8月19日、Dataconomyが「Qualcomm open-sources Modular AI platform to take on NVIDIA CUDA」と題した記事を公開した。QualcommがModularのAIソフトウェアプラットフォームおよびMojoプログラミング言語をオープンソース化し、NVIDIA CUDAへの対抗軸を打ち出した動きを詳報している。
QualcommがModularを買収直後にフルスタックをオープンソース化
Qualcommは、約39億ドルでのModular買収完了からわずか数週間後、ModularのAIソフトウェアプラットフォーム全体とMojoプログラミング言語をオープンソース化した。買収の発表は6月24日、完了は7月末のことだ。
オープンソース化の発表は、Modularが「Qualcomm傘下の企業」として初めて開催したカンファレンス「ModCon 2026」で行われた。ライセンスはApache 2.0(LLVMエクセプション付き)が採用され、コードはすでにGitHub上で公開されている。
CUDAへの対抗:「どのハードでも動く」推論フレームワーク
このプラットフォームの最大の特徴は、単一フレームワークで複数ハードウェアを横断的にサポートする点にある。対応ハードウェアは以下の通りだ。
- Qualcomm Snapdragonチップ
- AMD GPU
- NVIDIA GPU
- Apple Silicon
- AWS Trainium
- Google TPU
NVIDIA CUDAがNVIDIA製GPUに縛られた垂直統合モデルで支配的な地位を築いてきたのに対し、Modularのスタックはハードウェアを問わずAI推論を動かすことを目指している。
ModCon 2026にはAMDが登壇し、Modularプラットフォームへの支持を表明した。ServeTheHomeはこれを「注目すべき動き」と評している。AMDはAI GPU市場で相当の売上を持ち、本来ならQualcommを競合と見なしうる立場だからだ。プラットフォームはすでにAMD Ryzen AI HaloシステムおよびAMD GPUでの大規模動作を確認済みだという。
さらに元記事によると、中国のHoumo製24GB M.2 AIアクセラレータ上での動作デモも行われたとのことだ。
Mojo 1.0:LLVMとSwiftの生みの親が手がけたAI向け言語
Mojoは2023年に登場したプログラミング言語で、8月12日にバージョン1.0に到達した。ModConではコンパイラのフルソースが公開された。
設計者はLLVMおよびSwiftを生み出した**Chris Lattnerだ。MojoはCPU・GPU・AIアクセラレータを対象とした言語設計を採用し、Pythonとの相互運用性を備えている。対応OSはmacOSとLinuxに加え、現在Windows対応も開発中**だ。
AIワークロードの開発においてPythonは事実上の標準だが、パフォーマンスの壁が常に課題となってきた。Mojoはそのギャップを埋めることを狙った言語であり、LLVMコンパイラ基盤を活用した設計によって高いパフォーマンスとPython互換性の両立を図っている。Qualcommの傘下でオープンソース化されたことで、開発コミュニティへの浸透を本格的に加速させる段階に入った。
業界構造へのインパクト
QualcommがModularを買収してオープンソース化に踏み切ったこの一手は、「ハードウェアのロックイン」を前提としたCUDAエコシステムへの明確な挑戦と読める。AMD・Apple・AWS・Googleといったハードウェアベンダーを横断的に巻き込む形でエコシステムを構築しようとしている点が、単なるソフトウェア公開とは異なる戦略的な意味を持つ。
※編集部の考察:Qualcommにとってこの買収は、スマートフォン向けSoCで培ったエッジ・オンデバイスAI処理の強みをクラウドからエッジまで一貫したソフトウェアスタックで補強する狙いがあると見られる。39億ドルという買収額は、NVIDIAのCUDAエコシステムが持つソフトウェアロックインの価値をQualcommがいかに重視しているかの表れであり、単体のチップベンダーとしての競争ではなく、プラットフォームビジネスへの本格参入を意味する。オープンソース化によって開発者コミュニティを取り込み、ハードウェア横断のデファクトスタンダード確立を目指す戦略は、かつてAndroidがモバイルOSの覇権を狙った構図とも重なる。
詳細はQualcomm open-sources Modular AI platform to take on NVIDIA CUDAを参照していただきたい。