8月26日、Maximilian Schreinerが「Anthropic sees a market opportunity of more than $30 trillion ahead of its IPO」と題した記事を公開した。S&P 1500に含まれる191社のテック企業の昨年の合算売上高は約2.4兆ドルだ。Anthropicが投資家向けに提示しようとしている市場規模(TAM)は、その12倍超にあたる30兆ドルである。この数字が何を意味し、何を意味しないのかを理解することが、今回のIPO報道を読み解く核心になる。
30兆ドルという数字の根拠と疑問
Anthropicは、IPO(株式公開)に向けた投資家向け説明において、総対応可能市場(TAM)を30兆ドル超と位置づける見通しだ。Wall Street Journalが報じた。TAM(Total Addressable Market)とは、ある企業が市場シェア100%を獲得した場合に理論上得られる年間売上高を示す指標で、事業の成長余地を投資家に示すために使われる。
AnthropicはこのTAMを、AIモデルが代替可能なすべての労働・業務の価値から算出している。
この数字を文脈に置くと、いくつかの論点が浮かぶ。SpaceXは今年5月に28.5兆ドルを「人類史上最大の実行可能TAM」と称したが、AnthropicはそれをさらにAIという軸で上回る主張をしていることになる。
一方、FactSetのデータによれば、S&P 1500に含まれる191社のテック企業の昨年の合算売上高は約2.4兆ドルに過ぎない。Anthropicが示す理論値がいかに現実の市場規模から乖離しているかを示す比較だ。なお「全世界のテック大手」と表現したくなる数字だが、あくまでS&P 1500構成銘柄内の191社という限定的なサンプルである点は留意が必要だ。
Anthropicの現在地と調達目標
誇大に見えるTAMの一方で、Anthropicの足元の成長は実数でも急速だ。
- Q2売上高:約11.6億ドル(前四半期比2倍。元記事公開時点での報道値。桁の解釈には注意が必要であり、原文の数字を確認されたい)
- 2028年の売上予測:1,900億〜2,000億ドル
- 目標バリュエーション:約2兆ドル
- IPOでの調達希望額:最大1,000億ドル
- IPO時期:元記事公開時点(2025年8月)では2025年9月〜10月を検討中と報じられていた
なお、AnthropicのQ2売上高についてはThe Decoderが別途「Anthropic passes OpenAI on revenue for the first time」と報じており、初めてOpenAIを売上で上回ったとされている。
IPOに向けた現実的な課題
The Decoderの別報道によれば、AnthropicのIPO計画は投資家の懐疑的な見方や中国競合・政治的逆風にも直面している。30兆ドルというTAMは、そうした懐疑論に対して「市場の天井はこれほど高い」と示すための数字とも読める。
ただし、TAMはあくまで理論上の上限値であり、実際の獲得可能市場(SAM: Serviceable Addressable Market)とは別物だ。投資家がこの数字をどう評価するかは、Anthropicの2028年予測の達成確度と並んで、IPO成否を左右する論点になる。
詳細はAnthropic sees a market opportunity of more than $30 trillion ahead of its IPOを参照していただきたい。