9月1日、Mozillaが「Reduce clutter and distractions with Ad Blocker for Firefox on iOS」と題した記事を公開した。iOS版Firefoxにビルトインの広告ブロック機能「Ad Blocker」が追加されたことを発表する内容で、長年iOSユーザーが抱えてきた「拡張機能が使えない」という制約に対するMozillaの回答が示されている。
デスクトップ版・Android版のFirefoxにはuBlock Originをはじめとした豊富な拡張機能が揃っており、広告ブロックも自由にカスタマイズできる。しかしiOSではAppleのポリシーによってサードパーティブラウザはSafariと同じレンダリングエンジン(WebKit)の使用を義務付けられており、拡張機能の仕組みが構造的に使えない。EUではDMA(デジタル市場法)の施行を受けて2024年にこの制約が緩和されたが、日本を含む多くの地域ではいまだAppleのルールが適用されたままだ。こうした状況の中でMozillaが選んだのは、広告ブロック機能をFirefox本体に直接組み込むというアプローチである。
WebKit Content BlockerとEasyListによる実装
Ad BlockerはAppleのWebKit Content Blocker技術と、広告ブロック界隈で広く使われているフィルターリスト「**EasyList**」を組み合わせて動作する。WebKit Content Blockerはブラウザエンジンレベルのネイティブなコンテンツフィルタリング機構で、ページが読み込まれる前に広告や追跡スクリプトを処理する。拡張機能を別途インストールする必要はなく、Firefoxアプリ内で完結する。
SafariもAdGuard等のコンテンツブロッカーアプリを通じて同じWebKit Content Blocker技術に対応しているが、それらはApp Storeからの別途インストールが必要だ。Firefoxがこの機能をブラウザ本体に統合したことで、ユーザーの導入コストは大きく下がる。
有効化の手順はシンプルで、「設定 → ブラウジング → Ad Blocker」 からオン・オフを切り替えるだけだ。デフォルトは無効であり、ユーザーが明示的に選択する設計になっている。
ブロックされるもの・されないもの
Ad Blockerが対象とするコンテンツは明確に定義されている。
ブロックされるのは「サードパーティの広告」と「広告関連のトラッカー」だ。一方、閲覧中のサイトが直接配信しているファーストパーティ広告、Google検索などの検索結果広告、FirefoxのスポンサーショートカットといったMozilla自身が提供するコンテンツはブロック対象外となる。
uBlock Originのようなデスクトップ向け拡張機能と比べると制限はあるものの、フィルターリストに基づくサードパーティ広告のブロックという基本的なニーズは満たせる。Ad Blockerは既存のプライバシー保護機能**Enhanced Tracking Protection(ETP)**とも併用でき、ETPがウェブ横断的なトラッカーのブロックを担うのに対し、Ad Blockerは広告コンテンツそのものの非表示を主な役割とする補完的な関係にある。
「実験」としての位置づけとMozillaの姿勢
Mozillaは記事の中で「広告はオープンウェブの資金源であり、パブリッシャーやクリエイターを支えている」と明言しつつ、広告がユーザー体験を妨げることも認めている。Ad Blockerをデフォルト無効のオプションとして提供しているのは、この両者のバランスを取るためだ。
Mozilla Connectのフィードバックスレッドのタイトルには「experiment(実験)」という語が使われており、現時点では試験的な提供という位置づけであることが読み取れる。正式機能化に向けてユーザーからの反応を収集している段階とみられる。
また同日、Mozillaは「ブラウザがプライバシーで競争できるのは、OSがそれを許す場合のみ」と題した政策ブログも公開している。iOSにおけるブラウザ間競争の構造的な制約を問題として提起した内容で、Ad Blockerの技術的な対応と合わせて読むと、Mozillaがこの問題に対してプロダクトと政策の両面から動いていることがわかる。
詳細はReduce clutter and distractions with Ad Blocker for Firefox on iOSを参照していただきたい。