8月21日、NVIDIAが「NVIDIA AVO Reaches 100% on ARC-AGI-3, Demonstrating a Frontier-Level General-Purpose Architecture for Long-Horizon Autonomous Agents」と題した記事を公開した。NVIDIAの汎用エージェントシステム「AVO」が、AGI能力の評価指標として知られる「ARC-AGI-3」の公開セット(25環境・183レベル)で満点(RHAE = 100.00)を達成したことを報告する内容だ。なお、この結果は公開セットに限定されたものであり、競技用のセミプライベート・プライベートセットとは別である点は最初に押さえておきたい。
「モデルの評価」と「エージェントの評価」は別物だ
この結果が示す最も重要な事実はシンプルだ。ARC Prizeが公開しているデータによれば、Claude Opus 5単体(High reasoning effort)のARC-AGI-3公開セットスコアは約30%にとどまる。同じモデルをNVIDIAの「AVO」というエージェント基盤に組み込むと、スコアは100%に到達した。モデルの性能がそのままエージェントの性能にはならない——これがNVIDIAの主張の核心であり、今回の結果が広く注目されている理由でもある。
ARC-AGI-3とは何か
ARC-AGI(Abstraction and Reasoning Corpus for Artificial General Intelligence)は、Keras作者であり現在はARC Prizeの共同創設者としても知られるFrancois Chollet氏が提唱したAGI能力の評価フレームワークだ。単なる知識の暗記ではなく、ルールも目標も明示されない未知の環境でいかに推論・適応できるかを測る点が特徴で、大規模言語モデルが苦手とする「本質的な推論能力」を問う指標として研究者の間で広く参照されてきた。
第3世代となるARC-AGI-3は昨年(2025年)に登場し、従来の静的なグリッドパズルから大きく進化した。25種類のインタラクティブなゲーム形式の環境を用意し、エージェントは探索を通じて環境の動作ルールと目的を自力で推定しながら、効率的に行動しなければならない。難易度は前世代から大幅に引き上げられており、2026年現在もフロンティアモデルにとって高難度の評価環境であり続けている。
評価指標のRHAE(Relative Human Action Efficiency)は、タスク完了率と「初見の人間が要した操作数に対する効率」を組み合わせたスコアで、単純な正解率ではなく行動の無駄のなさも問われる。AVOは公開セット全25環境・計183レベルを6,624アクションで完全クリアした。
AVOの設計——GPUカーネル最適化から生まれた汎用エージェント
Agentic Variation Operators(AVO)は、もともとGPUカーネルの自律最適化という、極めて専門性の高い用途で開発されたシステムだ。コード検査・仮説形成・変更・実行・フィードバック解釈・修正というループを長期間にわたって自律的に回し続けるために設計されており、その実績としてNVIDIA DGX B200上でのマルチヘッドアテンションカーネルでcuDNNを最大3.5%、FlashAttention-4を最大10.5%上回る性能を記録している。この最適化実験では7日間連続で稼働し、500以上の方向を探索、40バージョンのカーネルをコミットした。
GPUカーネル最適化とARC-AGI-3は表面上まったく異なるタスクに見えるが、NVIDIAはどちらも同一の計算パターンに帰着すると主張する。不完全な証拠から仮説を立て、外部インターフェースを通じてアクションを実行し、結果を観察して問題のモデルを更新する。有用な状態を保持しながら誤った仮定から回復し、長い時間軸にわたって前進し続ける——この構造が両タスクに共通するという。「転用されるのはドメイン知識ではなく、持続的な自律進行のための仕組みそのものだ」とNVIDIAは述べている。
この設計を支える主要機構は2つある。永続メモリ(過去の実装・評価結果・推論の蓄積を引き継ぎ、探索の再構築を防ぐ)とスーパーバイザー(停滞や非生産的なループを検知し、メインエージェントに別の戦略を促す)だ。
比較対象とモダリティの違い
ARC-AGI-3公開セットの比較対象として、AnthropicのClaude Opus 5をベースとしたVISTAシステムが挙げられている。VISTAは同じ183レベルを7,542アクションで完了しているのに対し、AVOは6,624アクションで完了しており、約12%少ないアクション数を実現した。ただしNVIDIAも記事内で明示しているとおり、これは厳密な比較実験ではなく、エージェント設計・観測表現・メモリ構成など多くの要素が異なる点には注意が必要だ。
モダリティの面でも差異がある。VISTAがデフォルトで512×512のPNG画像を入力として使用するのに対し、AVOはテキストのみで動作した。各観測は64×64のテキストグリッドとして供給され、画像トークンは一切使用していない。画像なしでゲーム環境を推論しきった点は、LLMのテキスト推論能力の可能性を改めて示す結果でもある。なお、ARC Prizeの公式リーダーボードでは各モデル・システムのスコアを通して比較できるため、他の手法との位置づけを確認したい読者はそちらも参照されたい。
詳細はNVIDIA AVO Reaches 100% on ARC-AGI-3, Demonstrating a Frontier-Level General-Purpose Architecture for Long-Horizon Autonomous Agentsを参照していただきたい。