8月28日、Futurum Researchが「Salesforce Q2 FY 2027: Can Agentforce Drive Revenue Reacceleration?」と題した記事を公開した。SalesforceのQ2 FY2027決算におけるAgentforceの収益貢献と、AIエージェントが実際の売上加速につながるかどうかを分析した内容だ。なお、Futurum Researchは企業向けテクノロジー市場を専門とする独立系調査・アナリスト機関で、大手ベンダーの決算分析を定期的に行っている。
Agentforce ARRが$40億に迫る——AIが「席数課金」を超えた瞬間
Salesforceが発表したFY2027第2四半期(2026年8月期)決算で、最も注目すべき数字はAgentforceとData 360を合わせたAI・データ部門のARR(年間経常収益)が$40億に迫る水準に達したことだ。なお、この$40億はAgentforce単体ではなくData 360との合算値であり、Agentforce単体では今期中に$15億の収益を見込む。
決算全体の数字はこうだ。
- 売上高:$113.5億(前年比+11%、市場予想$113.2億を上回る)
- サブスクリプション・サポート収益:$108.2億(前年比+12%)
- 調整後営業利益率:34.1%(前年34.3%、市場予想33.6%を上回る)
- 調整後EPS:$5.90(前年$2.91)——ただし$2.53/株は戦略投資利益の押し上げ分
EPSの読み方について補足しておきたい。今期の調整後EPSは$5.90だが、このうち$2.53/株は戦略投資の売却益などによる一時的な押し上げ分だ。これを除いた実態ベースのEPSは**$3.37相当**となり、前年$2.91からの増益幅は縮まる。決算の構造的な改善を見るうえでは、この点を割り引いて読む必要がある。
CEOのMarc Benioffは「AIとデータ製品への需要は著しく、ARRはまもなく$40億を超える」と述べた。CFOのRobin Washingtonは「NNAOV(Net New Annualized Order Value:純新規年間予約受注額)の成長は4年ぶりの高水準で、下半期のオーガニック収益加速軌道を維持している」とした。NNAOVは新規契約と既存顧客の拡張契約を合算した年間換算受注額であり、将来収益の先行指標として決算分析で広く参照される指標だ。
「席数」から「実行タスク数」へ——AIの収益測定が変わる
Salesforceが今期から導入したAgentic Work Units(AWU)という指標が、エンジニアとビジネス両方の視点で重要だ。AWUとは、AIエージェントが本番環境で実行した個別タスク——顧客ケースの解決、レコードの更新、ワークフローのトリガーなど——の数を指す。
従来のSaaS課金モデルが「ライセンス数×単価」だったのに対し、Salesforceは「完了した仕事の量」に収益を連動させる方向へシフトしている。これはAIエージェント時代の収益構造として業界が模索する課題でもあり、Salesforceがその答えを出そうとしている試みだ。
さらに、Q2からはAgentforce ARRの計算範囲にSlackbotとHeadless 360が追加された。Headless 360はCRMの画面外——Webサイトやモバイルアプリなど外部チャネル——でData Cloudのデータを活用するための製品を指す。メトリクスの定義を広げることで成長を演出しているという見方もできるが、逆に言えばそれだけAgentforceのユースケースがSlackなど既存プロダクトや外部チャネルと深く統合されてきているともとれる。
AnthropicとのClaudeforce統合——AI-nativeスタートアップへの対抗策
Anthropicとの提携拡大と「Claudeforce」のローンチも今期の大きなトピックだ。Claudeforceは、SalesforceのデータとワークフローをClaudeのAIアプリ内から直接アクセス可能にする統合で、営業担当者がClaudeを使いながら顧客情報や商談情報を参照できるようになる。
この設計が重要な理由は、AIネイティブのスタートアップがCRMなどの基幹システムを迂回してユーザーとの接点を奪うリスクへの直接的な対応だからだ。Salesforceのデータをユーザーが普段使うAIツール側に置くことで、Salesforceがワークフローの中心に残り続ける構造を作る。Claudeを使いながらSalesforceデータが消費されれば、両社の収益が同時に積み上がる仕組みでもある。
Flex Creditの「タンク補充」行動が示すもの
価格モデルの柔軟化も今期の柱だ。現在、Agentforceの購入方式は以下の5通りから選べる。
- ユーザー数単位
- エージェント数単位
- 消費量(Flex Credits)単位
- 基本使用量単位
- 成果(アウトカム)単位
中でもFlex Creditsの再チャージ(タンク補充)行動がAgentforce全体の予約の50%を占めるという数字は、本番稼働後の継続利用を示す早期シグナルとして見逃せない。消費したら補充するという行動は、AIツールが実際に業務で使われている証拠であり、初期契約後の追加購買サイクルを短縮する効果も期待できる。また今期のAI関連予約成長は3桁成長(100%超)を記録した。
ガイダンス:下半期の収益加速を本格的に問われる局面へ
Q3 FY2027の売上高ガイダンスは**$114.2億〜$115.0億(市場予想下限$114.2億と一致)、調整後EPSは$3.42〜$3.44(市場予想$3.39を上回る)。通期ではFY2027売上高を$461億〜$464億**に引き上げた(前回$459億〜$462億)。通期調整後EPSは$16.67〜$16.71、営業利益率は34.3%を維持する見通し。
Futurum Researchの分析では、Salesforceが現在抱える戦略的な問いは「AIを既存顧客に付加できるか」ではなく、「消費量の増加、ワークフローへの深い組み込み、パートナーモデル経由のアクセスが、持続的な収益拡大を生み出せるか」に移っている。Flex Creditsの再チャージ行動、Claudeforceによるデータ消費増、Data 360の採用拡大——これらがオーガニック成長の証拠として積み上がるかどうかが、下半期の評価軸になる。
詳細はSalesforce Q2 FY 2027: Can Agentforce Drive Revenue Reacceleration?を参照していただきたい。