8月26日、Futurismが「90 Percent of Execs Say Oops, AI Didn't Help Productivity, So Layoffs Will Continue」と題した記事を公開した。この記事では、経営幹部の9割超がAIによる生産性向上を実感できていないにもかかわらず、レイオフを続けているという調査結果と、その構造的矛盾を詳しく論じている。
幹部の90%超「AIは生産性に影響なし」
全米経済研究所(NBER)が実施した調査によると、回答した経営幹部の90%超が「過去3年間、AIは自社の雇用に影響を与えなかった」と認めた。さらに89%が「労働生産性への影響もなかった」と回答している。
なお、この調査の被調査者属性・サンプル数・調査時期の詳細は元記事内で明示されておらず、数値の解釈には留意が必要だ。一次資料の確認にはNBERの公式サイトを参照されたい。
AIは「生産性を劇的に高め、コスト削減と収益向上を両立できる」と売り込まれてきた。各社が莫大な資金をAI導入に注ぎ込んでいる一方で、この調査結果はその前提を真正面から否定するものだ。
「AIのせいでリストラ」が逆効果になるメカニズム
ピッツバーグ大学ビジネススクールのMark Ma教授は、The Conversationへの寄稿でこの状況を鋭く指摘している。各社はAIへの投資を続けながら、同時にレイオフも進めており、その正当化にAIを使っているケースが増えている。
Ma教授はこの戦略を「戦略的誤算(原文:"strategic miscalculation")」と表現している(以下の引用はMa教授の原文に基づく)。
「AIを活用した解雇と、それによる雇用不安は、AIが労働者の効率を高めるために必要な条件を積極的に破壊している。こうした人員削減は、従業員のAIに対する感情を損なう——そしてそれは、AIを活用した際の企業生産性の最も強力な予測因子の一つだ。」
— Mark Ma教授(The Conversationより)
Glassdoorのレビューを分析した研究でも、従業員のAIに対する感情と企業の生産性には強い相関関係があることが示されている。つまり、「AI導入のためにリストラする」という判断が、AI活用で得られるはずの効率化の恩恵を相殺してしまう。
株式市場も冷淡——投資家も騙されない
Ma教授は株式市場の反応も調べている。「AI投資と人員削減が企業価値を高める」という経営者の期待とは裏腹に、レイオフ発表後の平均株式リターンはゼロに近かったという。
投資家が「AI活用による効率化」という名目のレイオフを額面通りに評価していないことを示すデータであり、戦略全体として完全に裏目に出ている構図だ。Ma教授の分析では、短期的なコスト削減の期待すら株価に織り込まれていないとされており、市場の懐疑は経営陣の想定より根深い可能性がある。
Metaの事例と、Altmanの発言
従業員モラルの崩壊は、Metaの事例でも顕在化している。Mark ZuckerbergがAIを前面に押し出した大規模レイオフを断行した結果、従業員の士気は低迷したと報じられている。
一方、AI業界そのものへの疑念も広がりつつある。元記事によれば、OpenAIのSam Altman CEOは「私たちはまだ、誰かのテクノロジーとのインターフェースを完全に変えるような『iPhoneの瞬間』を迎えていない」と述べたとされている。数兆ドル規模の資金を集めた根拠となった「壮大な約束」が、現実と乖離していることをトップ自ら認めた形だ。ただし、この発言の詳細な発言日時・文脈については元記事内で確認されたい。
結論:AIより先に、人への配慮が必要
Ma教授の結論は明快だ。「マネージャーのAIへの楽観よりも、従業員の感情の方が、AIの恩恵を引き出す上でより重要な役割を果たす」。レイオフの口実にAIを使い続けることは、その恩恵を最大化する妨げになる。
AIによる生産性向上という命題は今のところ実証されておらず、それどころかAIを使った人員削減がAI活用そのものを毀損するという皮肉な構造が浮かび上がっている。
詳細は90 Percent of Execs Say Oops, AI Didn't Help Productivity, So Layoffs Will Continueを参照していただきたい。