8月22日、The Next Webが「AI data centres are taking the capacitors carmakers need」と題した記事を公開した。AIデータセンターの急拡大が自動車向け電子部品の世界的な供給不足を引き起こし、自動車メーカーの生産と価格設定に直接影響を与えている実態を伝えている。「車両の中で最も安い部品が、車の値段を決める」——この逆説が記事の核心だ。
「1個0.1円以下」のコンデンサがEV生産を止める
問題の中心にあるのは、MLCC(積層セラミックコンデンサ) とプリント基板(PCB)だ。MLCCは単価がわずか数分の一セント(日本円で0.1円以下)の受動部品だが、運転支援機能を持つ現代の自動車には数千個が搭載されている。
中国の自動車メーカーによると、このMLCCの世界的な供給不足は20〜30%に達しており、価格は過去1年で3倍以上に高騰している。中国の自動車大手Geely(吉利汽車)のDai Yong氏は、「基板とコンデンサが不足すると、アセンブリラインがスムーズに動かず生産が中断される。これはコストの問題とは別次元の話だ」と語っている。つまり、カネを積んでも代替品がない状況だ。
需要を吸い上げているのはAIデータセンターだ。業界関係者によれば、AIインフラと自動車メーカーが同時に求める需要量を満たすまで、少なくとも1年は供給が追いつかない見通しだという。
車載メモリも同時に逼迫、3ヶ月で価格1.8倍
MLCCとは別の話として、車載メモリの価格高騰も深刻だ。車載グレードのメモリは3ヶ月で約180%上昇している。背景にあるのはSamsung、SK hynix、Micronという3大メモリメーカーの生産方針で、先端プロセスの製造能力の80%以上をAIサーバー向けに振り向けている。
この構造的なメモリ不足はすでに消費者向け製品にも波及しており、スマートフォンやPCといった一般製品の価格上昇にもつながっていると記事は指摘する。
自動車側の事情も需要増加に拍車をかけている。レベル2の基本的な運転支援システムでも約8GBのメモリが必要で、都市部での自動運転ナビゲーション機能ともなると300GB超を要求するケースもある。EV化と知能化が同時に進むことで、1台あたりのメモリ需要は加速度的に増加している。
なお、MLCCの「3倍超」とメモリの「1.8倍(180%上昇)」はそれぞれ別の部品カテゴリの数字であり、どちらもAI需要に起因する供給逼迫が背景にある点は共通している。
すでに価格転嫁が始まっている
コスト上昇はすでに消費者価格に転嫁されつつある。中国のEVメーカー10社以上が2,000〜6,000元(約4万〜12万円)の値上げまたは値引き縮小を実施。BYDは運転支援機能の料金を引き上げ、General Motorsもコスト増加についての警告を発している。
欧州勢も例外ではない。Volkswagen、Stellantis、BMWも同じサプライヤーから部品を調達しており、コンデンサ・基板・メモリの価格上昇を等しく受けている。EV価格の下落が止まりつつある欧州市場では、さらに厳しい状況だ。
「戦略物資」として見落とされた部品
記事が指摘する構造的な問題は鋭い。欧州各国は半導体産業への投資を最先端ファブ(製造拠点)に集中させてきたが、実際に生産ラインを止めているのは受動部品と車載メモリ、すなわち産業政策で「戦略的」と位置付けられてこなかった部品群だ。
自動車業界はこの教訓を5年間で2度学んでいる。前回はCOVID-19によるロジックチップ不足(2021〜2022年)だった。それでも業界全体の在庫戦略は変わっていない、と記事は指摘する。
「車両の中で最も安い部品が、車の値段を決める」。この逆説が、AIブームが引き起こしたサプライチェーンの現実だ。
詳細はAI data centres are taking the capacitors carmakers needを参照していただきたい。