8月29日、Chrome Unboxedが「You can now load full Google Play Books into Gemini Notebook with 'Expert Intelligence'」と題した記事を公開した。GoogleがGemini Notebookに「Expert Intelligence」機能を導入し、Google Play Booksで購入した電子書籍を丸ごとAIノートブックのソースとして読み込めるようになった。出版済みの書籍がAIの「参考文献」になるという、これまでのAI研究ツールにはなかった空白を埋める動きだ。
Google Play Booksの全文をAI研究ツールに取り込む
Googleは2026年夏、NotebookLMをGemini Notebookにリブランドした。NotebookLMは2023年にGoogleが公開した、いわゆるRAG(Retrieval-Augmented Generation)型のAI研究ツールだ。RAGとは、AIがあらかじめ与えられた文書(ソース)を参照しながら回答を生成する仕組みで、モデルの学習データだけに頼る通常の生成AIと異なり、根拠のある回答と出典の提示が可能になる。PDFやWebリンクのほかYouTube動画・Google Docsをソースとしてアップロードできる点がユーザーに好評だった一方、「出版済みの書籍」は常に対象外だった。
今回のExpert Intelligenceはその空白を埋める機能だ。ユーザーがGoogle Play Booksで購入済みの対象電子書籍を、そのままGemini Notebookのソースリストに追加できる。AIはウェブの要約ではなく、書籍本文の正確なテキストを参照し、出典付きで回答する。
使い方と「本当の強み」
操作の流れはシンプルだ。対象書籍をソースに追加すると、Gemini Notebookのネイティブ機能が書籍の内容を基に動作する。主な機能は以下のとおりだ:
- Audio Overviews:書籍の内容をAIが音声で要約・対話形式で解説するポッドキャスト風の機能
- インタラクティブな学習クイズ:書籍の内容に基づいた問題を自動生成し、理解度を確認できる
- マインドマップ・インフォグラフィック生成:書籍の構造や概念をビジュアル化する機能。複雑な内容の把握を視覚的にサポートする
記事が強調する「本当の強み」は、書籍と自分のファイルを掛け合わせる使い方だ。元記事では2つの例が挙げられている:
- マネージャーがチームのミーティングメモをKim Scottの『Radical Candor』と組み合わせ、難しいパフォーマンスレビューの準備をする
- 保護者が冷蔵庫の中身を写真に撮ってアップロードし、Michael Pollanの『Food Rules』のルールに基づいた週間ミールプランを作成する
自分のメモや状況を書籍の著者フレームワークと照らし合わせる——この組み合わせが従来のAI検索との最大の差別化点となる。Amazon Kindle向けの類似ツールはまだ存在せず、Google Play Booksのエコシステムに閉じた機能である点は制約だが、逆に言えばGeminiノートブックへの強力な囲い込み要素にもなっている。
著名著者との協力と「Featured Notebooks」
Googleはコンテンツの取り込みを出版社との直接契約で実現しただけでなく、著者との連携にも力を入れている。Steven Pinker、Michael Pollan、Jennifer Wallaceら15名以上のベストセラー著者と協力し、各著作に補足資料やカスタム学習ツールをセットにした「Featured Notebooks」をリリースした。
Featured Notebooksは単なる書籍の読み込みにとどまらない。著者自身が監修した補足コンテンツや学習設計が組み込まれており、いわば著者公認の「インタラクティブ学習パッケージ」として機能する。教育・自己啓発目的での活用を想定しており、書籍を「読む」だけでなく「使い倒す」体験を提供しようとする姿勢が読み取れる。
出版社との提携と権利管理
提携先の出版社にはMacmillan・Penguin Random House・Bloomsbury・O'Reilly Media・De Gruyter Brill・Johns Hopkins University Pressが含まれ、ローンチ時点で10万冊以上をサポートする。
著作権管理の仕組みも整備されている:
- Gemini Notebook内で書籍を利用するには、Google Play Booksでの購入が必須
- 他ユーザーと共同ノートブックを共有した場合、相手は対象書籍を自分で購入するよう促される
- 対応書籍かどうかはGoogle Play Booksの「Tools」メニューに表示されるGemini Notebookバッジで確認できる
- 米国ユーザー向けに、無料で対象書籍1冊を取得できるポータルが用意されている(数量限定)
今後の展開
現時点ではGemini Notebook内での提供だが、GoogleはGeminiアプリおよびSearchのAIモードへの拡張を予定している。対象コンテンツも電子書籍にとどまらず、サードパーティのサブスクリプションサービス、学術教科書、エンタープライズ向けビジネスリサーチレポートへの拡大が計画されている。
Kindleの電子書籍がGeminiノートブックのソースになる日は現時点では来ていないが、GoogleがPlay Booksエコシステムを軸にこの領域で先行した事実は重い。電子書籍を「読む」から「AIと共に使い倒す」へとシフトさせるこの動きが、電子書籍市場全体の競争軸を変えていく可能性がある。
詳細はYou can now load full Google Play Books into Gemini Notebook with 'Expert Intelligence'を参照していただきたい。