8月29日、Ars Technicaが「Trump blacklisting of "woke" Anthropic deemed illegal by federal judge」と題した記事を公開した。カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のRita Lin判事が、トランプ政権によるAnthropicへのブラックリスト指定を憲法違反と判断し、関連する政府指令を無効とした判決を詳しく伝えている。
「国家安全保障上のリスク」指定は違法な報復だった
Lin判事の判決によれば、トランプ政権によるAnthropicへのブラックリスト指定は違法な報復行為に当たる。AnthropicはClaudeシリーズのAIモデルを開発する企業だ。
事の発端は、Anthropicが自社製品の利用に関して「致死的自律型兵器への活用」と「アメリカ市民の大規模監視」を禁じる制限条項を設けていたことにある。政府側がこれらの制限の撤廃を求めたが、Anthropicがこれを拒否した結果、政権がAnthropicをサプライチェーン上の国家安全保障リスクとして指定した、と判決文は述べている。
Lin判事の判断は明快だ。
「争いのない記録は、当該措置が修正第1条(言論の自由)に違反する違法な報復に当たることを示している」
さらに判決文は、トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官が「すべての連邦機関に対してAnthropicの製品の使用を恒久的に停止するよう命じ、軍事と無関係の取引であっても、すべての防衛請負業者がAnthropicとビジネスを行うことを禁じた」と指摘している。Lin判事はこれらの政府措置を無効とし、トランプ政権に対して違法と判断した指令の撤回を命じた。
「国家安全保障」は批判者を罰する白紙委任状ではない
政府側が裁判所に示した正当化の根拠は「薄い(slim)」ものだったと判決文は評している。政府側の当初の主張は、「Anthropicが自社技術を国家安全保障システムに展開した後もバックドアアクセスを持つ」というリスク評価に依拠していた。しかし審理を通じて、Anthropicには展開後の自社システムへのバックドアアクセスが存在しないことが明確になり、政府自身もそれを認めた。
Lin判事は、政府が推進する省庁名称「Department of War(戦争省)」に言及しつつ判決を下した。これはトランプ政権が国防総省(Department of Defense)を好んで呼ぶ際の表現であり、政権の軍事重視姿勢を象徴するものとして広く知られている。判事の結論は以下の通りだ。
「戦争省がAIベンダーを自由に選定できることは明白だが、証拠はAnthropicに課された広範な措置が違法かつ根拠のないものであることを示している。国家安全保障への空虚な言及は、政府批判者を罰し報復するための白紙委任状ではない」
AI企業と政府の関係における法的転換点
今回の判決は、トランプ政権下でのAI政策と企業の関係において重要な意味を持つ。政府がAI企業に対して特定の使用制限の撤廃を求め、拒否した企業を国家安全保障上の名目でブラックリストに載せるという手法が、修正第1条が保護する言論の自由の侵害に当たると司法が判断したことになる。
Anthropicのサービス利用制限——とりわけ致死的自律型兵器や大規模監視への活用禁止——は、いわゆる「使用ポリシー(Acceptable Use Policy)」の一環だ。こうした制限はOpenAIやGoogle DeepMindなど他の大手AI企業も設けており、今回の判決はそれら企業に対する政府の圧力にも一定の歯止めをかける先例となり得る。
判決の先にある問題
判決は出たが、この問題がこれで決着するとは限らない。政府側には上訴の選択肢が残されており、連邦控訴裁判所での争いに発展する可能性がある。また、Lin判事が撤回を命じた政府指令が実際にどのような手続きで取り下げられるか、あるいは政権が事実上の抵抗を続けるかどうかも注目点だ。今回の判決は第一審段階のものであり、司法判断としての最終的な確定には至っていない点には留意が必要である。さらに、ブラックリスト指定の期間中にAnthropicが被った事業上の損害——連邦調達からの排除や防衛請負業者との取引停止——がどのように回復されるかも、続報として追うべき論点として残っている。
詳細はTrump blacklisting of "woke" Anthropic deemed illegal by federal judgeを参照していただきたい。