8月26日、Iain Martinが「AI Assistant Instinct Hits $2.5 Billion Valuation In Weeks Amid VC Feeding Frenzy」と題した記事を公開した。プロダクトは一般公開されておらず収益モデルも未定のAIエージェントスタートアップ「Instinct」が、シード調達からわずか数週間で評価額を5倍以上に膨らませ25億ドル超に達したという、異常とも言える熱狂の実態が報告されている。
数週間でシード評価額から25億ドルへ急騰
サンフランシスコ拠点のスタートアップ「Instinct」の評価額推移は、近年のAIブームの中でも際立つ速度だ。
- シード段階:5000万ドル(Convictionがリード)
- 8月上旬のシリーズA:5億ドル超(Kleiner PerkinsのMamoon Hamidがリードし、7500万ドルを調達)
- 数週間後の新ラウンド交渉中:25億ドル超(BenchmarkとIndex Venturesが2億ドル以上でリードに向け交渉中)
Instinctを運営する会社は「Spear Street Technology」。カリフォルニア州の法人登録によれば、今年4月に元SierraリサーチャーのNoah Shinnが設立した。プロダクトはまだ一般公開されておらず、VC関係者からの招待がなければダウンロードもできない。
何ができるアプリか
Instinctの公式サイトには、こう書かれている。
"It's trained to use a phone and a computer. You can text or call it. It uses its devices in the same way that humans do."
WhatsApp、iMessage、メールアカウントをワンクリックで接続できるコンシューマー向けAIエージェントだ。メッセージの読み取り・返信にとどまらず、レストランの予約やフライトの手配といったタスクも実行する。
投資家のSheel Mohnot氏はXに「これは普通の人向けのOpenClawだ」と投稿した。OpenClawとは今年1月にバイラルになったオープンソースのコンピューター操作エージェントで、PCやアカウントの完全制御を前提に「生活全般を自動化する」と謳ったが、セットアップの複雑さと費用面からエンジニア以外には普及しなかった(開発者はOpenAIに採用されている)。Instinctはその「コンシューマー向け製品版」と位置づけられる。
※なお、元記事にOpenClawへの直接リンクは掲載されていない。
Midas ListメンバーのSarah Guo(Conviction)は自身のX投稿でこう述べた。
"Having an AI product you trust to execute transactions on your behalf and navigate websites is amazing. It gets it right, from Michelin restaurants to marathon entries, to camping ressies to general purchases."
プライバシー問題とユーザートラブル
熱狂の一方で、懸念も表面化している。
TechCrunchの報道によれば、Instinctの利用規約にはユーザーデータの「永続的かつ取り消し不能な」保存権限が含まれており、AIモデルの学習に使われる可能性がある。AIファウンダーのClaire Vo氏は、GmailとのEmail連携を解除した後もInstinctが財務情報を含むメールのコピーを内部に保持し続けていたと報告している。
"the email connector was off BUT the agent has been keeping copies of emails in my inbox in its own records!"
また、Patron FundのJason Yeh氏はXでこう書いた。
"Honestly kind of insane how anyone would give them keys to their accounts at large, and they better cover the $200 cancellation fee here"
Yeh氏はInstinctに夕食の空席を探すよう指示したところ、エージェントが独断でキャンセル料200ドルのテーブルを予約してしまったと報告している。
ビジネスモデルはまだ未定
現時点でInstinctは無料で提供されている。今後の収益化の方向性としては、ユーザーの「チーフ・オブ・スタッフ」として機能するサブスクリプションモデルか、メール・テキスト・財務記録へのアクセスを活用した広告モデルの2案が挙げられているが、正式な発表はない。
記事公開後、創業者のShinnはコメントを発表した。
"The fundraising is a reflection of early user excitement around the potential of proactive, always-on, extremely capable assistant that really feels like it has access to all your context and is always trying to help."
プロダクト非公開・収益モデル未確定の段階で25億ドルの評価額がついた背景には、AIエージェント領域への過熱したVC投資が透けて見える。2026年のVC市場では、実用段階に達していないAIエージェント系スタートアップへの大型投資が相次いでおり、Instinctはその象徴的な事例と言える。プライバシー設計やユーザーの意図しない自律行動といった課題が早くも露見している中で、評価額だけが先行している構図は今後の焦点になりそうだ。
詳細はAI Assistant Instinct Hits $2.5 Billion Valuation In Weeks Amid VC Feeding Frenzyを参照していただきたい。