8月26日、Inside AI newsが「Mark Zuckerberg Had a Bold Plan to Replace Meta Staff with AI. Here's How It Imploded.」と題した記事を公開した。MetaがAIで従業員を置き換えようとした「Project OT」が、現場の反乱とAI技術の想定外の低パフォーマンスによって崩壊するまでを詳報した内容だ。2026年1月に構想が始動し、5月には早くも第1波が中止に追い込まれるという急転直下の展開は、AIによる組織変革がいかに困難かを示す事例として注目に値する。
チーム60%削減を狙った「Project OT」の全貌
2026年1月、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)はハワイの自邸で幹部合宿を開き、「Organization Transformation(組織変革)」、コードネーム Project OT を立案した。
構想の核心は「AIネイティブ」な組織への転換だ。AIが日常業務の大半を担い、少数精鋭の人間スタッフが自律型AIエージェントを監督するという体制を目指した。内部計画文書によれば、多くのチームを最大60%削減する案が検討されており、実施は2段階——5月の第1波と11月の第2波——に分けられる予定だった。
しかし、5月19日の夜、第1波の直前にザッカーバーグは手を引いた。翌20日に**全従業員の10%**を解雇したものの、これは当初計画より大幅に縮小された形での実施だった。そして11月の第2波は中止が決定された。現場の反乱とAI技術の想定外の低パフォーマンスが、計画を骨抜きにした。
何が起きていたか——現場の実態
AI活用で起きた「コード爆増」問題
Project OTの背景には、AIエージェントへの過大な期待があった。エンジニアたちはAIコーディングツールを積極的に使い始め、社内ソフトウェアへのコード変更件数は前年比220%増に達した。
だが、実際にユーザーへ届く新機能や改善は36%増にとどまった。つまり、コードは爆発的に増えたが、意味のある成果はほとんど伴っていなかった。
さらに深刻なのはインフラへの影響だ。制御されていないAIエージェントが「人間なら実行しないような大規模かつ破壊的な操作」を行い、重大な技術・セキュリティインシデントが前年比40%増、その対応に費やした時間は70%増に跳ね上がった。インフラチームは2026年3月時点で「信頼性の警告サイン」を上げていた——計画始動からわずか2ヶ月後のことだ。
従業員の反乱
並行して、従業員の士気は急落した。社内コミュニケーションツール「Workplace」には怒りの投稿が溢れ、幹部の投稿には「elephant in the room(部屋の中の象=誰もが気づいているのに触れたがらない問題の比喩)」を示す象の絵文字が大量に貼られた。
一部の従業員は、AIモデルの学習データを生成するコーディングパズルに再配置された。「自分たちがAIに仕事を奪われるための訓練データを作らされている」という受け止めが広がり、労働組合活動も勢いづいた。
社内エンゲージメント調査(Pulse survey)では、肯定的評価が**74%から55%**へと急落した。
「AI native」組織モデルの設計思想
Project OTの組織モデルも野心的だった。エンジニアとデザイナー2〜3人で構成する「スモールテックポッド」(small tech pod=小規模の自律的な開発チーム単位)を編成し、固定の6ヶ月計画サイクルを廃止。スプリント(sprint=短期間で区切られた反復開発サイクル)と呼ばれる4週間単位で素早くプロトタイプを量産する体制を目指した。2026年6月時点で少なくとも11ユニットがこのモデルを導入した。
人事評価や昇進の判断は、「Org Lead」(Organizational Lead=組織全体を束ねる高位ユニット長)と呼ばれる役職者がAIシステムのサポートを受けながら行う「ビレッジアプローチ」(village approach=小規模チームを村落のように束ね、Org Leadが複数チームを横断的に管理する体制)が採用された。ただしMetaは「評価・昇進の最終決定は人間が行った」と強調している。
撤退後の収拾と今後
2026年7月の社内タウンホールでザッカーバーグ自身が「AIエージェント技術の進展が想定より遅れた」と認め、今後3〜6ヶ月で改善が見込めると述べた。計画始動からわずか半年での公式な方針修正だった。
その後、Meta社は広報的な立て直しを図り、「人を中心に据える企業」を謳うビデオ広告を展開。CFOのスーザン・リー(Susan Li)が福利厚生の充実を担当し、スナックの品質改善や交際費の増額といった措置も取られた。
ただし、ザッカーバーグは「今年の全社レベルの追加解雇は予定していない」と述べるにとどまり、チーム単位の削減や業績不振者の排除は続く可能性があると従業員の間で見られている。
Metaは2026年、AIチップや関連インフラに最低1,300億ドルを投資する計画で、アナリストはこれが2026年の営業キャッシュをほぼ使い切ると試算している。
※編集部の考察:Project OTは「AIエージェントが実用水準に達する前に組織変革を先行させた」ことの代償を如実に示した事例だ。1月の構想立案から5月の事実上の撤退まで4ヶ月という短期間での頓挫は、技術の成熟と組織変革のタイミングのずれがいかに深刻なリスクを生むかを示している。
詳細はMark Zuckerberg Had a Bold Plan to Replace Meta Staff with AI. Here's How It Imploded.を参照していただきたい。