8月20日、GeekWireが「Internal memo: Eight execs out at Expedia Group in AI-driven shakeup」と題した記事を公開した。この記事では、Expedia GroupがAI対応を加速するため製品・技術部門を大規模再編し、少なくとも8人の副社長・上級副社長級幹部が退任したことについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「週単位の仕事が時間単位に」——AI適応できない組織構造を解体
Expedia Groupは、製品・技術部門をAI中心に再構築するため、8人以上の副社長(VP)・上級副社長(SVP)級幹部を一斉退任させた。GeekWireが入手した社内メモによると、最高製品責任者(CPO)のShilpa RanganathanとCTO(最高技術責任者)のRamana Thumuが連名で発信したこのメモには、踏み込んだ言葉が並ぶ。
「AIはこの1年で可能性を根本から変えた。かつて数週間かかっていた仕事が、今では数時間で完了するようになっている。この機会を最大限に活かすには、働き方・組織のあり方・構築する技術のすべてを根本から変えなければならない」
単なる人員削減ではなく、組織構造そのものがAI活用のボトルネックになっているという診断のもとで行われた再編だ。メモでは「スピードを阻むブロッカーの多くは構造的な問題」「意思決定とアカウンタビリティは、チームが業務に近い場所にあり、より高い自律性を持つときに最もうまく機能する」と明記している。
新体制のコンセプトは「スモール・エンド・ツー・エンドのスクワッド(小規模横断チーム)」で、AIと機械学習をすべてのミッションに組み込む方針だ。
退任者と組織再編の詳細
最大の異動は、SVP(上級副社長)のSachin Singhの退任だ。元Amazonの幹部で2022年にExpediaに入社し、チェックアウト・決済・不正防止・カスタマーサービスなどを統括してきた人物だ。彼のポートフォリオは以下のように分散される。
- 不正・リスク管理 → CISO(最高情報セキュリティ責任者)のHilik Kotlerの下へ
- セルフサービス → Ryan O'Neilの下へ
- 決済(製品・技術・オペレーション) → Reena PatilとDebashis Sahaの下へ
その他、Sara Beckmann、Ian Butcher、Matt Esler、Amitabh Ghosh、Emil Riccardi、Fiona Stevenson、Shao Xieの7人のVP級リーダーが退任する。各自のLinkedInプロフィールによると、価格設定・宿泊・データプラットフォーム・トラベルプラットフォーム・不正対策などの製品・技術領域を担当していた。
昇進もある。Debashis SahaがSVP「Travel Foundations」に昇格。Rajat Arora、Ryan Hillman、Ashwita Kaur、Ambrish Srivastavaの4名がVPに昇格した。
また、データ・AI・エージェント型プラットフォームはすべてXavier Amatriainの管轄に一本化される。Amatriainは元GoogleのAI幹部で、Expediaが2024年12月に初代Chief AI and Data Officerとして招聘した人物だ。プラットフォームエンジニアリング担当SVPのRick FastはChief Architect(チーフアーキテクト)に就く。
Expediaの広報担当者はGeekWireへのコメントで「影響は限定的」と述べ、「変更の大半は、人材とリソースをビジネス優先事項に合わせるための、別チームへの異動やレポートラインの変更だ」と説明した。
オンライン旅行業界の「第三の技術破壊」
この再編の背景には、旅行業界全体の構造的危機がある。ExpediaのCEO、Ariane Gorinは今年5月の創業30周年インタビューで、AIを「インターネット、モバイルに続く第三の技術破壊」と位置づけた。
脅威の本質は、AIエージェントがExpediaやBooking.comを「裏側の在庫ソース」に追いやる可能性だ——かつてExpediaが従来の旅行代理店に対してやったことを、AIが今度はExpediaに対してやるかもしれない、という構図である。MarriottのCEOも「AI予約エージェントはホテルよりもオンライン旅行代理店を傷つける」と発言している。
Expediaは新プラットフォームへの組み込みで対抗している。OpenAIがChatGPTを外部アプリに開放した際はローンチパートナーとして参加し、今年はChatGPT内での広告出稿も開始した。ただし、OpenAIが3月にChatGPTのInstant Checkout機能を主要インターフェースから撤退させた際、ExpediaとBooking Holdingsの株価が大きく跳ね上がったことから、破壊的変化のペースは当初の懸念より遅い。
なお、Expediaは2025年末時点で約50カ国に約1万6,000人の従業員を抱え、うち約半数(≒8,000人)が技術系職種だ。従業員数は2019年の2万5,000人超をピークに、パンデミック時に1万4,800人まで縮小。その後一時的に回復したが、近年は再編・レイオフが続いている。
詳細はInternal memo: Eight execs out at Expedia Group in AI-driven shakeupを参照していただきたい。