8月29日、CNBCが「Tech backlash reaches fever pitch as AI angst collides with social media fears」と題した記事を公開した。AIデータセンターへの住民反発とソーシャルメディア規制問題が重なり合い、テック業界への不信感がアメリカの中間選挙の争点にまで発展している状況を詳報している。本稿ではその内容を紹介する。
データセンター反対運動:四半期だけで1,300億ドル分が阻止
反発が最も「可視化」されているのが、AIデータセンターをめぐる問題だ。
Data Center Watchの報告によれば、2026年第1四半期だけで約1,300億ドル相当のデータセンタープロジェクトが住民の反対によって中止または延期された。2025年通年で約1,560億ドル相当が阻止されたことを考えると、そのペースは急加速している。
アリゾナ、ミシガン、ペンシルベニアなどでは、地元住民が「数百人単位」で公聴会に押しかけてプロジェクトへの反対を表明しているという。Food and Water WatchのEmily Wurthは、懸念事項として水使用量、電気料金の上昇、排出ガスの増加、騒音汚染、農地の転用などを挙げている。
この動きはテック企業の内部にも波及している。Amazonのエンジニアが6月にシアトル市議会で証言し、同社のデータセンターでの「汚いエネルギー」使用を公開批判した事例は特に注目を集めた。
Stop Data Centers Coalitionなどの団体は、環境・社会・経済への影響を精査する時間を確保するため、新規プロジェクトの全国的なモラトリアム(一時停止)を求めている。
この問題は今年11月の中間選挙でも重要争点になる見通しだ。全米共和党上院選挙委員会(NRSC)は内部メモでデータセンターを「選挙サイクル全体を通じたスリーパーイシュー(潜在的な争点)」と位置づけており、民主・共和両党の候補者が反対を表明している。
AIへの不信感が過半数を超えた
データセンター問題の背景には、AI全般への広範な不信感がある。
Pew Research Centerの最新調査によれば、AIの日常利用拡大に対して「興奮より不安を感じる」と答えたアメリカ人は過半数を超えた。2021年の37%から大幅に上昇している。
若年層の不信感はさらに深刻だ。CNBCがGeneration Labと実施した18〜34歳を対象の調査では、Anthropic CEOのDario Amodeiを「責任ある行動を取ると信頼できない」と答えた回答者が75%以上。OpenAI CEOのSam AltmanとMeta CEOのMark Zuckerbergについても、約70%が同様の回答をした。
AI Now Instituteの共同エグゼクティブディレクター、Sarah Myers Westはこう指摘する。
「これは本質的に信頼の危機だ。一般市民は企業にも政府にもテック業界にも信頼を置いておらず、常に何か新しい搾取の方法を考えているのではないかと疑っている」
Westはさらに「これをPRの問題として扱うのは大きな間違いだ」と強調している。
Metaの170億ドル和解とFlock監視カメラ問題
AIだけでなく、前世代のテクノロジーへの反発も同時進行している。
Metaは今週、州司法長官の超党派連合が起こした訴訟で最大170億ドルの和解に合意した。InstagramやFacebookが子どもや10代の若者に害を与えたとする訴えに対し、10代のユーザーに1日2時間のデフォルト利用制限、授業時間中の通知ミュート、保護者向け機能の強化などを実施することを約束した。カリフォルニア州司法長官のRob Bontaは「これは概念的な上限ではなく、下限だ」とコメントしている。
さらに、AIを活用したナンバープレート読み取りシステムを展開するスタートアップ・Flock Safetyも批判の矢面に立っている。警察がこのシステムを使って女性をストーキングしたり、無実の人物を不当に告発したりした事例が報じられており、今年だけで90以上の都市がFlockとの契約を停止・却下・破棄している(監視システム追跡団体DeFlock調べ)。フロリダ州知事Ron DeSantisは「制御不能な状態だ」と発言し、トランプ大統領も「検討中」としている。
問題の根底にある構造
ミネソタ大学ロースクールのJames Coleman教授は「電気料金の上昇が続いてきた経緯から、電力会社にも規制当局にも信頼がない」と分析する。一方、ケイトー研究所のJennifer Huddlestonは「多くの労働組合が建設ブームや電気技師・HVACの雇用拡大を歓迎しており、反対一色ではない」とも指摘する。
テック業界とその規制をめぐる議論は、エンジニアにとっても対岸の火事ではない。自らが開発・運用に携わるシステムへの社会的評価がIPOの成否や規制の方向性を左右する時代になっている。Anthropicは近く予定されるIPO(新規株式公開)の目論見書に「AIバックラッシュ」をリスク要因として明記する見通しだ。
詳細はTech backlash reaches fever pitch as AI angst collides with social media fearsを参照していただきたい。