8月29日、TechStartupsが「Anthropic weighs shareholder stock sales ahead of potential $1.5 trillion IPO」と題した記事を公開した。AIアシスタントClaudeを擁するAnthropicが、1.5兆ドル(約150兆円) という評価額でのIPOに向けた準備を進めており、既存株主による株式売却の仕組みを検討していると伝えている。わずか8ヶ月で売上が10倍超に拡大したとされる同社の財務実態は、目論見書の公開後に初めて詳細が明らかになる見通しだ。
1.5兆ドル評価額の衝撃 — OpenAIをも超えた急上昇
Anthropicの評価額の推移は、AI業界の熱狂を端的に示している。
- 2024年頃:評価額は200億ドル以下
- 2026年2月:3,800億ドルで資金調達
- 2026年5月:6,500億ドルの調達を実施、評価額は9,650億ドルに到達。当時のOpenAIの非公開評価額を上回ったと報じられた
- IPO想定評価額:バンカーが議論する水準は1.5兆ドル。5月評価額から約55%の上昇
売上面でも急拡大が続いており、Anthropicの年換算収益は8ヶ月足らずで約90億ドルから650億ドル超へ成長したと報じられている。ただしThe Financial Timesは、AI企業が用いる「年換算収益(ARR)」は単月の売上を12倍したものであり、従来型SaaSにおける年間契約ベースの指標とは性質が異なると指摘している。使用量ベースの収益は月ごとに変動するため、数字の解釈には注意が必要だ。
Wall Street Journalによれば、AnthropicはIPOで投資家に対して30兆ドルを超える潜在市場を訴求し、最大1,000億ドルの調達を目指す可能性があるという。
OpenAIとAnthropicは現在、生成AI市場における最大のライバル関係にある。AnthropicはOpenAI共同創業者のDario AmodeiとDaniela Amodeiが2021年に設立した企業であり、Googleをはじめとする大手企業から巨額の出資を受けてきた。同社のClaudeは企業向けAPIや消費者向けサービスで急速にシェアを拡大しており、ChatGPTとの競合が激化している。
既存株主への売却機会、その珍しい構造
Anthropicは、IPOにおいて既存株主が保有株を売却できる「セカンダリー売却」コンポーネントの導入を検討している。The Informationが関係者の話として報じた。
通常のIPOでは、新たに発行した株式が市場に出回り、調達資金は会社に入る。セカンダリー売却の場合、資金は既存株主に渡る。AnthropicのIPOでは、この二つを組み合わせる形が議論されている。
比較対象として挙げられているのは以下の事例だ。
- Figma、CoreWeave:IPOで既存株主の売却を許可
- SpaceX、Cerebras:既存株主売却なしで上場
さらにAnthropicは、一部株主に対して通常の180日を超えるロックアップ期間を設ける案も検討している。ロックアップ期間とは、IPO後に株主が株式を売却できない一定の禁止期間のことで、上場直後の大量売却による株価下落を防ぐ目的で設けられる。一般社員については、IPO後の売却を事前に決められた計画(プリセット取引プラン)経由に限定する可能性もある。
この構造の意図は明確だ。IPO時点で長期株主に限定的な流動性を与えつつ、上場後に大量の株が市場に出回るのを抑制する。上場半年後に一斉売却が起きて株価が崩れるシナリオを避けるための設計といえる。
IPOのタイムライン
Anthropicはすでに米国でIPOを機密ベースで申請済みだ。Labor Day(9月1日)直後に目論見書を公開し、早ければ9月末から10月初旬に上場する見通しとされている。ただしスケジュールは変動する可能性がある。
目論見書が公開されれば、AIへの大規模投資が続く中でほとんど外部から見えなかった同社の収益構造が、初めて詳細に開示されることになる。1.5兆ドルという評価額に見合う数字かどうか、上場初日から市場の厳しい目にさらされる。
詳細はAnthropic weighs shareholder stock sales ahead of potential $1.5 trillion IPOを参照していただきたい。