8月19日、CNBCが「Marvell pops 6% on AI chip deal that lets Google buy up to $12.2 billion in shares」と題した記事を公開した。GoogleがMarvellとのAIチップ契約に基づき最大122億ドル分の株式購入権を取得したことについて詳しく報じている。
GoogleがMarvellに最大122億ドルの株式購入権——カスタムチップ戦略が本格化
SEC(米証券取引委員会)への提出書類によると、GoogleはMarvell Technologyの株式を最大5,897万株、1株あたり206.58ドルで購入できる権利を取得した。取得条件は2033年度末までの購買目標達成に連動する仕組みだ。この発表を受け、Marvell株は6%上昇した。
契約の拡張内容としては、**TPU(Tensor Processing Unit)エコシステムに接続する製品群が対象に含まれる。TPUとはGoogleが自社開発した機械学習向け専用プロセッサであり、汎用GPUと異なりニューラルネットワークの行列演算に特化した設計が特徴だ。対象製品の具体例としては、AI推論アクセラレータ(学習済みモデルを使って予測・判定を行う処理専用のチップ)、ストレージコントローラ、NIC(ネットワークインターフェースコントローラ)**といった周辺チップが挙げられる。NICはサーバー間の高速データ転送を担うコンポーネントで、大規模AIクラスター構築において通信ボトルネックを左右する重要部品だ。MarvellはGoogleのTPUを中心としたAIインフラの、いわば「周辺を固める」役割を担う形になる。
なぜ今、Marvellなのか
Googleはこの10年間、カスタムチップの主要パートナーとしてBroadcomと協業してきた。Broadcomとは2026年4月にも契約を拡大したばかりだ。それにもかかわらず今回Marvellとの提携を強化した背景には、AIワークロードの多様化がある。
AIの処理フェーズは大きく「学習(training)」と「推論(inference)」に分かれる。推論とは、学習済みモデルを使って実際のデータに対し予測・回答を生成するフェーズであり、サービス稼働中に常時発生するためコストと遅延の最小化が課題となる。この推論フェーズでは、汎用GPUではなく専用アクセラレータとネットワーク・ストレージ周辺チップの組み合わせが効率面で重要になる。Marvellはこの領域に強みを持つ。
Amazon、Meta、Microsoftも同様に、Nvidiaチップへの依存コストを下げるためにカスタムシリコンの開発・調達を強化している流れであり、Googleの今回の動きもその文脈に位置づけられる。
Broadcomへの影響
今回の発表と同日、Broadcomの株価は約5%下落した。MarvellへのGoogleの購買コミットメントが明示されたことで、市場がGoogleとBroadcomの関係における競合軸の発生を織り込んだ形だ。
なお、MarvellとGoogleの提携自体は2026年4月にThe Informationが報じており、当時もMarvell株が急騰していた。今回はその契約が正式に拡張・詳細化されたものにあたる。
株式購入権というストラクチャーの意味
今回の契約で特徴的なのは、Googleが単に「チップを買う」だけでなく、購買実績に応じてMarvellの株式を取得できるという構造だ。GoogleがMarvellのチップを多く調達するほど、株式購入権を行使しやすくなる設計になっている。
こうした「調達量と株式取得権をリンクさせる」契約形態は、サプライヤーとバイヤー双方にとってコミットメントの担保として機能する。Marvell側は安定した大口需要を見込める一方、Google側は供給優先度や価格交渉において優位な立場を確保しやすくなる。単なる調達契約を超えた、財務的な深度を持つ戦略的関係構築の手法だ。
詳細はMarvell pops 6% on AI chip deal that lets Google buy up to $12.2 billion in sharesを参照していただきたい。