8月24日、Chance Townsendが「OpenAI wants California to strengthen its newly passed AI safety law」と題した記事を公開した。OpenAIが自ら成立を後押ししたカリフォルニア州のAI安全法について、同社が今度はその強化を州議会に求めているという、通常のAI企業では考えにくい構図を詳報している。AI規制をめぐる主導権争いが新たな局面を迎えつつある。
自分たちが通した法律を、自ら強化しろと要求する
AI企業が規制強化を自ら求めるのは、通常あり得ない構図だ。しかしOpenAIは今回、まさにその立場をとった。
OpenAIのGlobal AffairsチームがLinkedInに投稿した内容によれば、同社はカリフォルニア州のSB 53(フロンティアAI透明性法)の改正を求めている。SB 53は2025年9月にGavin Newsom知事が署名・成立させた法律で、OpenAI自身がその通過を支持していた。
SB 53とは何か
成立したSB 53は、すでに相応の内容を持つ法律だ。カリフォルニア州知事府の説明によれば、同法は以下を義務づけている:
- 大規模フロンティアAI開発者による安全フレームワークの公開
- 重大な安全インシデントをカリフォルニア州緊急サービス局へ報告する公式チャンネルの設置
- 内部告発者の保護
- 非準拠企業への民事制裁を州司法長官が科す権限
また、安全性・公平性研究を支援するための公共コンピューティング基盤「CalCompute」の設立も盛り込まれており、技術の変化に合わせて毎年法律を見直すことも義務化されている。
Newsomはこの法律を、AI産業を萎縮させずに公共を守れる証明として位置づけた。連邦レベルで包括的なAI政策が一向に進まない中、州が先行して動く事実上の「穴埋め」としての役割も期待されていた。
背景として押さえておくべきは、SB 53が成立した文脈だ。Newsom知事は2024年、より規制色の強いSB 1047(大規模AIモデルに対して開発者が安全性を事前証明することを義務づけるもの)を拒否した経緯がある。SB 53はその代替として位置づけられており、産業界の反発を抑えつつ一定の透明性を確保しようとした妥協的な産物でもある。OpenAIがその通過を支持したこと自体、より厳しい規制の成立を防ぎながら枠組み作りに関与し続けるという判断の結果とも解釈できる。
OpenAIが求める「歯」とは
OpenAIが今回求めているのは、法律に実効性のある規定を追加することだ。具体的には:
- フロンティアAIモデルが訓練中または評価中に監視され、第三者のセキュリティ制御を回避したり、本来アクセスできないはずの機密情報を取得しようとする兆候を検知できる仕組み
- モデル開発プロセス全体にわたるサイバーセキュリティの強化。AIシステムが内部のセーフガードを迂回できないようにすることが目的だ
「逆連邦主義」という戦略
OpenAIはこの動きを「reverse federalism(逆連邦主義)」(OpenAIが用いる表現)と名づけている。連邦議会が包括的なAI立法を先送りし続ける中、各州が先に互換性のある安全基準を作り、それを将来的に国家政策へと転換していくという考え方だ。
OpenAI側は今回の要求を「特定のインシデントに対するルール作りではなく、問題を早期に発見し、教訓を業界全体で共有できるフレームワークの構築」と位置づけている。
ただし、Chance Townsendはこの点について、規制の枠組み作りにOpenAI自身が関与し続けることができるという側面も指摘している。自社に都合のよい基準を業界標準として定着させる動きとも読める。そもそも連邦政府が統一基準を設けないまま各州の対応が進めば、基準のばらつきが生じ、最終的に「最も影響力を持つ企業が関与した州のルール」が事実上の業界標準になるリスクも否定できない。
注:MashableはZiff Davis傘下であり、同社は2025年4月、OpenAIがAIシステムの訓練・運用においてZiff Davisの著作権を侵害したとして訴訟を提起している。
詳細はOpenAI wants California to strengthen its newly passed AI safety lawを参照していただきたい。