8月23日、NL Timesが「Workers use AI more than employers support it, study finds」と題した記事を公開した。この記事では、従業員のAI活用が雇用主のサポートを大きく上回っており、組織のガバナンスに深刻な盲点が生まれているという調査結果について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「使っているが、支援されていない」——全セクターで共通する構造
オランダの経済誌ESBが発表した分析によれば、ChatGPTやCopilotといったAIツールを業務で使っている従業員の割合は、雇用主がその活用を積極的に支援・奨励しているとする割合を、ほぼすべてのセクターで15ポイント以上上回っている。
最も顕著なのは公共部門と教育分野で、そのギャップは30ポイント近くに達する。教師や公務員が授業案・要約・レポートの草稿作成に生成AIを活用している一方、GDPRや著作権、生徒・市民データの保護に関する法的不確実性から、組織の方針策定は事実上止まっている状態だ。
対照的に、IT・金融・プロフェッショナルサービス分野ではギャップが小さい。これらの分野では、Microsoft 365向けCopilotのようなエンタープライズグレードの閉域型AIソフトウェアライセンスを積極的に導入し、即時の生産性向上を組織として取り込もうとしているためだ。
「Bring Your Own AI」が生むガバナンスの死角
組織の公式展開が個人の利用に追いついていない結果、「Bring Your Own AI(BYOAI)」と呼ばれる慣行が広がっている。従業員が個人アカウントで契約した一般向けのChatGPTやClaudeに、社内ネットワークからログインして業務利用するパターンだ。
この行動が引き起こすのは深刻なガバナンスの盲点である。従業員は、自社の機密データやクライアント情報、ソースコードをパブリックモデルに入力する際、それがデータプライバシーの放棄につながると認識していないことが多い。
オランダ中央銀行(DNB)が昨年10月に実施した調査では、**雇用主がAI活用を積極的にサポートしていると感じる従業員はわずか25%**にとどまった。多くの従業員は「一定のツールの使用は許可されているが、特に奨励されていない」と回答しており、明確なAI利用ポリシーが存在しないとする声も多かった。
時短できても、仕事は減らない
生成AIを使う労働者の3分の2以上が週3〜8時間を節約できているというデータがある。しかし、その恩恵は「余裕」にはつながっていない。
組織的な指針が不在の状態では、節約された時間はより多くのタスクで即座に埋められる。締め切りは圧縮され、企業はスピードへの期待値を上げる。結果として、AI導入前よりも追い立てられていると感じる従業員が増えているという。
AIが個人の生産性を上げても、その果実を組織がどう設計するかの枠組みがなければ、負荷は単純に増加するという構造だ。
組織に問われる「次の一手」
この調査が示す問題は技術的なものではなく、ガバナンスと組織設計の問題である。従業員は既にAIを使っている。問われているのは、それを組織としてどう把握し、安全に活用し、生産性向上を働き方の改善に還元するかだ。
特にCTO・エンジニアリングマネージャーの立場では、BYOAIの実態把握と、エンタープライズグレードツールへの移行支援が急務といえる状況だ。
詳細はWorkers use AI more than employers support it, study findsを参照していただきたい。