8月21日、Ars Technicaが「As demand for Meta AI glasses explodes, it's harder to avoid creepy recordings」と題した記事を公開した。
カメラ内蔵のAIスマートグラスが街中に広まるにつれ、「自分は今、録画されているのだろうか」という不安を抱える人が増えている。そこに目をつけたエンジニアたちが、周囲のスマートグラスを検知するアプリを続々とリリースしている——ただし、検知できるのはあくまで「グラスの存在」であり、「録画中かどうか」までは判別できない、という根本的な限界がある。
なぜ今、この問題が深刻化しているのか
Ray-Ban Metaは2023年の第2世代発売以降、販売が急拡大している。Metaは具体的な出荷台数を公表していないが、複数の業界レポートはスマートグラス市場全体の急成長を指摘しており、街中でRay-Ban Metaを見かける機会は2025年以降に明らかに増えた。Oakley MetaやSnap Spectacles(Snap Inc.製)といったカメラ搭載ウェアラブルも市場に存在し、一般人がAI搭載カメラを日常的に装着する時代が現実になりつつある。
この問題が広く認識されるきっかけとなったのが、2024年にHarvard大学の学生が公開した「I-XRAY」プロジェクトだ。Ray-Ban MetaとAI顔認識を組み合わせ、街中で出会った見知らぬ人の個人情報をリアルタイムで特定できることを実証したこの実験は、世界的に大きな波紋を呼んだ。「スマートグラスは見た目に反してプライバシーの脅威になりうる」という認識が一気に広がったのは、この出来事が大きかった。
最も使われている検知アプリ「Nearby Glasses」
2025年2月以降、スマートグラスを検知するアプリが相次いでリリース・更新されている。現時点で最も人気の検知アプリはNearby Glasses(iOS / Android対応、価格:**$2.99)だ。GitHubリポジトリも公開されており、Google Play Storeだけで10万回以上ダウンロード**されている。
これらのアプリが使う手法は、スマートグラスがスマートフォンとペアリングする際に発するBluetooth LE(Low Energy)シグナルの検知だ。グラスの電源が入っていれば固有のBLEシグナルを発するため、周囲に該当デバイスが存在するかどうかを通知できる。
開発者のYves Jeanrenaudは「プロの開発者ではない」と自認しており、GitHubのREADMEには限界を正直に記している。それでも10万ダウンロードを超えたという事実は、需要の大きさを端的に示している。Jeanrenaudはこのアプリを作った動機についてこう書いている。
「このアプリが誰かの役に立てばいいと思っている。ただ、テクノロジーで全てが解決できるという幻想を広めたいわけではないし、偽りの安心感を与えたくもない。これは不完全なアプローチであり、おそらくそれは変わらない。」
検知アプリの「致命的な限界」
利用者が理解しておくべき本質的な限界は複数ある。
- 録画中かどうかは判別できない。グラスが起動していることはわかっても、実際に撮影しているかは不明だ。
- 壁や人体などの障害物があると、BLEシグナルが遮蔽されて検知が失敗する場合がある。
- 誤検知(False Positive)がある。開発者自身も誤検知の可能性を明示しており、アプリ側は当事者への対立行動(confrontation)を推奨せず、誤解による事態について免責を明示している。
EFFのセキュリティ研究者Cooper Quintinは、Ars Technicaの取材に対し、「人々がMetaグラスの隠密録画に対抗するアプリを作るのはまったく驚くべきことではない」と述べ、無断録画がこれらのグラスの「最大の問題」であると指摘した。
不完全でも「何もしないよりマシ」
限界があっても、ユーザーはこれらのアプリを「部屋や空間をスキャンする手段」として活用している。誤検知を承知のうえで改善フィードバックを積極的に送るユーザーも多い。「完璧ではないが、何もできないよりはマシ」という判断の背景には、現状のプラットフォームや法規制がスマートグラスによる録画問題に追いついていないという現実がある。
アプリの限界そのものが、規制や設計レベルでの解決策がいまだ存在しないことを逆説的に示している。Meta AIグラスの普及が続くなか、この緊張関係がどう決着するかは引き続き注視が必要だ。
詳細はAs demand for Meta AI glasses explodes, it's harder to avoid creepy recordingsを参照していただきたい。