8月28日、The Decoderが「OpenAI rallies 100+ companies to sign open letter warning AI-powered cyberattacks on critical infrastructure are imminent」と題した記事を公開した。OpenAIが主導し100社超が署名した公開書簡が、AIを悪用したサイバー攻撃による重要インフラへの脅威が「差し迫っている(imminent)」と警告している——その訴えと時を同じくして、NSA・CISA・FBIの3機関も攻撃者がすでにAIを使って産業用制御システムを狙ったエクスプロイトを生成しているという実態を報告しており、業界と政府の警鐘が重なる異例の状況が生まれている。
OpenAI主導、100社超が署名した共同書簡の概要
OpenAIはグローバルなサイバー防衛に関する公開書簡を発表し、Microsoft、Google、AWS、Anthropic、Cisco、CrowdStrike、Deutsche Telekom、SAP、Mastercardなど100社を超える企業が署名した。
書簡はOpenAIの公式サイトで公開されており、「AIを活用したサイバー攻撃は今後急速に広まり、手口も高度化する」と明記している。特に病院・水道などの重要インフラが最もリスクにさらされているとしている。
重要インフラへのサイバー攻撃は過去にも深刻な被害をもたらしてきた。2021年に米国最大級のパイプライン運営会社Colonial Pipelineがランサムウェア攻撃を受け、米東海岸の燃料供給が数日間停止した事例は記憶に新しい。書簡はこうした攻撃がAIによってさらに高度化・自動化されるリスクを正面から訴えている。
「防御側にまだ優位性がある今のうちに」
書簡の核心にあるのは、AIが攻撃者だけでなく防御者にも武器になるという主張だ。署名企業は「現在のAI技術の進歩は、長年積み重なってきた脆弱性を修正する新たな手段を防御者に与えている」と述べ、防御側がまだ優位性を持つ今のうちにAIツールを積極的に活用すべきと訴えている。
具体的な提言は3方面に向けられている。
- 企業に対して:サイバーセキュリティをCスイート(CEOやCISOなど経営幹部レベル)の最優先課題とすること
- 政府に対して:資金拠出と省庁間の連携強化
- AI企業に対して:資金不足に悩む組織向けに手頃な価格のセキュリティツールを提供すること
また、パッチ未適用のソフトウェアや脆弱な認証といった長年放置されてきた脆弱性についても、早急な対処が必要だと強調している。
NSA・CISA・FBIの警告とも一致
この書簡の主張を裏付けるように、8月中旬にはNSA(米国家安全保障局)、CISA(サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)、FBIの3機関が共同警告を発表している。その内容は、攻撃者がすでにAIを使ってシーメンスS7などの産業用制御システム(ICS)を標的にしたエクスプロイトスクリプトを生成しており、米国のエネルギー・水道・化学・製造分野を狙った攻撃に用いられているというものだ。
シーメンスS7はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と呼ばれる産業機器の一種で、発電所や浄水場などの物理的な設備を制御するために広く使われている。こうした装置へのサイバー攻撃は、デジタルの世界だけでなく物理インフラの停止・破壊に直結するため、ソフトウェア系のセキュリティ侵害とは次元が異なるリスクを持つ。なお、ICSやOT(運用技術)環境のセキュリティについては、CISAがICS-CERTアドバイザリとして継続的に情報を公開しており、実務者にとって参照価値が高い。
3機関の共同警告の段階では「差し迫っている」という表現が使われており、実際に大規模被害をもたらした攻撃の公式確認には至っていない点は留意が必要だ。ただし、AIを用いたエクスプロイト生成が実際に観測されているという報告は、これまでの「将来的なリスク」という議論を一歩踏み込んだものといえる。
業界を横断した「連帯署名」の意味
これだけ多様な企業が一堂に会してセキュリティに関する共同書簡に署名するのは異例だ。競合関係にあるOpenAIとAnthropicが同じ書簡に名を連ねているほか、通信・金融・クラウドといった業種をまたいで署名が集まっている。
業界主導の警告と政府機関の実態報告が同時期に出たことで、AIを悪用したインフラ攻撃への危機感が一段と高まっている。書簡そのものは提言にとどまり法的拘束力を持つものではないが、これほどの規模で業界横断の合意形成が図られた事実自体が、問題の深刻さを示している。
詳細はOpenAI rallies 100+ companies to sign open letter warning AI-powered cyberattacks on critical infrastructure are imminentを参照していただきたい。