8月21日、PYMNTSが「Alibaba Focuses on Agentic Commerce as AI Spending Balloons」と題した記事を公開した。この記事では、AlibabaがAIへの大規模投資によって純利益が75%減少する一方、クラウドおよびAI関連事業が急拡大している状況について詳しく紹介されている。
AI投資が利益を圧迫——それでも止まらない支出
Alibabaが8月20日(木)に発表した2026年6月期四半期決算は、収益と利益が真逆の動きを示した。
売上収益は前年比9%増を達成した一方、純利益は75%減という大幅な落ち込みを記録した。この主因は、AIインフラへの積極的な設備投資だ。AIインフラを含む資本支出は前年比75%増の677億元(約1兆円)に達した。
ただし、AI関連の事業指標は好調だ。クラウド事業の外部収益は45%増、AI関連製品の収益は12四半期連続で三桁成長を継続している。
CEOのEddie Wuは決算プレスリリースで「フルスタックAI戦略によって、AIおよびAIコンピューティングへの需要拡大を取り込む優位なポジションを確立した」と述べた。
「エージェンティック・コマース」という新軸
今回の決算で注目されるのは、Alibabaが単なるAI投資の話に留まらず、eコマースの構造変革を具体的に語り始めている点だ。
同社は「エージェンティック・コマース(Agentic Commerce)」——AIエージェントがeコマースの各プロセスを自律的に担う形態——を次の成長軸として位置付けている。
消費者側では、同社の独自LLM「Qwen」を活用したAI駆動の購買体験をすでに2億5,000万人のユーザーが経験済みとWuは述べた。新機能としては、マルチモーダル検索やバーチャル試着(Virtual Try-On)などが展開されている。
供給者(マーチャント)側でも、AIの活用が進む。Wuによれば、マーチャントはすでにAIを「広く採用」しており、データ分析・広告・マーケティング・カスタマーサービスの領域での活用が進んでいる。さらに今後は、eコマースシナリオ専用に設計されたAIエージェントを「Qwen Office」と共同で提供する計画だという。
オープンウェイトモデルでGoogleとMetaを超えた
決算発表の直前(元記事では具体的な日付の記載なし)には、Alibabaのオープンウェイトモデル(重みを公開する形式のAIモデル)が世界トップの座に立ったとの報告もあった。
過去6ヶ月間でのダウンロード数は全世界で30億件超。これはGoogle、Meta、そしてDeepSeekなど国内競合他社を上回る数字だ。
Wuはより広い文脈でAI投資の性格を説明している。Alibabaの投資モデルは「純粋なAI企業とは根本的に異なる」とし、チップ・クラウドインフラ・AIモデルという三層のフルスタック戦略を強調した。
財務インパクトをどう読むか
純利益75%減という数字は、短期的には厳しい。しかしAIインフラへの先行投資という文脈で見れば、クラウド外部収益45%増・AI関連収益12四半期連続三桁成長という実績は、その投資が売上に結びつきつつあることを示している。
※編集部の考察:元記事には記載がないが、AWS・Google Cloud・Microsoftがクラウド黎明期に歩んだ「利益圧迫を伴う先行投資」の構図と重なる点は興味深い。Alibabaが「利益よりも規模とシェア」を選んでいる現局面は、中国テック大手のAI戦略が本格的な競争フェーズに入ったことを示す一例として読める。
詳細はAlibaba Focuses on Agentic Commerce as AI Spending Balloonsを参照していただきたい。