8月28日、CNBCが「Marc Benioff is getting his mojo back as Salesforce's AI strength quiets skeptics」と題した記事を公開した。SalesforceのAIエージェント製品「Agentforce」が急成長し、AIによるSaaS駆逐論を退けつつある実態を、決算数字・提携発表・業界人の証言を通じて詳しく伝えている。
株価が1日で23%急騰——2つの記録の整理
8月27日、Salesforceの株価は約23%上昇した。元記事では「2020年以来最大の上げ幅」かつ「2004年のIPO以来2番目の記録」と表現されており、一見矛盾するように映るが、前者は「単日の上昇率としての近年最大」、後者は「IPO以来の全期間を対象にした順位」という別軸の評価だ。元記事もこの2つを並置しており、いずれも株価の歴史的な上昇を示す文脈で使われている。
背景にあるのは、2026年第2四半期の決算発表だ。売上高は前年同期比11%増で市場予想を上回り、次の四半期のガイダンスも同12%増(レンジの中央値)とわずかに予想を超えた。絶対値としては爆発的な成長ではないが、投資家が注目したのはAIエージェント製品の数字だった。
AIエージェント製品「Agentforce」の年間収益換算額が前年比240%増の15億ドル超に達した。Agentforceは、Salesforce CRMのデータを活用して営業フォローや問い合わせ対応などを自律的に実行するAIエージェント基盤だ。※Agentforceが2025年から本格展開されてきた製品であるという背景は、元記事の文脈をもとに編集部が補足している。
Salesforceの株価は年初来でまだ約5%のマイナス圏だが、今回の上昇で年初からの下落分の大半を埋めた。
「SaaSpocalypse」論争に決着はついたか
ここ1年ほど、SaaSソフトウェア業界ではいわゆる「SaaSpocalypse(SaaS終焉論)」が語られてきた。AnthropicやOpenAIが大量のAIモデルとサービスを企業向けに投入し続けており、「企業がCRMをAIで自前構築すれば、Salesforceのような既存SaaSは不要になる」という懸念だ。
実際、Salesforceの株価は2025年に21%下落しており、2026年も低迷が続いていた。
これに対し、SalesforceのCEOマーク・ベニオフは「これは我々にとって最初のSaaSpocalypseではない」と繰り返し反論してきた。今週の決算発表後、CNBC「Mad Money」でジム・クレイマーに対して改めてこう述べている。
"This SaaSpocalypse narrative has been such nonsense. Frontier models depend on CRM. They don't replace it."
Anthropicとの「Claudeforce」提携が示すもの
今回の決算と同時に発表されたのが、AnthropicのClaudeとSalesforceを統合した「Claudeforce」だ。元記事では「Salesforceがブランド名に『force』サフィックスを付けるのは今回が初めて」と紹介されているが、SalesforceはこれまでもSalesforce Platform(旧Force.com)やHeroku Flowなど「force」を冠しない製品も多く展開してきた経緯がある。この表現は元記事の記述に基づくものであり、命名慣習の詳細についてはSalesforce製品ページ等での確認を推奨する。
技術面では、Claudeforceは37の営業スキルを組み込んだプラグインを提供する。メールの作成、CRMレコードの更新、その他の営業アクションをClaudeが自律実行する設計で、SlackとのClaudeネイティブ連携も強化される予定だ(SalesforceはSlackを約278億ドルで買収している)。元記事ではアーキテクチャの詳細には踏み込んでいないが、Salesforce独自のAgentforce技術基盤上でClaudeのモデルを呼び出す形と見られる。
Anthropic CEOのダリオ・アモデイはベニオフとの共同インタビューでこう述べた。
"I think that this is the way all enterprise systems are going to run in the future."
William Blairのアナリスト、Arjun Bhatiaはこの発言を評価し、「AnthropicはSalesforceが必要だと言っている」と指摘。AI不安からクラウドソフトウェア銘柄への投資を減らしていた投資家が戻りつつあると分析している。
フリードバーグが自ら試して気づいた「vibe-codingの限界」
今回の決算発表で特徴的だったのが、バイオテック企業OhaloのCEOでポッドキャスト「All-In」の共同ホストとして知られるデビッド・フリードバーグを決算コールに登場させた点だ。
フリードバーグは週末にAIでCRMツールをvibe-coding(AIに任せた即席コーディング)した経験を率直に語り、こう結論づけた。
"You quickly realize just how much it takes to do maintenance, to do accounts, to do security. We're already on Slack. We're not going to go vibe-code Slack. We're not going to vibe-code CRM."
これは「AIにCRMが作れない」という技術的限界の主張ではなく、「自前で作ることのコスト・運用負荷を実際に試して実感した」という体験談だ。技術的には実装可能でも、セキュリティ・メンテナンス・アカウント管理といった実運用要件を満たすコストを考えれば現実的ではない、というメッセージをユーザー目線で語った形であり、ベニオフはこれを企業顧客に向けたSaaSpocalypse反論の補強として活用した。
OpenAI人材の「出戻り」現象
財務的な好材料に加え、注目を集めているのが人材の動きだ。ベニオフは先週、OpenAIから5か月で戻ってきた幹部2名をXでポスト。The Informationの報道によれば、OpenAIに在籍するSalesforce出身者さらに22名が出戻りを検討中だという。
Salesforceの広報担当は「出戻り人材はわが社の文化の一部」とコメントしたが、OpenAIからの移籍については言及を避けた。
成長率への見方は分かれる
アナリストの間での評価は強弱が分かれる。William BlairのBhatiaは「15%成長も十分ありうる」と強気な見方を示す一方、LSEG集計によるコンセンサス予想では今期11%成長、その後2年間は10%前後に落ち着くと見られている。
また、Salesforceの損益にはAnthropicへの3年前の投資から26億ドルのキャピタルゲインも計上されており、Anthropicが進めているIPOによってこの数字はさらに変動する可能性がある。
詳細はMarc Benioff is getting his mojo back as Salesforce's AI strength quiets skepticsを参照していただきたい。