替されうると試算した内容を紹介したもので、注目すべきはその4.5兆ドルという数字が「機会」と「脅威」の両方として同一文書に並べて使われていることだ。
同じ数字、二通りの読み方
Cognizantは9月7日、米国の大学卒業生1,500人を今年採用し、AI時代に向けた新たな職種体系を構築すると発表した。同日、自社の調査研究も公開している。その研究が弾き出した数字が4.5兆ドルだ。
この4.5兆ドルという数字は、発表文の中で二度登場する。冒頭では「AIが解放する生産性」として登場し、7段落後には「AIがすでに実行可能な業務の価値」として再び現れる。同じ数字が、機会として一度、代替として一度、同一文書に並ぶ。
どちらの読み方も成立する。人間からAIへ業務が移れば、測定上の生産性は上がる。同時に賃金も移動する。どちらの言葉を選ぶかは、投資家に向けて話しているか、従業員に向けて話しているかによる。
調査の中身
Cognizantは今年1月に調査レポートを更新した。米国労働省の職業データベースO*NETに登録された約1,000の職種、18,000のタスクを評価し、AIが支援または自動化できる割合をスコアリングしたものだ。調査レポート本体はCognizantの公式サイトで公開されている。
結果として93%の職種が何らかの影響を受けるとされた。これは同社が3年前に予測していたより6年早いペースだ。タスクの半数以上が露出する「存在論的変化(existential change)」に直面する職種の割合は、予測の15%から30%へ倍増した。
4.5兆ドルの計算方法はシンプルだ。米労働統計局の職種別人員数に中央値賃金を掛け、AIの露出スコアを適用した。つまり人間が受け取っている賃金の総額のうち、AIへ移行しうる分を積み上げた数字である。
誰が影響を受けるのか
職種別の変化が具体的で、ここが最も読む価値がある部分だ。
以下の数値はCognizantの調査レポートに基づく。3年前と現在の露出スコアを比べると:
| 職種 | 3年前 | 現在 |
|---|---|---|
| 財務マネージャー | 14〜21% | 84% |
| 弁護士 | 9% | 63% |
| 家庭医 | 33% | 59% |
| 教員 | 11% | 49% |
| 輸送検査員 | 6% | 55% |
| 煉瓦職人 | 3% | 20% |
煉瓦職人のスコア上昇は予想外に思えるが、AIが設計図を読み、写真から寸法を測定できるようになったためだと説明されている。
一方、CEOについては興味深い記述がある。理論上の露出スコアは60%超に達するが、レポートはここだけに「取締役会や株主がそれを受け入れるかどうかは別問題」と但し書きを付ける。財務マネージャーの84%や事務管理職の60〜68%には、この種の注釈はない。
Cognizant自身は何をしているか
採用1,500人に加え、同社は「Frontier Certified Engineers and Frontier Business Operators」と呼ぶ新職種体系を15,000人規模に拡大すると発表した。ジョージア大学、アリゾナ州立大学、ケンタッキー大学との連携を採用基盤に据えている。
スキリングプログラム「Synapse」は目標より1年早く年間100万人を突破し、2030年に200万人を目指す。2018年以来の慈善助成金は7,000万ドルに達する。
ただし、確認が必要な点がある。「15,000人規模へ拡大」という表現は、純増なのか既存社員の再分類なのかを明示していない。実数として検証可能なのは1,500人の新卒採用だけだ。
リサーチを売っているのは、ツールも売っている会社だ
Cognizantは同発表の中で、Anthropicのパートナー企業中で最多となる1万5,000以上のClaude認定資格を保有し、OpenAIのCodex認定5,000件、Google CloudとのGemini Enterpriseパートナーシップ拡大も明らかにしている。
具体的な導入事例として、ある大手フードサービス企業のアカウント管理業務を17本のAIエージェントで再構築し、アカウントマネージャー1人あたり週11時間を回収した事例が紹介されている。
4.5兆ドルとは、現場でこのような数字が積み上がった総計だ。露出スコアを測定している会社が、その露出を生み出すツールを販売している会社でもある。それはリサーチの信頼性を否定しないが、なぜこのリサーチが存在するのかの説明にはなる。
市場はすでに動いている
この発表が出た背景として、就労市場の変化も見ておく必要がある。UBSは2027年の新卒採用にAIスキルを要件として追加した。Oracleは今年21,000人を削減し、その申告書には明示的にAIが理由として記載された。Cloudflareは1,100人を削減した後、エンジニアリング部門を45%拡大している。
新卒をプロフェッショナルに育てるエントリーレベルのパイプラインは細くなりつつある。こうした動きの中でCognizantが大学卒業生1,500人を積極採用するという発表は、業界全体の流れと一線を画している。ただし、Cognizantが雇用する1,500人と調査が示す「代替されうる業務の担い手」が同じ層かどうかは、発表文からは読み取れない。
Cognizantは競合の多くより正直に数字を出した。4.5兆ドルと1,500人の間にある差は矛盾ではない。それを測ろうとした数少ない会社が示した、問題の規模そのものだ。
詳細はCognizant AI research puts $4.5tn on US job exposureを参照していただきたい。