8月26日、Matthias Bastianが「IBM drops open-weight Granite 4.2 family with built-in agentic capabilities under Apache 2.0」と題した記事を公開した。IBMがオープンウェイトモデル「Granite 4.2」ファミリーをApache 2.0ライセンスで公開した。最大の特徴は、実際のサンドボックス環境でツール呼び出しやWeb検索を繰り返す「Agentic RL」と呼ぶ強化学習手法であり、単なる模倣学習を超えた実用的なエージェント性能を実現している。また同時公開の音声モデルは、前リーダーの2倍の速度という驚異的な数値を主張しており、エンタープライズ向けAI基盤を強化するIBMの姿勢が鮮明に打ち出されている。
なぜ今、IBMはエージェント特化モデルを出すのか
IBMはここ数年、企業向けAIプラットフォーム「watsonx」を中心にオープンウェイトモデル戦略を推進してきた。Granite 3.x系では主に汎用的な言語能力と安全性・説明可能性の確保に注力していたが、Granite 4.2ではエージェント機能を中核に据えた設計へと軸足を移している。
背景にあるのは、企業が生成AIをチャットボット的な用途から「自律的に複数ステップのタスクを実行するエージェント」として活用し始めているという市場の変化だ。OpenAIのGPT-4o miniやGoogleのGemma 3など小〜中規模のオープンモデルが乱立する中、IBMはエンタープライズ顧客が求める「ツール統合・長文コンテキスト・商用フレンドリーなライセンス」の三点セットを打ち出すことで差別化を図っている。Apache 2.0での公開は、LlamaのカスタムライセンスやGemmaの利用規約制限を気にする法務・調達部門への直接的なアピールでもある。
エージェント向けRLで実世界ツール使用を習得
Granite 4.2の核心は、IBMが「Agentic RL」と呼ぶ訓練手法にある。8Bおよび30Bのモデルは、実際のサンドボックス環境でツール呼び出し、コードの記述と実行、Web検索を行いながら学習している。単なる模倣学習(SFT)ではなく、実際の行動結果からフィードバックを得る強化学習によって、エージェントとしての実用性を高めている点が特徴だ。この手法はOpenAIがo系モデルで採用したプロセス報酬モデル(PRM)の考え方に通じる部分があるが、IBMはツール使用という「外部環境との相互作用」に特化して適用している。
すべてのモデルはOpenAI互換のtool callingフォーマットをサポートしており、vLLMやSGLangでの推論実行にも対応している。既存のエコシステムとの統合を意識した設計と言える。
モデルの基本スペック
Granite 4.2は3B・8B・30Bの3サイズで構成される。共通スペックは以下のとおりだ。
- 学習トークン数: 約15兆トークン(スクラッチから訓練)
- コンテキストウィンドウ: 最大512,000トークン
- 思考モード切替: 「thinking」と「non-thinking」を切り替えることでタスクごとの計算量を制御可能
- low-effortモード: 単純なクエリでリソースを節約する省エネモード

エージェントタスクとツール使用に関するベンチマーク結果。30Bモデルが全3テストでトップ。| 画像: IBM
ベンチマークでは30Bが全項目でリードしており、Agentic RLを経ていない3Bとの差が明確に出ている。コンテキスト長の512Kトークンは、長大なコードベースや複数ドキュメントを参照するエージェントタスクを想定した設計であり、GPT-4o miniの128K、Gemma 3の128Kを大きく上回る。
音声モデル「Granite Speech 5.0 Turbo CTC」も同時公開
言語モデルと並んで、音声認識モデルGranite Speech 5.0 Turbo CTCも公開された。パラメータ数は4億7,000万(470M)とコンパクトながら、Open ASR Leaderboardにおける前リーダーの2倍の速度を達成したとIBMは主張している。「3時間分の音声を1秒で書き起こす」という数値はインパクトがある。CTC(Connectionist Temporal Classification)アーキテクチャを採用することでデコード処理を簡略化し、速度を稼いでいるとみられる。デモはHugging Faceのスペースで試せる。
入手先とライセンス
全モデルはApache 2.0ライセンスで公開されており、商用利用を含む幅広い用途で制限なく使用できる。
Apache 2.0での公開は、企業がモデルを社内サービスに組み込む際の法的障壁を下げる点で重要だ。MetaのLlamaがカスタムのMeta Llama Licenseを採用し、MistralがApache 2.0と独自ライセンスを混在させているのに対し、Graniteは全モデルをApache 2.0で統一しており、エンタープライズ調達の観点では判断がしやすい。
詳細はIBM drops open-weight Granite 4.2 family with built-in agentic capabilities under Apache 2.0を参照していただきたい。