8月21日、Euronewsが「ChatGPT to start showing ads across Europe next week」と題した記事を公開した。月額料金を払っているユーザーにも広告が表示される設計、EU規制との衝突、そして数千万人規模の新たな展開——OpenAIのヨーロッパ広告ロールアウトは、AIビジネスモデルをめぐる最も論争的な一手となりつつある。
ChatGPTがヨーロッパで広告表示開始、収益モデルが大きく変わる
OpenAIは8月24日(月)から、ヨーロッパ31カ国でChatGPTへの広告表示を開始する。今回の展開により、広告プログラムの対象市場は合計40カ国に拡大する。
ChatGPTの広告プログラムは、2026年2月にアメリカでテスト開始。その後、カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・メキシコ・ブラジル・日本・韓国へと順次展開されてきた。ヨーロッパはその中で最大の市場となる。なお、今回の対象31カ国にはEU加盟国に加え、英国・ノルウェー・スイスなど欧州主要国が含まれるとみられる。
広告が表示されるのは無料(Free)プランと、元記事が「Go」と表記する月額8ドルの中間プランのみ。Plus・Pro・Enterpriseの上位プラン契約者には広告は表示されない。
「広告がAIの回答に影響しない」とOpenAIは主張
OpenAIは今回の展開にあたり、広告の透明性についていくつかの点を明言している。
- 広告は常に明確にラベル表示され、ChatGPTの回答とは切り離される
- 会話内容は広告主に共有されず、ユーザーデータの販売も行わない
- 広告がChatGPTの回答内容に影響を与えることはない
ただし、こうした保証が必要になった背景には、プログラム開始当初からの批判がある。2026年1月、アメリカのEd Markey上院議員はSam Altmanら主要テック企業CEO7人に書簡を送り、AIチャットボットへの広告掲載がユーザーとの「感情的な結びつき」を悪用するリスクを指摘。健康・メンタルヘルス・政治に関するセンシティブな会話への広告ターゲティングをどう防ぐのか、説明を求めた。
また2月の米国展開時には、月額8ドルを支払っている中間プランでも広告が表示されることへの反発がユーザーから上がった。「有料サービスなのに広告が出るのはおかしい」という声であり、「広告なし」ではなく「広告が少ない」という位置づけへの不満だった。
EU規制との衝突:AI法とDSAという二つの壁
ヨーロッパへの展開が特に複雑なのは、二つの規制の枠組みと交差するためだ。
EUのAI法(AI Act)は、潜在的に有害な形でユーザーを操作するAIシステムを禁じている。研究者や消費者団体は、チャット型AIへの広告挿入がこのルールの「グレーゾーン」に踏み込むと指摘する。バナー広告や検索連動型広告と異なり、チャットボット内の広告は会話と同じトーンで流れ込んでくるため、ユーザーが「説得されている」と気づきにくい。この問題はまだ規制当局や裁判所で正式に争われていない。
もう一つの論点が**デジタルサービス法(DSA)だ。欧州委員会は現在、ChatGPTの検索機能が「非常に大規模なオンライン検索エンジン(VLOSA)」に指定されるかどうかを検討中である。この指定はEU内の月間ユーザーが4,500万人を超えた時点**でトリガーされる。欧州委員会報道官のThomas Regnierは7月にロイターへ「指定は十分にあり得る」と発言しており、指定された場合は年次リスク評価・独立監査・広告リポジトリの公開・規制当局へのデータ共有など、大幅に重い義務が課される。
広告ビジネスとしてのAI、本格化へ
ユーザーは広告のパーソナライズ設定を制御できる。また広告を一切見たくない場合は、上位の広告非表示プランへの課金という選択肢がある。
OpenAIにとって今回のヨーロッパ展開は、AI製品を広告メディアとして本格運用する戦略の一環だ。今回の31カ国ロールアウトは、EU・EEA・英国などをまたぐ欧州全域をほぼカバーするものであり、新たに広告に接するユーザーの規模は数千万人に及ぶとみられる。チャットボットという「意思決定の場」に広告を置く発想は収益面で理にかなってはいるが、AI法・DSA・ユーザー信頼・感情的な会話文脈という四つの難題を同時に抱えた展開でもある。規制当局がどう動くかが、今後の広告モデルの行方を大きく左右するだろう。
詳細はChatGPT to start showing ads across Europe next weekを参照していただきたい。