8月19日、GBHackersが「Google Mandiant AI Agents Find Over 100 Critical Vulnerabilities in Source Code Within Two Days」と題した記事を公開した。攻撃者がすでにプロプライエタリなソースコードを入手し、AIを使って機械的速度で解析できる時代において、防御側は同じ速度で脆弱性を発見できるか——GoogleのMandiantがその問いに対して一つの回答を示した。自社開発のAIエージェント基盤を用い、盗まれた企業ソースコードから2日間で100件超のクリティカル脆弱性を検出したという事例だ。
2日間で100件超のクリティカル脆弱性を検出
Googleの脅威インテリジェンスグループは、自社開発のAIエージェント基盤「AVDH(Agentic Vulnerability Discovery Harness)」を用いて、盗まれた企業ソースコードリポジトリから2日間で100件超のクリティカルな真陽性(True Positive)脆弱性を特定したと発表した。
この結果は、インシデントレスポンス、レッドチーミング、ペネトレーションテスト、プロアクティブなセキュアコードレビューの現場で、AIエージェントが脆弱性発見を大幅に加速できることを示している。特に攻撃者がすでにプロプライエタリなコードにアクセスでき、AIを活用したマシンスピードの解析を仕掛けてくる状況において、この速度差は致命的になりうる。
Googleはこのフレームワークをすでにおよそ10ヶ月間、数千万行規模のコードベースに適用しており、数千のパイプラインを実行、数万件の知見を生成している。実績として12件のCVE(共通脆弱性識別子)をWebエクステンションおよびオープンソースプロジェクトに対して付番しており、CVE-2026-13242やCVE-2026-55803などが例として挙げられている。
※これらのCVE番号は元記事に記載されている表記をそのまま引用したものだ。2026年付番のCVEという点は通常の付番フローとは異なる可能性があり、詳細は元記事およびNIST NVDでの確認を推奨する。
「スキャナー」ではなく「順次パイプライン」
AVDHの構造で特徴的なのは、単なるコードスキャナーとして機能するのではなく、複数の専門LLMエージェントを順次パイプラインに組み上げ、人間が検証できる優先度付き・リスク評価済みの知見を出力する点だ。

パイプラインは大きく「探索・モデル化・検出・検証・人間確認」の5フェーズに分かれ、各フェーズで専門エージェントが役割を分担する。
探索フェーズでは、まずExplorerエージェントがコードベースの目的把握・ドキュメント精査・解析対象ディレクトリ選定(ユニットテストフォルダ等の除外)を行い、続いてスペシャリストExplorerエージェントが認証・認可・ルーティング・ドメイン固有の攻撃面に特化した解析を担う。
脅威モデル化フェーズでは、Threat Model Synthesisエージェントが露出コンポーネント・トラストバウンダリ・攻撃ベクタを特定したテキスト/ビジュアル脅威モデルを生成する。この段階でヒューマンコンサルタントの承認が必須となっており、後続処理の精度を左右する重要なチェックポイントだ。
検出フェーズでは、Discoveryエージェント(並列)がHTTPルート・IPCリスナー等の外部到達可能なエントリポイントとユーザー制御可能な入力源を特定し、Enrichmentエージェントが分散したコードパスを横断してサニタイズ処理・権限・ルーティングロジック等のコンテキストを収集する。従来のスキャナーが苦手とする「複数ファイルにまたがる脆弱性」への対応がここの肝だ。Access Controlエージェントは認可チェックの欠落とCSRF露出を、Data Flow Analysisエージェントはユーザー入力からSQLインジェクション・XSS・コマンドインジェクション・パストラバーサルに至るデータフローをそれぞれ並行して追跡する。
検証フェーズでは、Validationエージェントと Validation Synthesisエージェントが高温度設定(higher-temperature)で複数の推論パスを探索し、各脆弱性候補を「確定・否定・却下」に分類する。
人間確認フェーズでは、重複排除・リスク評価済みの確定知見に対して実際のエクスプロイトパスとPoCコードを動的にテストし、AIが見落とす補償的コントロールを確認する。
「AIで人を代替する」ではない
Googleは、AVDHはセキュリティリサーチャーを置き換えるためのものではないと明言している。システムの有効性は、コンサルタントの経験から抽出された「蒸留された知識」——再利用可能な言語・フレームワーク・脆弱性固有のルール——に依存しているという立場だ。
また、同社は類似システムを導入しようとする組織に対して、強固なヒューマンバリデーションプロセスと自社専用のベンチマーク環境の整備を推奨している。公開脆弱性データセットはLLMの学習データに含まれている可能性があり、真の推論能力の測定を困難にするためだ。
Mandiantによるこの種のAI活用事例については、Google Security BlogやMandiant公式ブログでも継続的に情報が発信されており、AVDHの背景となる脅威インテリジェンスの文脈を把握する上で参照に値する。また、AIを活用した脆弱性発見の動向に関心がある読者には、NIST NVDの脆弱性データベースやOWASPのLLMセキュリティガイドラインも合わせて確認しておきたいところだ。
攻撃者側もAIを使ったコード解析を機械速度で実施できる時代において、防御側も同等のスピードで脆弱性を発見できる体制が求められている。AVDHの事例はその一つの回答を示している。
詳細はGoogle Mandiant AI Agents Find Over 100 Critical Vulnerabilities in Source Code Within Two Daysを参照していただきたい。