8月25日、Stability AIが「Stability AI latest funding backed by entertainment industry biggest names」と題した記事を公開した。Sony Music・Universal Music・Warner Music・Electronic Artsなどエンタメ大手が参加するシリーズB資金調達ラウンドの完了を伝える内容だ。注目すべきは、生成AIをめぐる著作権侵害訴訟を各所で起こしてきた音楽業界の三大メジャーレーベルが、今度はAI企業の株主として一斉に名を連ねるという構造的な転換が起きた点である。
エンタメ大手3レーベルがAI企業に揃って出資
Stability AIがシリーズBで7,600万ドルを調達した。
今回のラウンドで特徴的なのは、Sony Music Group・Universal Music Group・Warner Music Groupという音楽業界の三大メジャーレーベルが揃って出資者に名を連ねた点だ。生成AI企業に対して著作権侵害を訴える訴訟を各所で起こしてきた音楽業界が、今度はAI企業の株主として加わるという構造的な転換を示している。ゲーム大手のElectronic Arts(EA)と半導体メーカーの投資部門AMD Venturesも新規投資家として参加した。既存投資家であるCoatue・Greycroft・Sean Parker・Eric Schmidtも今ラウンドに継続参加している。
Universal Music GroupおよびWarner Music GroupはStability AIとすでに戦略的提携を結んでいる。EAともゲーム開発の再構築を目指す提携を発表済みで、今回の出資はその関係を資本面でも確定させたかたちだ。
「クリエイター向けに特化する」という戦略の資本的証明
CEO Prem Akkarajuは2024年6月に就任して以来、Stability AIのポジショニングを「汎用AIではなく、音楽・ゲーム・エンタメのプロ向けツール」に絞り込んできた。今回の投資家構成はその方針と完全に一致している。
「他社が汎用AIを構築している中、Stability AIはクリエイティブツールを構築し、その分野を定義するアーティスト・スタジオ・権利保有者と共に取り組んでいる」
— Thomas Laffont(Coatue共同創業者、今回取締役に就任)
取締役会には、今回新たにJames Cameron(元記事では取締役会メンバーとして記載)、元Facebook社長のSean Parker、そしてかつてWeta Digitalを率いたAkkaraju自身が名を連ねる。エンタメ業界の人脈を前面に出した体制だ。
直近の製品動向:Stable Audio 3.0
調達発表と同時期に、Stable Audio 3.0のリリースも公表された。完全にライセンス済みのデータで学習した音楽生成モデルファミリーで、オープンウェイト(モデルの重みパラメータを公開し、誰でもダウンロード・利用・改変できる形式。クローズドなAPIのみ提供するモデルと対比される)として提供される。
アーティストはDAW(Digital Audio Workstation:音楽制作用ソフトウェア)プラグインとして既存の制作環境に組み込むか、StableAudio.comから直接利用できる。ライセンス済みデータによる学習は、権利問題を抱えてきた音楽業界との提携を維持するうえでの前提条件でもある。三大レーベルが株主に転じた背景には、こうした権利保護への姿勢が一定の信頼を生んだ側面があると読める。
調達資金の使途
公表された使途は以下の3点だ。
- クリエイティブ制作向けプロダクトスイートの開発
- 応用研究部門の強化
- プロフェッショナルサービス部門の拡大
「汎用LLMの競争には加わらず、エンタメ制作の現場に刺さるツールを作る」という方針を、資本と製品の両面から具体化しつつある。
詳細はStability AI latest funding backed by entertainment industry biggest namesを参照していただきたい。