8月22日、runtimewire.comが「Darius Monsef's OzBrain gives AI agents one shared memory」と題した記事を公開した。この記事では、複数のAIエージェント間で知識を共有・管理するためのサービス「OzBrain」について詳しく紹介されている。
問題の核心:エージェントが増えるほど、知識は散らばる
Claude、ChatGPT、Cursorといった複数のAIエージェントを使い倒しているエンジニアなら、一度は直面する問題がある。あるエージェントで決めた仕様が別のエージェントには伝わっていない、チャット履歴に埋もれた決定事項を毎回手動でコピーして渡している、ローカルのメモファイルと各ツールのプロジェクト設定が噛み合わなくなっている――そういった「知識の断片化」だ。
Darius Monsef(@bubs)はこの問題を自分自身のワークフローで体験した。ヘルスケア向けのAI音声プロダクトを開発しながら、ローカルのClaude Codeセッション、リモートでのエンジニアリング作業、自動化ルーティン、スマートフォンからの計画管理を並行して回していたという。各エージェントはそれぞれ有用に動くが、その成果物が「どこかに永続的に残る場所」がなかった。
その解として作られたのが**OzBrain**だ。
OzBrainの設計:エージェントが維持するWiki
OzBrainの本質は「エージェントが読み書きするMarkdown Wikiのホスティングサービス」である。無差別なチャット履歴やベクトル検索のスニペット集ではなく、リンクされたMarkdown記事の集合体として知識を格納する。
エージェントはまずコンパクトなルーティングインデックスを取得し、現在のタスクに関連する記事だけを開く。OzBrainのホームページが示す具体例は、ポジショニング、文章のトーン、クライアント条件、プロジェクトステータス、ツール設定などだ。
この設計の参照元は**Andrej KarpathyのLLM Wikiブループリント**だ。Karpathyは「LLMが管理するMarkdownファイルの相互リンク集合体」という構想を提唱しており、エージェントがWikiの陳腐化を防ぐ――要約の更新、リンク修復、矛盾の検出――を担えると論じた。OzBrainはこのパターンをホスト型コネクターとして商品化している(ホームページは「インスピレーション元」と明記しており、Karpathyとの公式な関係はない)。
最も重要なのは「書き込み経路」の設計
複数エージェントが同一の知識ベースに書き込む場合、最大のリスクは「あるエージェントが合意済みの価格、クライアント条件、製品上の意思決定を古い情報で上書きしてしまう」ことだ。OzBrainはこれに対してステージング+競合検出の仕組みを組み込んでいる。
製品ドキュメントによれば、エージェントが変更を加える際はまず「提案」として扱われる。既存の記事と矛盾が検出された場合、OzBrainは書き込みを一時停止してその矛盾をユーザーに通知する。承認されて初めて変更が正規の記録に昇格し、どのエージェントがどの改訂を行ったかはバージョン履歴に残る。
「自動メモリは便利に聞こえるが、矛盾する変更がサイレントに適用されると信頼できない」という現場の感覚に、正面から応えた設計だ。
MCPで接続:Claude・Cursor双方に対応
技術的な接続は**MCPエンドポイント**を通じて行う。
認可後、複数のエージェントが同一のブレインを参照しつつ、書き込みはそれぞれ個別に帰属させることができる。Claude ProjectsやCursorのルールファイルが特定のリポジトリや作業ストリームに紐付いた設定を保持するのに対し、OzBrainは「ツールをまたいで人やチームに付いて回るべき情報」――顧客履歴、運営上の判断、設定、研究内容、プロジェクトの現在状態――を対象とする位置づけだ。
チームで利用する場合、コラボレーターに対してアクセスを付与することで、そのコラボレーターのエージェントも同一のスコープ付きブレインを読み書きできる。
プランとセキュリティ
| プラン | 月額 | 記事数上限 |
|---|---|---|
| Free | 無料 | 50件 |
| Pro | $20 | 300件 |
| Max | $99 | 600件 |
| Company | 要問い合わせ | カスタム |
読み取り・書き込み回数、ブレイン数、コネクション数はすべて無制限で、課金制約は記事の容量のみだ。エージェントのAPIコール数ではなく「管理された知識の規模」に対して課金する設計は、Monsefが「エージェントの有用な記憶はメトリクスの流れではなく拡張するライブラリになる」と見ている判断を反映している。
セキュリティ面では、記事本文は保存時に暗号化、アカウントはRLS(行レベルセキュリティ)で分離、接続は任意のタイミングで失効可能、活動は監査ログとしてエクスポートできる。プライバシーポリシーによれば、Monsef Holdingsはブレインの内容をモデルトレーニングや広告に利用しない。
現時点のバージョンはv0.1.0。エージェントをまたいだ共有知識ベースというアプローチ自体はシンプルで実用的であり、実運用を通じて成熟していくことが期待される。
Monsefはこれ以前にCreative Market(2014年Autodesk買収)、Sightbox(2017年J&J買収)など複数のスタートアップをY Combinatorで立ち上げてきた3度のYCファウンダーだ。OzBrainはメルボルンを拠点とするMonsef Holdingsが運営している。
詳細はDarius Monsef's OzBrain gives AI agents one shared memoryを参照していただきたい。