8月20日、CBS Newsが「Women are being left behind in high-paying AI jobs boom, LinkedIn study finds」と題した記事を公開した。AIブームが生み出す高収入職において、女性の採用が著しく遅れているというLinkedInの調査結果を報じている。その最も衝撃的な事実がこれだ――AIによる代替リスクが高い職種に就く約610万人のうち、86%が女性である。AIが奪う側でも、AIが生む恩恵を受ける側でも、女性は不利な立場に置かれているという二重の非対称性が、データによって鮮明に浮かび上がった。
AI求人の年収中央値は約1,770万円、しかし女性採用率はわずか26%
LinkedInが27カ国を対象に行った調査によると、AIスキルを必要とする職種への新規採用者に占める女性の割合は、米国でわずか**26%にとどまる。一方、AI以外の職種では女性が採用者の50%**を占めており、その差は歴然だ。
報酬格差も大きい。AI関連職の求人が提示する年収の中央値は約17万7,000ドル(約1,770万円)であるのに対し、AI以外の職種は約8万ドル(約800万円)。AIスキルを持つ人材には、明確な賃金プレミアムが生じている。企業が生成AIに数十億ドル規模の投資を続ける中、LinkedInへのAI求人掲載数は2023年以降で2倍に増加した。
LinkedIn広報のSarah Steinberg氏はCBS Newsの取材に対し、「AIは世界経済において最も急成長し、最も高報酬で、最も影響力のある職を生み出しているが、採用される側、賃金プレミアムを享受する側、技術開発をリードする側のいずれを見ても、女性は著しく少ない」と述べた。
管理職に上がるほど女性比率が下がる「壊れたはしご」
問題は採用段階だけではない。キャリアの階段を上がるにつれて、女性の比率がさらに低下する傾向がある。
27カ国のAI企業における女性リーダーの割合は**13%にとどまる。テック業界全体での同職種における女性比率は20%**であり、AI分野ではさらに低い。Steinberg氏は「全体的に見ても代表性は低いが、AIに限定するとさらに悪化する」と指摘する。
このような「管理職ほど女性が少なくなる」構造は、STEM分野全体に共通する課題でもある。UNESCOの調査では、世界の理工系大学卒業生に占める女性の割合はわずか35%にとどまると報告されており、AI分野のジェンダーギャップはこうした上流の教育格差を根本的な背景として持つ。テック業界の女性リーダーシップを追跡するReboot Representationなどの団体も、パイプライン問題の解消を長期的課題として訴え続けている。
「仕事を奪われる側」にも女性が多い
この構図が特に深刻なのは、AIに職を奪われるリスクが高い側にも女性が集中しているためだ。
ブルッキングス研究所(Brookings Institution)の調査によると、AIによる代替リスクが高く、スキルの転換余地が限られている職種(主に事務・管理職)に就く約610万人のうち、86%が女性だ。カスタマーサービスや一般事務など、AIが得意とする定型業務に女性が多く集中している実態がある。
Steinberg氏はこう語る。「女性はAIによって仕事が変わるか奪われる可能性が高い立場にあり、同時にAIの賃金プレミアムやAIが生み出す新たな職からも恩恵を受けられていない。女性の経済的立場を考えると、夜も眠れないほど心配だ。」
打開策としての「スキルベース採用」
Steinberg氏が提案するのが、学歴や職歴ではなく保有スキルを基準にした採用(スキルベース採用)への転換だ。AIスキルはオンライン講座や公開されているAIツールの活用を通じて比較的習得しやすく、「AIに関する学位がなくても、前職がAI関連でなくても、AIスキルを持つことはできる」と同氏は述べる。採用基準を資格・学歴から実際のスキルへシフトすることで、これまでパイプラインに入れなかった女性候補者を取り込める可能性がある、という主張だ。
LinkedInは自社プラットフォームにおいて、求人票にスキル要件を前面に出す機能や、LinkedIn Learningを通じたリスキリング支援を拡充しており、スキルベース採用の普及を事業戦略の一環として推進している。同様の取り組みはIBMやAccentureなど大手テック・コンサル企業でも導入が進んでおり、学位要件を撤廃したポジションで採用の多様性が向上したとする報告も出ている。また、OECDはスキルベース採用をデジタル移行期における労働市場政策の重要課題として位置づけており、各国政府への提言でもその推進を促している。
個人レベルでは、Google Career CertificatesやCoursera、edXなどのプラットフォームがAI・データ分析関連の実践的なスキル習得経路を提供しており、学歴を問わずAI職への参入障壁を下げるリソースとして注目されている。
詳細はWomen are being left behind in high-paying AI jobs boom, LinkedIn study findsを参照していただきたい。