8月19日、Matt Saundersが「Multi Agent Collaboration Gets Persistent Compute in Bedrock AgentCore」と題した記事を公開した。AWSがBedrock AgentCoreに「ランタイムインスタンス」という新たなコンピュートオプションを追加し、マルチエージェント協調の長時間実行ニーズに応えた件について詳しく紹介されている。
8時間の壁を破る「ランタイムインスタンス」
Amazon Bedrock AgentCoreは、AIエージェントの実行基盤として提供されているサービスだ。当初はサーバーレスのマイクロVM(仮想マシン)ベースのセッションのみをサポートしており、最大8時間という制限があった。この制限が、長時間にわたるコード生成・テスト・ドキュメント生成といった複合タスクを扱うチームにとって実運用上のネックになっていた。
今回追加されたランタイムインスタンスは、顧客のAWSアカウント内でAgentCore管理下のEC2インスタンス上にエージェントを実行する方式で、最大14日間の継続セッションを実現する。GPUアクセラレーター対応インスタンスや大容量メモリ構成も選択可能で、Pythonスクリプトとコンテナイメージのどちらでもデプロイできる。
複数エージェントが同一ホストで協調できる構造が核心
ランタイムインスタンスの最大の特徴は、複数のエージェントを1つのランタイムにデプロイし、共有ファイルシステム(セッションディレクトリ)を介して連携できる点だ。
従来の構成では、エージェント同士が情報を渡す際にAPIコールを挟む必要があった。ランタイムインスタンスでは、コード・テスト・ドキュメント・セキュリティ成果物を共通の作業ディレクトリ上で複数の専門エージェントが操作し合うパターンが実現する。プリンシパル・デベロッパーアドボケイトのSebastien Stormacq氏は次のように述べている。
エージェントたちはセッション内でお互いをツールとして呼び出し、ジョブが完了するまで自律的に反復できます。
フレームワーク面では、CrewAI、LangGraph、LlamaIndex、Strands Agents(AWSが2025年にオープンソース公開したPythonベースのエージェントフレームワーク)といった主要エージェントフレームワークをそのまま持ち込める。@app.entrypointデコレーターを付けてzipファイルかコンテナイメージにパッケージするだけで、既存のコードベースをほぼ変更せずに動かせる。
マイクロVMとの使い分け、コストの分岐点
AWSはランタイムインスタンスをマイクロVMの置き換えではなく補完と位置づけており、両者を組み合わせるハイブリッドトポロジーを推奨している。典型的な構成は「マイクロVM上のオーケストレーターエージェントが長時間ジョブをインスタンス上のワーカーエージェントにディスパッチする」というものだ。
コスト面については、元記事が整理している内容を以下にまとめる。
- マイクロVM:vCPU時間とGB時間の従量課金。アイドル時間が長くCPU使用率が低いエージェントに有利。
- ランタイムインスタンス:選択したEC2インスタンスタイプの標準料金+管理料金。顧客アカウントで動くためSavings PlanやReserved Instancesの割引が計算部分に適用できるが、管理料金には適用されない。
元記事によれば、CPU使用率が約24%を超える継続ワークロードでランタイムインスタンスが割安になる。コスト制御の主なレバーは「複数エージェントを1ホストに集約すること」と「作業完了後すぐにセッションを停止すること」だとされている。
インフラ管理の抽象化:キャパシティプロバイダー
ランタイムインスタンスを支える仕組みとして、キャパシティプロバイダーというプリミティブが導入されている。これはインスタンスファミリー・OS・ネットワーク・ストレージを定義する設定オブジェクトで、Auto ScalingグループやLaunchテンプレート、AMIパイプラインを直接管理しなくても、最小・最大インスタンス数とターゲット使用率を指定するだけでEC2容量のプロビジョニング・パッチ適用・スケーリングをAgentCoreが担う。
開発者は低レイヤーのインフラ構成を意識せず、エージェントロジックの実装に集中できる設計となっている。なお、キャパシティプロバイダーの詳細な設定項目や制約については、公式ドキュメントのAgentCore ランタイムインスタンスページで確認できる。
コミュニティの反応
LinkedInではエンジニアのKosti Vasilakakis氏が、ランタイムインスタンスが既存のAgentCore APIとセッションピニングモデルを再利用できる点を評価し、新しいコンピュートタイプへの移行摩擦が小さいと指摘している。長期継続タスクを前提としたエージェント設計がより現実的な選択肢になってきたという見方は、エンジニアコミュニティ内で共感を集めているようだ。
なお、MicrosoftもAzure Foundry Hosted AgentsでセッションごとのVMサンドボックスと永続ファイルストレージを提供しており、クラウド主要ベンダーがそれぞれ長時間エージェント実行基盤の整備を進めている状況にある。
詳細はMulti Agent Collaboration Gets Persistent Compute in Bedrock AgentCoreを参照していただきたい。