9月2日、The Decoderが「Google Deepmind's new chief says frontier AI leadership is the only thing that matters」と題した記事を公開した。この記事では、Google DeepMindの新トップが「フロンティアAIのリーダーシップだけが重要だ」と断言しつつ、現状のモデルが競合に後れを取っていることを認めた発言について詳しく紹介されている。
「フロンティアにいること以外、重要なものは何もない」
Google DeepMindの新たなトップに就任したKoray Kavukcuoglu(コライ・カブクチュオール)は、AIモデルの最前線(フロンティア)を争うことへの姿勢を明確に示した。なお、元記事では肩書きを「new chief」と表記しており、CEOや共同CEOといった具体的な役職については公式には明らかにされていない点に留意が必要だ。
一部では「Googleはモデル性能よりもコストパフォーマンスで勝負しており、最先端モデルの競争には本気でない」という見方が広がっていた。これに対し、Kavukcuogluはインタビューの中で正面から反論した。
「はっきり言う。フロンティアにいること以外、重要なものは何もない。私たちが必ずフロンティアに立つことを、100%確信している。」
一方で、現状については率直に認めた。現在のGoogleのモデルは「フロンティアをわずかに下回っている(a little bit below the frontier)」という表現を使っており、OpenAIやAnthropicなど競合との差を暗に認めた形だ。ただし、この「わずかに下回っている」という評価は特定のベンチマークや評価軸に基づくものではなく、Kavukcuoglu自身の認識として語られたものであり、元記事でも具体的な測定指標は示されていない。チーム・リソース・フルスタック(モデルからインフラまでの一貫した技術基盤)は整っており、ギャップを埋める準備はできていると主張した。
Gemini 4とGemini 3.5 Proの現状
具体的なフロンティアモデルの進捗については、新情報は乏しかった。
Gemini 4については、「これまでで最も野心的なトレーニングラン」であり、「うまくいっている(touch wood)」とコメントするにとどまった。この内容は既報の範囲と変わらない。
Gemini 3.5 Proについては言及すらなかった。同モデルは2025年初頭に存在が報じられて以降、数ヶ月単位で遅延が続いており、現在も開発中とされている。フロンティアモデルの刷新が遅れている状況が続く中、Kavukcuogluの「必ずフロンティアに立つ」という発言は、社内外に向けた立て直しの意思表明として受け取ることもできる。
FlashシリーズとAIエージェント化の方向性
具体的な進展として強調されたのが、Gemini Flashシリーズの急速な進化だ。
Kavukcuogluは、Gemini 3.5→3.6→3.7という連続リリースを「言語モデルからコーディングエージェントへの転換」と位置づけた。
「モデルからエージェントへ、全体をエージェントに変えることだ。ソフトウェアエンジニアリングこそ、システムが成功すべき最も重要なドメインであり環境だ。」
実際、Gemini 3.7 Flashは前世代から50%の値下げを実現しつつコーディング性能を引き上げており、エージェント用途での展開を意識した設計になっている。
フロンティアモデルでの遅れを認めながらも、エッジ寄りの高速・低コストモデルで実績を積み、並行してフロンティアを追うという二段構えの戦略が見える。
総括
Kavukcuogluの発言で最も注目すべき点は、「現状は遅れている」という事実をインタビューの場で認めたことだ。ただし、これは公式声明ではなくインタビュー中の発言であり、受け取り方には留意が必要だ。それでも、Googleほどの企業のAI部門トップがこれを口にするのは珍しく、社内外に対する危機感の表明とも読める。
競争環境という観点では、OpenAIはGPT-4oやo3系モデルで継続的なリリースを重ね、AnthropicはClaude 3.5 Sonnetがコーディング性能で高い評価を得るなど、フロンティア争いは激化している。Gemini 4が「フロンティア奪還」の本命とされるが、リリース時期も具体的な性能指標も現時点では示されていない。Flashシリーズでの実績を足がかりに、Gemini 4でどこまで差を詰められるかが当面の焦点となる。
詳細はGoogle Deepmind's new chief says frontier AI leadership is the only thing that mattersを参照していただきたい。